「たたり」1963年 アメリカ

ロバート・ワイズ監督 ジュリー・ハリス

「いやー古風な怪奇映画って感じで、因果応報というか起承転結というか・・風光明媚っていうか(笑)」
後味が悪い作品で、なんだか残酷な、可哀想な映画・・
「ははあ、女史としちゃ主人公のハイミスに感情移入せずにはいられない、と(笑)」
「えーっ、まあね(笑)。でも狩刈くんみたく身につまされる〜!!とは言わないよ」
「強気ですな(笑)と、冗談はともかくこの映画は、たたりのある怪奇な家にひょんなことから招待されちゃったハイミスの悲しい絶望の物語・・僕は主人公のヒロインの描き方がなんともまあ、救いようがないくらい残酷で、いくらなんでもヒドいなあ〜なんでこんなに苛めるんだろっていうような気はしたね」
「ヒロインは姉夫婦と同居して、老母の看病のために青春を棒に振ってしまった女なのね。で、彼女は母親の死後、自分の居場所もなくなってしまい、今度こそ自分自身の人生を生きるのよっ、と決意もあらたに希望に燃えて、幽霊屋敷にやってくる」
「なんでやってくるかというと、その屋敷でたびたび発生している怪奇現象を調査するため、人類学者が彼女を呼んだんだ。というのも彼女には昔、ポルターガイスト現象を引き起こした経歴があって、人類学者はそんな彼女の超常的能力が幽霊屋敷の謎を解き明かすのには好都合だと考えたからなんだね・・」
「考えてみると、とても陰惨でヤリ切れない映画だわ、こりゃ(笑)。ポルターガイスト現象で家に石ころを降らせた、っていう一種の晴れがましい(笑)事件も、実は近所の人に石を投げられただけよ、なんてヒロインは考えていたり・・」
「もう一人、直感力が優れているのでヒロイン同様に人類学者から調査に呼ばれた女ってのが登場する。これがまた自信満々のハナにつく女でね。バーバラ・スティール似で、無意識に人を咎めてしまうような、弱みにつけ込むようなタイプの女。で、ヒロインは、そんな相方からもグサグサやられたりして、どんどんイジけていっちゃう・・」
「ほのかに恋心を寄せた人類学者は実は既婚者で、そのうち彼の奥さんまで幽霊屋敷に来ちゃって、またしてもヒロインはがっくり・・とまあ、なんだかあまりにも不幸っていうか、苛めの過ぎる展開なのね。なんだか不愉快にすらなっちゃうわ!」
「なっちゃうわ!と言われても・・これは、恋や幸福やら家庭やらに恵まれないハイミスが主人公の作品だし、その典型が例えばヒッチの<サイコ>だったりするわけで、実はハイミス映画っていう固有のジャンルは立派に確立されてるわけだよ(笑)。いつかの<恐怖と戦慄の美女>とかモンローの<荒馬と女>とかだってハイミス映画にジャンル分けできるしね。近作では<ハピネス>なんかもそうだし」
「ヒロイン役のジュリー・ハリスは、そういう自分の境遇の弱さをよく伝えていたとは思う。引っ込み思案で、陰影が濃くって、同情を誘う感じ。でも最初からそういうキャラクターで登場したから、物語はなんだか彼女がどんどん人生を諦めていくだけの展開のような感じもしたの。そこがストーリーテリングとしては平板ね
「確かにそうだな。まあ意気揚々と人生を謳歌してるような人にはなかなか悪霊は取り付かない、ってコトかも知れないけれど、<サイコ>のジャネット・リーみたく『魔が差した』とか、モンローみたく『情緒不安定』とかでなく、今回のヒロインはかなり直線的かつ理性的に落ち込んでいく・・それは彼女の一人称で語られ過ぎていたせいだね。もっと映画的に、というか、演技やストーリーの起伏、転調で語られるべきところ、どうにもヒロインのモノローグばかりが続いてスゴスゴと後込みしていってしまう・・」
「幽霊屋敷の造形は、まあありがちなの。もう一人の女はただヒロインを嫌味に晒すためだけに登場してる。それに人類学者にしても、謎解きを進めるかに見えて、実は全然進んでいかない。屋敷の相続人でボンボン息子のラス・タンブリンだけが、類型的とはいえエモーションの面で多少なりとも映画の幅を広げていた感じ」
「同じ題材を使って、もっと物語は面白くも怖くもなったはずだよね。奥さんとか出さずに、人類学者はもう一人の女とフタマタかけていた、とかさ。その色恋沙汰にヒロインは敗れて、またガックリ、とか。そこをラス・タンブリンに弄ばれそうになる、とかさ。僕としちゃ、もうちょっと細部の練り上げをしてほしかった。つまりこれは一種の密室劇なんだから、当然に人間関係において起伏があるべきだし、そこにエモーションのうねりを作らなきゃね」
「まあ、わたしはあんまり楽しめなかったなー、ていうか・・」
「身につまされる?」
「わけないでしょ!」
「(笑)まあ、こういうハイミス映画を見て身につまされるハイミス嬢がいても不思議はないけれど、幽霊屋敷映画というまた別のジャンルとして見れば、まあ傑作かな、という気はする。怪奇な雰囲気は古典的で、安心して見ていられる。その後の<ヘルハウス>なんかにも共通するような、屋敷の持つ個性・人格(笑)みたいなものがきちんと伝わってくる。で、その個性からみると、今回の屋敷に取り付いているのは明らかに女だね」
「屋敷の怪奇現象が女に対してしか起きないからでしょ?」
「ついつい同性を苛めちゃう嫌味なハイミスの悪霊かな(笑)。というわけで、まことテーマは一貫してます!」
(2002.9.30)

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