「あんなに愛しあったのに」1974年イタリア


エットレ・スコーラ監督 ヴィットリオ・ガスマン ニーノ・マンフレディ ステファニア・サンドレッリ

「これは、見終わっても、ただ見つめ合って、ああーいい映画だった、としか言えない」
「見つめ合うのはともかく(笑)イタリア映画ならではの、笑いながら人生の厚みや重さを感じさせてくれる、とにかく素晴らしい作品ね。イタリア好きの人は絶対に見て損はない
「損どころか!得するよ。こういう映画を見ると僕は、ああ、トシをとるのもいいもんだな・・っていうか、なんか、人生ってものにすごく肯定的になれるような気がしたし」
「いつもみたく、身につまされる〜〜!(笑)とか言わないの?」
「ええっ?それ僕と女史の、昔のこと?はっはっは・・・と、笑ってごまかしとくけど、この映画は語り口が実に巧みで鮮やかで、そういったところだけでも、もう感動する」
「物語はといえば、戦争中パルチザンの仲間で固い友情に結ばれたアントニオとジャンニとニコラが、いろんないきさつがあって、同じルチアーナという女の子を好きになるのね。そして、その後の25年間を物語る・・」
「まずは戦後のイタリア社会が実に巧妙に再現されてるよね・・選挙とか政党活動とか、あるいは大ブルジョワによる経済復興とか、さらにはヒッピーみたいなのとかも」
「ニュース映画を入れたり、さりげない話題に紛らわせたりしながら、世の中の移り変わりをよく伝えてくれる。あとは、映画好きにはもうたまらない〜〜!って感じの、フェッリーニ監督とマルチェロ・マストロヤンニその人が登場して<甘い生活>のロケ現場、トレビの泉のシーンを再現してくれるの!あれにはなんか、感動したよ」
「僕もね、ジワッときた。フェッリーニ本人が『ロッセリーニさん!』なんて呼ばれる(笑)。それにニコラという男には多分にスコーラ監督自身がダブってるんだろうけれど、その彼が家庭も顧みないような理想主義者の映画狂(笑)。<自転車泥棒>を巡るクイズのシーンやデ・シーカ監督本人が登場するシーンなんかはもう、本編からすれば完全に蛇足なのに、またそれが素晴らしいよね」
「そういう蛇足っていうか、細かなエピソードが寄り集まって、いわくいいがたい、なにかしら幸福なエモーションが伝わってくるの、なんか、みんな暖かくていいなーって感じが」
「それにトロヴァヨーリの洒落た音楽!それからジャンニを演じた名優Vガスマンはさすがの存在感!その他の俳優もことごとく素晴らしくて、いやーいったい全体、どうしてこういう作品が作れるんだろう??イタリア人っていうのは、とかく日常生活のなかに、僕らの人生とは切っても切り離せないもの、深淵で意表を突いて、しかも憎めないものを発見することに長けている人たちだね・・つまりそれは愛、なんだけど、でも僕らはそれをあからさまに愛とは言えない」
「国民性の違いね。彼らって、きっと毎日の生活の細かいところにこだわりをもって生きているんじゃないかなあ・・あの場末のレストランには、なんかそんな人間模様が煮詰まってたよね。ライター売りの男とか電話を待ち続けてる女とか。セリフはないのに、彼らには彼らなりに、きっと、『あんなに愛した・・』と言えるものがあるように思えてきて、それが観客、わたしたち自身の人生にも自然に繋がっていく・・そういう市井の庶民の生活感情のなかにこの映画は染み入っていくの」
「ああああなんて素晴らしい映画なんだ!」
「はいはい、突然わめき出さないで(笑)スコラ監督といえば<マカロニ><特別な一日>、そのほかとにかく素晴らしい作品ばかりだけど、今回のやつは、パートカラーとか、ストップモーションをかけてモノローグに移るとか、自然と一人称になって自分のことを喋り出してまた三人称に戻るとか、色々と手が込んでいたね」
「語り口の自在さはある種、フェッリーニ的でもあってね・・しかも、とにかく笑える。駐車場係とか(笑)」
「いつまでたっても救急車の担架係とか(笑)そうやってつましく暮らして、それで人生に対してyesと言ってる」
「いやいやイタリア人はsiと言うんだよ(笑)こういうsiと、例えば<ライフ・イズ・ビューティフル>のsiとは、どこか明らかに違うものがある。題材とか視点の違いはあるけれど、根本的なところで、<ライフ・イズ・ビューティフル>には厚みが感じられなかった・・本当の人生の笑いは、決してギャグじゃないんだ
「この<あんなに愛しあったのに>は、とにかく30年ちかい歳月の物語だもの、分厚いよ」
「まあ、そうかな・・そういうことか・・でも、こだわりたいな。『何なんだろな?』って(爆)」
「(笑)それが言いたかったのね?」
「いや、そうじゃないけど・・もしもこの映画をシニカルに見る人、つまり彼らのsiに対して『そうは言ってもねぇ』ってブツクサ言う人がいたとしたら、その人は絶対に不幸な人だな」
「うーん・・まあ、そこは譲っておく(笑)。でも、この作品はとてもアクチュアルに作られた一種のファンタジーには違いなくて、わたしには楽しい夢を見させてもらった、って感じも否めないな」
「あー、そりゃ僕も同感だよ。しかし、楽しい夢を見て、楽しかったと言うか、だって夢じゃないか!と言うかは、また別の話、人生観の話だね」(2001.3.2)


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