「テシス」1996年スペイン


アレハンドロ・アメナバール監督 アナ・トレント フェレ・マルティネス

「うーん、これは結構見応えのあるサスペンスに思ったんだ、それに結構エモーションが濃いしねぇ、見ていて飽きなかった」
「ま、狩刈くんの好きそうな題材よね(笑)猟奇エログロの殺人スナッフムービーだもん・・しかも、その題材とドラマの展開に無理はなかったって感じ」
「無理って?」
「例えばさ、ニコラス・ケイジの<8mm>みたいな、全米を股にかけるアクション・ミステリーとかにはなってないし、必要以上に興味本位なエログロ・アングラ世界を暴き出すみたいなこともしてないし、これって結局は映画学校の学園ドラマだもの。物語の舞台を無理に大きく広く深くはしてないってことね」
「それは同感だな。ストーリーはというと、映画の専門学校に通う女の子アンヘラが、自分の指導教授が心臓発作を起こして死んじゃった時に見ていたビデオを手に入れる。と、それは二年前に失踪した女学生の暴行殺害シーンを撮影したスナッフムービーだった。で、友人の男子学生と探偵ごっこみたいなことをやってるうちに犯人とおぼしき別の学生だの、新しい指導教授が怪しいだのとサスペンスが深まっていって、まあ危機一髪のクライマックスを迎える」
「もしもこれがアメリカ映画だったら、陳腐なドンデン返しやメロドラマ的な展開になっちゃったと思うのね、あるいはもっとホラーの線を狙うとか・・でもこの作品には、確かになんか奥ゆかしいっていうか(笑)こぢんまりとまとまった良さがあったよね」
「ただ、お国柄の違いっていうか、暴行殺害シーンは<8mm>なんかよりもずっと、そのマンマ見せていたよね、やっぱり宗教裁判の国だからかな?(笑)」
「(爆)そんなことで感心してもしょうがないんだけど、この映画の魅力には、チェマっていう、アンヘラの相棒役の、ちょっと複雑に屈折した人間性とかもあるのね」
「なんかコンプレックスの固まりみたいなヤツだったよね。それと僕は、アンヘラが犯人らしき学生に段々と惹かれていくところ。夜中に殺されそうになる夢なんか見て怯えているくせに、恐れつつ惹きつけられていってね、そういう不可解な心理。また、それをなじる相棒チェマ、って感じの人間模様のねじれやこじれが面白かったな」
「いつも悪態ばかりついてるチェマが、実はアンヘラの姿を盗撮していたりとか・・登場人物の人間性、その深い暗闇について、観客に手の内すべてを明かしていないって感じね。でも。それにしても思うのは・・」
「なに?」
「スナッフムービーって、そんなに意味があるのかしらってこと。狩刈くんだったら、そういうの、見たい?まさか解剖学のビデオとかは見たくないでしょうけど(笑)」
「えっえっえっ?(笑)マジに聞かれると困るけど、まあ僕は見たいとは思うね。でも何故かっていわれると、それはただの好奇心とか、自慢したいだけなのかもね、俺は見たぞ!って」
「じゃ、現実の殺人の現場にいたいと思う?」
「そりゃ、いたくないなあ。殺人幇助罪になっちゃうしねぇ。けれどそれを映した映画なら、無理ない範疇でなら見てみたい・・ということは、えーと、僕、よく分からなくなってきたぞ??」
「スプラッター映画がいくらでもあるのにスナッフムービーに価値があるとしたら、それは、そこに写し撮られた殺人が現実だからよね。でも、それが現実の殺人だとどうやって知るのかしら?造った本人、現場にいた人間しか分からないんじゃないかなあ(笑)」
「まあね。映画である以上は、すでに虚構だ、とは思うよ。しかも僕なんか、どんな映画もドキュメンタリーだ、カメラの前にあるものは例えセットであってもセットのドキュメンタリーだって思う方だから、とりたてて現実かどうかには興味ないんだよね、カメラの前はすべて現実」
「なんか(笑)あぶない会話になってきたかしら」
「ただ、この映画のラストには、そのあたりの大衆の興味本位みたいなところが皮肉られていて、ニヤリとしちゃうよね」
「病院で患者たちがみんなテレビを食い入るように見つめるのね(笑)あれはブラックでショッキング」
「ショッキングと言えばだよ・・あのアナが30にもなって女学生かよー(笑)っていうのが一番のショックだ」(2000.4.13)

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