「遊星よりの物体X」1951年アメリカ


クリスチャン・ニイビー監督 ケネス・トビー マーガレット・シェリダン

「これはまあレトロなSF傑作として文句ナシに面白い映画でねぇ、Jカーペンター監督のリメイクもいいけど、それも原典がしっかりしてるからだと思う」
「まずは舞台設定の良さね。アラスカのアメリカ空軍の基地の吹雪がトップシーンなんだけど、それって、当時の観客にとってはもう月面みたいな世界だったんじゃないかしら」
「孤絶した世界だよね。無線も届かなかったり、戸外は零下20度だったり・・」
「つまり物語の舞台をなるべく小さく、狭く設定して、そこで何が起きているか観客に全て分かるようにしているから、作品世界の中にすごく入り込めるの」
「物語はというと、アメリカの北極探検基地の近くに正体不明の物体が墜落して、磁場が乱れてレーダーや無線がおかしくなっていると連絡が入る。それで空軍大尉が調査に出向く・・で、円盤を発見して、掘り出そうとしたら失敗。でも氷漬けの宇宙人を捕まえて基地に戻る。宇宙人は逃走して、でも残された片腕から、こいつはなんと血を吸って生きる野菜人間だってことがわかって、あとはそいつとの死闘が繰り広げられる」
「そうやってストーリーを見ていくと、まあ、なあんだって感じなんだけど、宇宙人との闘いで灯油を撒いたり高圧電流を仕掛けたりする、そこにケレン味すら感じてしまうレトロさが楽しいの(笑)」
「あれれ、ケレン味、は僕の専売特許だったんだけどなあ(笑)。例えばね、僕の目を引きつけたのは、実はタイピスト役のMシェリダンのモダンで颯爽としたパンツルック(笑)。北極でスカートもないだろうけど、ああいう清々しい感じはこの映画のキリリとしたまとまりの良さにも幾分か貢献してるだろうな、オンナオンナしてなくて」
「どうにも、こじつけがましいよ、それは(笑)。でもキリリとした小気味よさは確かにあって、まあ、なんていうか、世界の警察官アメリカの軍人魂っていうかしら・・つまり宇宙人相手でも全然へこたれないで、怖がったりしないで、男気でもって立ち向かっていくのね。とにかく主人公の大尉は男っぽい」
「そこはハワード・ホークスのプロデュースだしね。宇宙人だろうがインディアンだろうが、拳銃をぶっ放す(笑)。ま、冗談はともかく、これが仕事だ、みたいに、ナンの疑いもなく勇敢に宇宙人と立ち向かっていく姿は痛快だね」
「一応、科学者と軍人の見解の相違みたいなもの、対立みたいなものもあって、ドラマの起伏を作っていて飽きさせない」
「しかも軍の上層部は生け捕りにしろ、とか、勝手な無電を送りつけてきたりしてね。無線が切れて上層部の的確な指示を仰げないというのも、さっき女史が言ったように、舞台をなるべく小規模に設定してプロットが脇道に逸れないための旨いテだよね」
「それから主人公の大尉とタイピストとの仲が、ユーモラスにうまく描かれていて、そういうところも小気味いいの」
「冒頭、女好きと紹介される大尉の勇敢さと、あのタイピストの爽やかでいてしたたかな清々しさとは、実によくマッチしてたっけ」
「だからパンツルックなの?(笑)」
「ま(笑)そういうディテールをフェティッシュに見るかどうかは別として、そういう要素すべてがこの映画を優れて痛快娯楽作品にしてると思うんだよね」
「確かに古き良き傑作というのは、娯楽の色んな要素があるもの。この作品は勿論SFだけど、単に観客を怖がらせるだけでなくて、ユーモアたっぷりで、小気味よくて、ハラハラする時もあればニンマリしちゃう時もあるし、結局は脚本が実に素晴らしいの」
「そうだねぇ。ひとつひとつのセリフはまるでナンでもなくても、それがテンポよく飛び出してきて、全体としては和気あいあいのうちに大団円を迎えたって感じだ」
「しかも警句つきで(笑)」
watch the sky!(笑)」(2000.1.28)

シネマギロテスクに戻る