「月夜の願い」1993年香港


ピーターチャン チーリー監督 トニーレオン レオンカーフェイ 

「タイムスリップもののハートウォームコメディね」
「僕はこの映画、好きなんだなあ、山田洋次風テイストというか(笑)」
「(笑)ま、分かるけどね。善人で自分のことより人のためばかりを考える父親と確執の続く息子が、ふとしたことからタイムスリップして父親の青春時代を垣間見るバックトゥザフューチャーもの」
「そんなジャンルがあるのか知らないけど、人情話で魅了する。まあ無邪気な映画なんだけどね、いい意味でね」
「いかにも香港映画的な、本筋とは無関係のギャグを入れてくるけれど、それが人情味をハズさないから笑いあり涙ありって感じなのね」
「ただし、思い返すとちょっと中途半端な脚本であることは事実だよ、息子のトニーレオンが若き父親レオンカーフェイの奮闘努力する姿を見て、まあ改心するっていうか、父親との関係をやり直そうとする、そういうエモーションの深まりは、実はあんまりグッと来なかったんだな」
「あたしもそう思う、親子の和解みたいな物語ならほかにやりようがあったはずよね、もっと泣かせる話はいくらでも出来たと思うわね」
「むしろテーマ的なもの?は、過ぎ去った人生はやり直せないが一日一日を大事に生きていけばやり直す必要はない、というラストの締めくくりにあるのであって、父親と息子の確執を解くとかいうのはただのモチーフというかエピソードの一つでしかなかったんじゃないかな。だからドラマとしてはそれほど深まらないし消化不良はある」
「メモリーレーンという香港の下町?のセットは生活感があって、すごくいい感じがしたわ」
「香港て行ってみたことないけど、ああいう感じは不思議と懐かしい。きっと日本の三十年前とかもああだったんだろうなって気がする」
「まったく滝田ゆうの漫画だわね」
「ええっ?女史、いくつなの?今時、滝田ゆうなんて誰も知らないよ!」
「(笑)失礼しました。ええと役者はさ、トニーレオンはモダンな俳優だからタイムスリップしても時代に染まらなかった、それはこういうタイムスリップものではキャスティングの上で大事なことだと思う。それに彼の持ち味は2.5枚目の微妙な線を上がるでもなく下がるでもなくキープし続けるところ。カッコイイけど決して完全無欠のヒーローにはなり得ない弱みみたいなものもあってそれを隠さないところ。そのキャラクターはよく生きていたと思った。一方のレオンカーフェイはマスクからして古めかしいタイプで、演技にはもの凄い幅が感じられる。凄みもあればバカもやれる。この映画では実にサワヤカに若き父親役をうまく演じきっていたと思うわ」
「そうだね。それにカーフェイは歌がいかにヘタか、暴露した(笑)」
「ま、あれはご愛敬。聞いてて笑えた」
「アニタユンはちょっと生彩を欠いていたように思うな、<つきせぬ想い>とかと比べると一本調子だった」
「まあ脇だったからねぇ。カリーナラウだって、ちょっと存在感が薄い、その他大勢の長屋の同居人たちに埋もれちゃってたしね」
「ま、全体としては彼女と見に行くファンタスティックコメディという感じかな」
「オゲレツなギャグは全然なかったしね。いつか歳をとって、ああそういえばこんな映画もあったって見てみるのが楽しいかもしれないわ、そういうノスタルジックな雰囲気は好きよ」
「だから滝田ゆう、なの?」
「(笑)突っ込むなよ!」(1998.7.4)

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