「友は風の彼方に」1987年香港



リンゴ・ラム監督 チョウ・ユンファ ダニー・リー

「こないだ<新・愛と復讐の挽歌>を見て、エモーショナルな香港ノワールならまた見てみたいって言ったら、狩刈くんはこれを薦めてくれたのね」
「で、どうだった?」
「うん、これは面白かったと思う」
「わー良かったな。実はちょっと長いんじゃないかなって思っていたんだけれどね」
「長いとは思わなかったの。中身が詰まってたから。チョウ・ユンファもまだ痩せてて顔が四角じゃないし、彼の三枚目的なところもよく伝わったし」
「彼が三枚目でスタートして段々深みにはまってシリアスになっていって、最後は泣かせで終わる、というパターンは数多いけれど、彼は俳優として、そういう展開を宿命的に負っていると思うしかないくらいにハマってるよね」
「物語としちゃ、前半と後半とでポイントが違うのね。前半は、秘密捜査官のユンファが、ベテラン警部の叔父さんと若い秀才警部の対立に巻き込まれて、イヤイヤながら囮捜査でピストルの密売をやらされる、って感じ。で、後半はその密売先の強盗団に潜入したユンファが強盗仲間の一人ダニー・リーと友情が通い合っちゃって、彼を裏切れない、でもオレは警官だ・・というジレンマでドンパチする」
「そういう展開に、宝石泥棒の強奪シーンとかチョウ・ユンファが恋人に愛想尽かされて捨てられる展開とか、叔父さんがオレだって若いモンにはまだ負けねぇぞって酒浸りになるシーンとかがあって、全体にこの映画はかなり分厚い感じがする
「そうね。でも決して散漫じゃないの。わたしには、そうした部分的なものがすごく渾然一体になって、緊密で深まりがあって、些末だけれど人生の真剣な重さにも思えて、うん、これは傑作かもって思えたよ」
「そう言ってくれるとすごく嬉しいな。細部が全体を支えていて、全体が細部に染み入っている、これはまったく脚本と演出が素晴らしいと思うんだよね」
「で、そうした分厚い展開の中から、スルスルっと、刑事と強盗との間にさりげなく友情が芽生えて、ああ、物語はここに来たのかあ・・って。そこには軽みと哀しみの余韻があったし。いろんな展開があって最後にこうなるっていうのは、最初から男同士の友情をテーマにバアーンと出してくるよりグッとくると思うし。あとダニー・リー。彼はなかなかサマになってるね」
「警官やってもハマるんだけど、今回は強盗団の一味。この映画は色んな娯楽的なツボを押さえつつ、フィルムノワールの持つメロドラマ的な要素、男たちがエモーショナルに泣かせてくれるエピソードに収斂していく。そこにダニー・リーの存在感をハメ込んで来て、ユンファと対等にクローズアップしていって・・と、なんとも手練れの演出っていう気がするんだよ」
「銃撃戦もどちらかというと抑えめだったのかしらね。あんまり非現実的じゃなかったし」
「チャンとやってくれてはいるんだけど、そればかりが目立ってるわけじゃなくて、やっぱりほら、その他のドラマの部分の手応えがあるから・・それにラストではユンファもダニー・リーも、お互いにもう言葉もナニもなくて、ただただ拳銃を撃ちまくることしか残ってない、みたいな、情緒的に行き詰まった末の銃撃戦だったし」
「それと関心したのは、ラスト近くのカーチェイスシーンに被さる『もろびとこぞりて』の音楽!」
「ああいうハズし方がね、映画って娯楽だ、シリアスなんだけど面白い、人間のドラマだ、って感じで迫ってくるよね。思えばユンファが墓場に連れ込まれて墓穴を踏み抜いてガイコツが足に絡みついてくるとかさ、あと香港映画には付き物のゲロシーンとか、そういう『らしさ』も忘れない。この作品が、例えばタランティーノとか、後に続く<男たちの挽歌>シリーズに与えた決定的な影響は、さっき女史が言ってたような分厚い展開からスルスルっとひとつのエピソードに収束していく軽みと余韻みたいなもの、そういうロマンの語り方なんだろうと思う」(2000.8.4)


シネマギロテスクに戻る