「トトのイタリア自転車レース」1948年イタリア


マリオ・マットーリ監督 トト

これはまた素晴らしいコメディでホント、楽しめた」
「僕はパゾリーニ作品以外に動くトトを見たのは多分<ニュー・シネマ・パラダイス>のなかだけでね、これでやっと拝めたな〜っていうか、この作品だけでもう『イタリア映画大回顧』よ、グラッツィエ〜〜って感じ・・と思っていたら先日テレビで見た<ナポリと女と泥棒たち>って映画にも最晩年のトトがバンバン出ていて、もう感涙!」
「物語はというと、トト教授が美人アナウンサーに一目惚れしてプロポーズすると彼女は自転車レースで優勝したら結婚してあげる、なんて言うものだからトトがレースに出て・・まったくなんて可愛いのかしらね
「トトが?(笑)なるほど、可愛いって感覚は分かるな・・それでトトは悪魔と結託して優勝に次ぐ優勝となるんだけど、実はレースの最後には死ななきゃならない、悪魔に殺されちゃう!ってことが分かって終盤はこの悪魔との戦い(笑)になっていくという、こういう単純な展開っていいね〜」
「それにオープニングね、皇帝ネロと詩人ダンテが出てきてクレジットタイトルを眺めながら漫才したりしてね、ああいうのも可愛いって感じだし・・」
「ま、ストーリーのフレームワーク自体、マドンナがいてボケとツッコミがいて、そこに憎めない悪漢悪魔と我らがヒーローが前後左右にバタバタして、と、まったく古典的コメディの黄金分割みたいな安定感で出来てるから、それだけでなんか見応えがある、っていうかなー、満足度が高いわけ」
「筋立てから見ても、前半はレースで勝たなきゃ、後半はなんとかして負けなきゃ、みたいな正反対のコントラストでこれも黄金分割(笑)。なんていうかこれ、『寅さん』か『お江戸でござる』みたい」
「つまるところ古典的コメディの王道、そのまんまなんだ・・で、まんまと言えば、イタリアの母は強し、最後はママでシメる、っていうマンミズモもあって、それも可愛い」
「ギャグのなかでは南部を悪く言うカンパニズモもあってイタリアならではのおかしさ」
「・・と、それでトトというキャラクターなんだけど、面白かったのは彼の百面相だけじゃなくてその芸風。映画の中の彼はまったくといっていいくらい無邪気で愛すべき人柄だった。この映画だけで判断は出来ないけれど、ああいうのがトトの芸風だとしたら、パゾリーニが彼を使って撮り続けたイデオ・コミカル作品というのはパゾリーニにとってかなり前衛的、戦略的、実験的な試みだったんだろうなってこと」
「喜んだりスネたり笑ったり泣いたりと幅広いエモーションのなかでトトの持つイノセントな輝きがどんどん増していくって感じなのね・・」
「どちらかというとパゾリーニ作品ではたびたびシカメっツラをしていたようなトトなんだけど、でも例えば<月から見た地球>のようなメルヘンで見せたオイオイ泣くようなコミカルさと浅はかな狡猾さ、それに<大きな鳥と小さな鳥>で見せた大衆の無人称代名詞そのものと化していくファンタジックさ、そうした一切合切が実はかなりトトという役者本来の持ち味によって作られていたんだなってこと、そしてあえてそこを裏切ってイデオロギーで練り上げていったパゾリーニの寓意がよく分かったよ。僕はそこいらがトト本来のものかパゾリーニの味付けだったのかよく分からなかったんだけれども」
「とにかく<ニュー・シネマ・パラダイス>に出てきたような場末の映画館で大人も子供も手放しで娯楽に愉しむ、そんなコメディね。二本立てのうちの一本で子供たちのお目当て、みたいな。自転車レースの選手たちも実際の選手だということで、そういう遊び心なんかも古典的コメディ映画ならではでしょうし、ニーノ・ロータのパロディ音楽なんかも楽しいし・・」
「なんであれ、急に一人二役のオペラになるんだろうね(笑)あれもトトの芸風なのかなあ・・」
「感心したのは、これ1948年の映画だったってことね・・ネオリアリズモだけじゃなかったのは知ってたけど、戦争もファシズムもコミュニズムも全然影を落としていないの」(2001.11.15)

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