「嘆きのテレーズ」1952年 フランス・イタリア

 

マルセル・カルネ監督 シモーヌ・シニョレ ラフ・ヴァロン

頭のない男とだけは駆け落ちするな、って感じね」
「すごいブチ壊し方!(笑)でもまあ情熱だけじゃ恋は成就しないってことかな・・」
「ていうか、テレーズに言い寄るトラック運転手のロランはどっから見ても魅力的でなくて、だからシモーヌ・シニョレが彼についヨロめいちゃうっていうのがちょっと、雰囲気としてうまく伝わってこないの」
「ははあ、確かにテレーズが彼にホレていくあたりは、この映画、かなり硬直化してたっけ。・・一応ストーリーはというと、病弱な夫とその世話を焼きたがる口さがない義母と三人で暮らしてる人妻テレーズは、これまでずっと自分を押し込めて生きてきて、家では看護婦代わりにコキ使われてる・・」
「で、ふとしたことからトラックの運転手ロランと知り合って・・それで二人は恋に落ちるんだけれど、そのへんが、そう、硬直してるっていうか、なんかぎこちないのね。カタにはまりすぎてて、秘められた恋の感じ、ましてや人目を忍ぶ不倫の感じ、切ない感じとかが全然にじみあがって来ない。それはSシニョレのいかつい顔立ちとかも影響してるんでしょうけど」
「彼女はまあ恋してパッと花が咲くような、表情が輝くタイプの女優じゃないしね。それにテレーズというキャラクターもまた、これまで自分を抑えに抑えて生きてきたわけで、恋愛なんか自分とは無縁、と諦めてきていた。だから前半はロランのクサいセリフばかりが目立っちゃう感じだ」
「自由になろう、とか俺と一緒に逃げよう、とか・・なんか紋切り型でね。原作はエミール・ゾラで、まったく文学ブンガクしてるセリフ回しばかりで、情緒的にシラけちゃう」
「これがもしバーグマンとか、Fアルヌールとかだったらグッと燃えあがるところだろうけど・・でロランはジャン・ギャバンか?ってそれじゃ<ヘッドライト>だな(笑)」
「まあもっとも、競馬ゲームでいちいち母親が息子の肩をもったりして、あの夫の貧弱な人間性の描写とかは面白かったね」
「で、物語に戻ると、テレーズとロランは逢い引きを重ねて、ついにそれが夫に知れて、夫婦はパリへ向かう。その途中、夜行列車に乗り合わせたロランがなんと夫を突き落としちゃって、そこからガゼン、この映画はサスペンス一色で面白くなるわけだ」
「テレーズとロランの間にはいったんヒビが入るんだけど、夜行列車で同じコンパートメントに乗り合わせた元水兵というのがテレーズを恐喝してきて、そして二人はまた一緒になる・・このへんはテンポが良くて小気味イイ感じ。特に水兵をやった俳優が小憎らしい感じでイキイキしてて、だからよけいにロランとテレーズの固さが目立つの」
「まあ後半の二人の固さってのは、いいんじゃないかな、合理的。二人は犯罪者だし日陰者だし、抱き合ってるというよりゴツゴツぶつかりあってる様子(笑)は、この二人の恋愛が、倫理的人道的には真に成就されるべきではないものとして描かれてると思うんだよね」
「いつまでたっても二人はぎこちないままなのね・・ま、そのおかげで、余計な恋愛シーンが水を差すことなく本題のサスペンスが持続するんだけれども」
「結局二人はこの恐喝水夫に金を渡して、それで最後の最後が有名な大ドンデン返しになるわけだけど、皮肉にも郵便屋は手紙をメイドのラヴレターだと思うっていうあたり、なかなか爽やかで気が利いてる」
それにしてもサスペンス映画って、こういう古めかしいモノクロがいいね
「暗闇がね、実に黒いんだよね、で、それって人間の後ろ暗さとかにダイレクトにつながってきて、そういう明暗の使い方なんかはカラーじゃ期待できないね」(2001.10.26)



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