「she killed in ecstasy/恍惚欲情殺人魔」1970年スペイン・西ドイツ



ジェス・フランコ監督 ソルダッド・ミランダ ハワード・ヴェルノン エヴァ・ストロンバーグ

「いやー素晴らしい。数百本あるフランコ映画のなかでもかなり傑作に入る部類だよね」
「ってことは、まあ、普通の映画の水準より少し落ちる程度ってことだね・・」
「あららー辛辣だね・・って、今日もまた実はワタシ狩刈くんの一人トークなのだ(笑)。なにしろ<世界三大怪人>以来、女史は我が敬愛するジェス・フランコ監督の作品を見るのを頑なに拒否してるんで」
「まあ人を選ぶ映画だよ」
「選ばれた人はシアワセ者だよ。で、この映画。物語ですが、要するに『医学界から追放されて発狂・自殺しちゃった夫の仇を討つため、彼の美貌の若妻が文字通り体当たりで敵を次々と殺し、復讐を遂げていく』って話し
「んんんんーミリョク的だ!で、その美貌の若妻がソルダッド・ミランダなわけで、神秘的でスレンダーで繊細で悪女で気品があって・・と、いくら賞賛してもしきれない」
「この際、女史もいないし徹底的に内輪受けでいきたいんだけど、まあそうは言っても限度もあるし。映画は、若き美貌の妻が地中海とおぼしき海を眺めながら今は亡き夫のことを思い出してるシーンから始まる・・」
「なんか既にソソられる・・ああ、わたしにはあなたしかいないのに、あなたはどこに行ってしまったの・・なあんてね」
「言われてみたいもんだよね。で、回想シーンになって、その夫が登場。彼はどうやら人体実験をしていたらしいんだ。万能ワクチンの実験とかでね」
「コレがボクの実験だ、とか言ってホルマリン漬けの胎児の標本を妻に見せたりしてね」
「そん時のソルダッド・ミランダの衣装がまた、ゴルチェかと思うくらい奇抜。要するに光沢のある強化プラスチック・ブラって感じ」
「で、医学会で実験結果を発表すると、聞いてる医者たちが口々に、『このケダモノー!』『人でなしー!』『ヘソかんで死ねー!』と彼を迫害する。彼は完全にパラノイアになって被害妄想に陥って、寝ても褪めても『ケダモノー!』。違う違う!ボクは人類のために研究しているんだ!『お前なんかヘソかんで死ねー!』違うんだよー!と発狂していく・・」
「それで、夫が不在の間に、医者のウォーカー、ヒューストン、ドーネン、女医のクロフォードたちが彼の実験室を襲って、標本とかがコナゴナに・・ミランダが失神して倒れてる」
「ここで注目したいのは、胎児のホルマリン標本が持ち去られてるってことで、まああれ、きっと大事な借り物だったんだろうね。フランコ監督って節度があるから好きだ」
「節度が聞いて泣くよ・・ってそれはともかく、もはや完全に発狂状態に陥った夫にどうすることも出来ない妻ミランダ。夫婦は海辺のリゾートハウスに隠遁したんだけど、もう絶望状態でね。泣ける。ミランダが夫に、聞いてる?ねぇ聞こえてるの?って尋ねる場面はもう、胸がかきむしられるよん
「『ボクは人類を助けようとしたのに・・』『わたしもあなたを助けたいのよ・・』でも夫はついに自殺・・ああ!」
「どうやって生きていったらいいの!と泣き叫ぶ妻は、夫の復讐を誓うわけだ・・それでまずウォーカー博士が標的になる」
「美貌の妻は、神秘的で底知れない、タダものじゃない雰囲気を振りまきながら、ウォーカー博士を色仕掛けで誘惑する・・」
「っていうか、あれ、ウォーカー博士からモーションかけたんだよ。出来過ぎ。ご都合主義!」
「まあね。で、実は博士はマゾだった!もっとぶって!の世界だったっていうのは更に拍車をかけた出来過ぎの展開だ。でもさ、黒いガーターベルトにナイフを差し込んでウォーカー博士にのしかかるミランダ嬢、いいね〜」
「続いて標的となったのは女医クロフォード。例によってエヴァ・ストロンバーグが好演!」
「だけどその女医が実はレズだった!あなた可愛いわ!の世界だったっていうのも更に拍車をかけた出来過ぎの展開だよね(笑)」
「フランコ監督からご都合主義を取ったら、あとはハプニングくらいしか残らないよ。さて、今度のミランダ嬢はショート金髪のカツラ。それから殺し方も気が利いてる。透明のビニールクッションを顔に押し付けての窒息死。死にザマがビンビン伝わる・・」
「もうちょっと色っぽくてもなあ・・なんかカメラがロングだったよ。さて、それで若妻は教会に立ち寄って、自分たちがそこで挙げた結婚式のことを思い出して、泣く。自殺した夫の死骸がまだベッドにあって、キスしたり撫で回したり・・死姦の世界!」
「僕はあれは、最初は幻想だと思ったんだ、だって死骸にしちゃ、息してるんだもん(笑)」
「ちょっと粉が吹いてたけどね(笑)。ところで三人目のターゲットはヒューストン医師。彼はすでに復讐に怯えていて警察に駆け込むんだけど、『君の言ってる相手はもう死んでるんだろ?我々は死人を追ったりはしない』とあしらわれて、いよいよ彼は黒髪の美貌の女にツケ狙われてパニックに陥る・・」
「今度の彼はまあストレートな性癖だったよね。さすがのご都合主義も控えたみたい」
「実はサドだった!なんてご都合主義なら大歓迎だったのに(笑)。で、彼もハサミでノドを刺されてサヨウナラ〜〜」
「復讐の瞬間、殺す相手とセックスしながらミランダ嬢は、今は亡き夫との愛の思い出をフラッシュバックさせるんだね、これって常套的とはいえ、グッとくるなあ・・オンナの哀しみみたいな、さ。相手とキスすると夫との最後のキスが思い出される・・そして家に帰ってソファのうえで膝をかかえて、夫恋しさに呆然と、空虚を見つめるばかりのソルダッド・ミランダ!ああーー素晴らしい!哀しい!胸が張り裂けそうだよ〜〜」
「マジ大感動だよ。この映画はとにかくエモーションが濃いんだ。それって映画の基本でね。日活ロマンポルノの傑作には、こうしたエモーションの濃いものが多い」
「そうだねぇ、夫の亡骸をかき抱きながら、もう一度二人でやり直しましょ、なあんてね。そして最後の復讐相手、ドーネン博士が、御大ジェス・フランコご本人なわけだ」
「パチパチパチ〜〜〜彼はまず妻を殺されて、そしてボーゼン自失のところを椅子に縛り付けられて、はだけた胸にナイフをチクチク刺されて、あはん!うふん!」
「役得ですな・・あんたは夫をこうやって傷つけたのよ、思い知りなさい!あはん!うふん!平手打ちとかもしていただいてフランコ冥利に尽きるね」
「最後は夫の死体とともに車で逃走する妻ミランダ。彼女は断崖絶壁から車を落として自殺!」
「その断崖絶壁たるや、ただの坂で、車はズルズルと走って下るだけなんだけど、まあ、意味したいところは分かる。映画は想像力を使って見なくちゃね〜〜決して火薬を使ってドカンバカンとやるだけが映画じゃない。フランコ監督って節度があるから好きだよ」
「それさっきも言ったよ。映画って、金と節度は反比例するからね」
「それって、さりげないけど名言だね(笑)」
「で、ようやく警察が乗り出してきて、『彼女はもともと悪人じゃなかった・・夫の不幸な死が彼女をこうさせてしまったんだ』」
「泣かせる。これが節度ってもんですよ〜〜」
「てなわけで、あー見た見た。大満足〜〜」
「音楽は、例によって渋谷系でブレイクしたManfred HublerとSiegfried Schwabのセクサデリック・ダンスパーティ・ミュージック。で、クラッシック部分は名匠Bruno Nicolaiが担当。もう全編、グル〜ヴィ、てな感じでノリノリ〜〜 」
「どうしてこの傑作が日本語版でないんだろうね。情感、カット割、ストーリテリング、出演者、どれをとっても高水準なのに・・ぐっすん」
「まあまあ・・気を落とさずに、お次は<ヴァイパイヤ・レスボス>に行ってみよう!さらなる孤高の高みを目指しますよん」
「天才は孤高だからね」(2001.3.14)


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