「チャオパンタン」1983年フランス

クロードベリ監督 コリューシュ
「この前<パリ、18区、夜>の話をしていたら、この映画を思い出して、まあもう一度見ることもないだろって思っていたんだけど、何故かリュックベッソン監督のセレクシォンシリーズということでビデオが出ていたんだよね」
「あのセレクシォンには<料理は冷たくして>とか、話題にはなったもののすぐに消えちゃった作品がとりあげられてたっけ」
「そのおかげでまた見られることが出来たわけなんだけど、この<チャオパンタン>、僕は傑作の部類だと思う。というか、この映画を見て無性にパリに行きたくなっちゃった」
「舞台はまたパリの場末で今回はアラブ人街。ヤクの売人やってるユセフという青年と、なんだかくたびれちゃったアル中の中年男ランベールが出会って、まあなんか、女の話みたいなことをして意気投合してるうちにユセフは組織の手によってランベールの目の前で殺されちゃう・・」
「ランベール役の俳優がコリューシュなわけだけれど、彼はこの作品の後しばらくして亡くなってしまうんだ、名コメディアンだったんだけれどね」
「それでランベールはユセフの敵討ちをするために、ユセフがほんのチョット付き合っただけのローラという女の子に接近して、そしてヤク組織の下手人たちを仕置き人みたいに始末していくの」
「僕、あのローラっていうパンク美人の存在ね、あれがとてもリリカルにこの作品を引き締めていると思った。なんということはない、見ようによっては添え物みたいな役なんだけれど、ランベールの、ヨレヨレなのにストイックな生き方、というか、風采のあがらない酔っぱらいなのに行き場のなさを自覚してる座った目つき、というかな・・なんかそんな孤独さを、まるで同類相哀れむみたいな感じでローラはよく引き出していたと思う。そこが共感できる」
「うーん。共感というより好み、でしょ?そこが狩刈くんのいつも弱いところねー」
「(笑)なぬっ?弱い? ま、好み・・そうかも(笑)」
「ちょっとあのローラの描き方には不満。どうにもやっぱり添え物で、人間的な厚みが弱かったみたいに思えたの、っていうのは芝居の旨いヘタもあるでしょうけど、彼女がいなくてもドラマにはなったし、むしろその方がランベールの人間的な深み、息子とユセフを重ねる悲しみみたいなものが描けたんじゃないかって思った」
「あの始終ハンカチをこねくりまわしてばかりいる刑事もまた、そのへんの呼び水にはなりえたしね。ただ、この映画は83年の作品だけれど、パンクとかアラブとかいったパリの下町の風情のなかで、淡々と始まりながらもエモーションが深まる、なんていうかなあ、古くて新しいフィルムノワールの味わいがあるよね」
「わたしもよく行ったレアールとか、思い出したりはした。あと、雨ばかり降っているパリというのも、独特の雰囲気があって、これはパリという街がセリフを持たない主役なんじゃないかって気もした」
「大昔、劇場で見た時はあまり気にはならなかったんだけれど、ちょっと画質というかな、トーンが粗いっていう気がしたな・・僕の記憶ではほとんどモノクロ映画に近かったっていう感じ」
「ま、ドラマとしちゃ、そんなに優れたドラマとは思えないのに、なんか心にシミいるものがあって、それは登場する人々の孤独感とか裏寂しさみたいなものがトーンになってるからかもね」
「そう。そういう意味でさっきのローラってコを僕は気に入ってるというわけ、彼女が雨に濡れてマスカラとか落ちて全然パンクじゃなくなっちゃった素顔に、とっても物寂しい、親兄弟とかからはもう見捨てられてるみたいなハンパ者の眼差しが見て取れるし・・」
「・・なんてことはちっとも映画には描かれてなかったよー(笑)」
「ま・・(笑)そこは認めざるを得ないけどね(笑)ただそういう類のシミ入り方もあるってこと!」(1999.5.10)

シネマ・ギロテスクに戻る