「悪魔のシスター」1973年アメリカ



ブライアン・デ・パルマ監督 マーゴット・キダー

「うーん。これはまあ、ヒッチ映画の出来損ないかしら」
「まあ(笑)出来損ないと言っても間違いじゃないだろうけど、僕は、もう少しこの映画を擁護したいけどなあ。それなりに楽しめるような気もするんだけど」
「例えばどんなところが?」
「と・・言われると、実はスカスカだったりするんで困るんだけど、やっぱり殺人シーンの殺気というかな、あのテンションの高さは、かなりショック度が強いんじゃないかな、音響とか色彩設計とかも含めて」
「全然必然性のない殺人という意味ではね。もともとどんな風に映画が始まるかというと、なんなのあれ、ピーピング・トム・ショー(笑)とかいう大人のオフザケ番組から入るのね」
「そうそう。あれはね、エロティシズムから入って観客の興味を逸らそうとする、まあ常套手段ではあったよね」
「で、そのショーに出ていた俳優と女優がいい仲になって、ヘンなオヤジが女優の元夫とかいうかたちで二人に絡んできて、なんだかんだするうちに女優にはどうやら双子の妹がいるらしいとかで・・」
「ま、それから殺人シーンへと、まあ何だか持って回った展開があるんだけれど、結局、どんなに観客を欺こうとしても、この映画は最初からシャム双生児だなんだというイメージで来るしね、女優の一人二役にしても、なんだかね(笑)、底が割れる」
本当にサスペンスフルなのはバーナード・ハーマンの音楽だけっていう感じ
「でも、その後の展開がね、これまた持って回っているんだけれど僕は楽しめた。マッドサイエンティストみたいな医者が幻覚みたいな映像の中で双生児の経緯と秘密を語ったり、女新聞記者へ催眠術をかけて双生児の片割れみたいにしちゃうとか、それとあの解放治療場みたいな感じの病院の造形とかね。なんか、極力、観客の予想を裏切ろうとする努力がね、感じられるわけなんだよ」
「そういえば最初のピーピング・トムと、窓から殺人を覗いていたっていうところでは、ノゾキが響き合っていたりというのはあったよね。それからMキダーが、一瞬、<エクソシスト>のリーガンそっくりだったりとか(笑)」
「そういう楽しみ方でいいんじゃないかなあ(笑)。もっと言えば色彩設計とかも、実は結構、入念だったりしてね。それから車の中でワザと母親の長いムダ話を聞かせたりとか。工夫してます、と言わんばかりなんだよね、そこが、冴えてはいないけど好感もてる」
「探偵役が敏腕の女新聞記者で、彼女は警察相手に告発記事を書いたりしていて、というのが共感を呼ぶかどうか、そこは疑問ね」
「それを言うなら最初の黒人俳優は別に、どんな酷い目にあったって、僕は知らないよ(笑)」
「要するにやることなすことみんな空振りしてるけど一応はバットを振った映画ってことかしら(笑)でも、わたし、最後まで見ちゃったけど」
「そうなんだ。それは大事なことだよね。実は僕も最後までね、この映画はもっと面白く怖くスリリングになったはずだな・・なんて思いながらも最後まで見ちゃったし、ほとんど金をかけずにこの程度のものが出来るんなら、それはそれでいいじゃないかっていう気にもなるしね」
「で、物語はまったく収束しないのね。一応のストーリーは終わったけれど、なんか釈然としない・・で、最後にまたソファが現れる。牛と一緒に。あそこはオチ?」
「オチでしょ、きっと。<スネーク・アイズ>で宝石を最後に光らせた、そんなことをこの監督は25年も前からやってほくそ笑んでいるわけだね(笑)でも、そういうのって嬉しいよね」
「90分の映画にしては、なんか、結構つき合わされちゃったっていう感じだったの」
「それでもまあ、楽しかったと言える映画は、実は駄作を装った傑作なのかもしれないよ(笑)」
困ったことに、なんかユメに出てきそうな何かは確かにあるのね」(2000.3.5)

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