「月の輝く夜に」 1987年 アメリカ

ノーマンジュイソン監督 シェール ニコラスケイジ

「うーん・・シェールの独壇場ね。それと屈折したNケイジがとても切ないの(笑)。イタリア系移民の家族模様の物語で、夫に死なれてはや数年というシェールの再婚を巡って、婚約者がマザコンだったり、その弟がコンプレックスの固まりでシェールに惚れちゃったり、シェールの両親も些細な浮気をしていたり・・とかいった話が次々に出てくるけれど、結局はみな丸く収まる」
「物語は洒落てると思った。ニューヨーカーに載る短編小説みたいな気の利いたエピソード・・だけど映画全体として、どうかなあ?僕も一応は、面白かった。だけどねー」
「不満が残る?わたしはなんかハッピーになれたけど(笑)」
「いや不満というんじゃないけど、ちょっとどう見ていいのか分からないユニークな作品だったっていうかな」
「ユニークと言えば、この映画には面白い部分とオカシイ部分とがあるのよね、どこかヘンな笑いがあるの」
「そう、どっかヘンでマヌケなんだ(笑)イタリア人だからってわけじゃないけど」
「例えば、老人たちが墓場で井戸端会議してたり、配管修理の見積もりの場面とか、あまり脈絡のないヘンな場面が時々出てくる」
「そういう場面の挿入には、確かにカルト的とも言えるハイブロウなオカシサ(笑)があって、そういうところは僕もクスクス笑えたんだ。けれどそのせいで少し散漫気味というか、物語の中心がどこにあるのか見えなくなることもあったよ」
「段々と、シェールだけの物語ではなくなって、最後は家族っていうものの物語、みたいに纏まろうとしてたわね」
「本来的にはハートウォームなホームコメディで、メロドラマには違いないんだけど、心から情にホダされないっていうかなーどこかクールで澄まして醒めたところもあって、それはシェールが演じたオンナそのものの印象にも繋がってる・・」
「わたしはね、そのクールさというのは、物語の季節が冬だからっていうこともあると思うの」
「なるほどねぇ」
「だから例えばこの映画の舞台を夏のナポリとかに移して、騒々しいナポリ人たちの艶笑コメディみたいに描くことも出来たと思うし、もしかしたらそういう作りの方がグッと情にホダされる、みたいなことはあったんじゃないかって思う」
「ははあ、ちょっとトウのたったソフィアローレンを主演にするとかでね(笑)60年代風の・・ま、それはアリガチだけど、そういうこの映画のテイストと冬のニューヨークというのは、ちょっとミスマッチだったんじゃないかなーと思う」
「オカシサという部分で言えば、イタリア語しか喋らないお祖父さんの存在は大きかったわね。それから、やっぱりシェール!垢抜けないオバサンが、段々と美しくなっていって、それでいて少女みたいな可憐さもあって、でも世知辛い世の中にも通じててクールにならざるを得ない、っていう、まあ何というか、ヤな言葉だけど・・」
「ハイミスの魅力?(笑)」
「(笑)それなりに歳の功のチャーミングさもあったと思う」
「歳の功といえば母親の描き方は、しっとりしていてとても関心したよ」
「節度があってね。全体に細部はとても丁寧に描かれていたように思うけれど、やっぱりちょっと散漫かしら・・泣きも笑いも心からっていう感じじゃなかったわね」
「縁起をかつぐとか・・出来心の浮気とか、人生のおかしみ、そのエッセンスといった味わいは僕も楽しめたけどね」
「その人生のおかしみっていうのは、時には不条理なもので、それが魔が差す、っていうか満月の魔力なんだっていうような、そういうファンタジー映画だったんだって思うのだけど」(1999.1.5)


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