「サタデー・ナイト・フィーバー」1977年アメリカ


ジョン・バダム監督 ジョン・トラボルタ

「踊るアホウに見るアホウ(笑)」
「今になって見ると、これはほとんどカルトムーヴィーに近いものがあってね。アゼンとするわけなんだけれども・・感想はというと、トラボルタが可愛かった、とかね」
「アゴが細かった、とかね(笑)。一応、ストーリーはあるの・・ペンキ屋に勤める男の子が踊りほうけてる」
「以上、終わり(笑)。とはいえ僕はこの映画に様々な意義を見いだしたいわけだよ。トラボルタの兄が神父をやめる。つまり神の否定だ。イタリア系とスペイン系の対立。つまり白人間における人種問題だ。童貞の少年が童貞のままに終わる。つまりアンチフリーセックスだ。この映画が作られた77年というのはベトナムが終息して平穏を取り戻し、カーター政権のもとにアメリカ社会のパワーが弱体化していった時期で、その足腰を鍛えなおすために全米でディスコブームに火がついた・・」
「はいはい(笑)。この映画、実はティーンエイジャー映画だから、ドラッグとかには結構ストイックなの。ま、十代の男の子の頭のなかはセックスしかないというのはいつかも狩刈くんが言ってたけれど、それをディスコのダンスに置き換えてみました〜という、これは良識ある映画づくり」
「その通り!適度に不良少年ぽくて、でも一応、主人公は仕事についててドラッグや酒には手を出さずにディスコキングを目指していい汗かいてる・・と、これは文句のつけどころがない、前途有望な少年映画なんだ。だからこそ僕なんかは、この映画に重要なメッセージを見て取りたいと思うわけ。最後に仲間の少年が悩んで自殺する。これは都会の孤独、ディスコミュニケーションの暗示だ。しかも彼は女友達を妊娠させちゃったことで苦悩していた。これは中絶反対のメッセージだ。それから・・」
「はいはい(笑)。もっともヒロイン役の女優には全然ミリョクがなくて、なんであんなキャスティングだったのかしらね」
「彼女はよく有名人と二人で会ってお茶したの、って話しをする。あれは彼女なりのウソなんだね。でまかせ。ホラ話。実際は彼女はただのタイピストだったんだよ・・ってことをラストシーンで暗示させる映画作りは、いつかトラヴォルタの恋も成就するだろう、なんてことも予感させる、素晴らしい余韻を残したね・・」
「えっ・・と、そうだったっけ?」
「うふふふ」
「ちょっとー違うでしょ。そんなことまではっきりとは描かれてなかったよ」
「うふふ。でも、そんな感じがしない? つまり彼女が昨日はEクラプトンに会ったとか今日はDボウイとお茶をした、なんていうのは大ウソで、実は彼女はマンハッタン住まいに憧れるブルックリンのタイピストなんだって」
「まあタイプ打ちからキャリアを始めたの、とかいうセリフはあったかと思うけどさ・・でもまあ、確かにホラ話なのかもね」
「そこをチャンと押さえておくことが、この映画のポイントなんだよ。それさえ見逃さずにいれば、この映画におけるアメリカ社会の多様かつ重層的なパラフレーズが次々に浮かび上がってくるわけで、それはひとつに・・」
「はいはい(笑)もう遠慮しとくよ(笑)」
「いやいや(笑)ここからが本題でね、要するにアメリカンドリームなんか信じられない、価値がないっていうようなメンタリティなんだね。トラボルタの部屋にロッキーのポスターが貼ってある。彼はヘビー級チャンピオンだ。ところが我らがトラボルタったらなんだよ、場末のディスコで八百長キングか・・てな、そういう閉塞感があって、これは僕、前年の<タクシー・ドライバー>みたいな行き詰まり感と共通する70年代に特有の屈折感があると思う
「ふーん。・・少しは聞く耳持つ気になったけど(笑)、そうかなー。ただ町なかのどこにでもいるディスコ好きの男の子を等身大に描いて見せただけって感じがする。やんちゃで世間の右左も分からないけれど、なんとか前向きに自分の人生を見いだしたい、っていうような、そういうポジティヴでナイーヴな気持ちをトラヴォルタは涙目まじりでよく伝えていたよね」
「ははあ・・彼はまあ母性本能をくすぐっちゃうような俳優だったからね(笑)。というか彼自身がこの映画でスターになって、彼自身の等身大とキャラが重なるしね。もっともコレ以前に彼はブライアン・デ・パルマ監督の<キャリー>で踊りほうけているんだけれど(笑)」
「そして90年代に復活して、今じゃなにをやらせてもトラボルタにしか見えないという・・これはデ・ニーロ並みの存在感ね(笑)」
「それはきっと体重の問題かな(笑)。とにかくこの映画はあまりにもいろんなことを考えさせられる。見てるうちに踊り出したくなるか、考えたくなるか、は人それぞれだろうけれどね」
「ビージーズほかナツメロについて話すスペースがなくなっちゃったけど?」
「え・・いいでしょ、べつに。これから鏡の前で髪をとかすたんびにナイットフィバァ♪ナイットフィバァアア〜なんて聞こえてくるのはイヤだよ」
「パンツ一丁で? でもさすがの狩刈くんもあのパンツははけないでしょ?」
「ところがどっこい!見てみる?」(2001.9.21)

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