「猿の惑星」1968年アメリカ



フランクリン・シャフナー監督 チャールトン・ヘストン

衝撃のSF映画!傑作中の傑作!これは全五巻を続けて見るべき!」
「とまあ、これってティム・バートン監督の近作じゃなくて、元祖の方ね」
「文明批評があってシニシズムがあって、もちろん活劇あり若干のお色気ありドラマあり・・と、とにかくSFというジャンルの真骨頂が楽しめる作品。僕は小学生の頃にこれを見て、とにかく熱狂したよ」
「確かテレビでも<猿の軍団>なんてドラマをやってたよね」
「すごい、なつかしー!女史、見てたの?」
「ううん、わたしは見てない。クラスの男の子たちが見てたっけ。あと<宇宙猿人ゴリ>とか」
「<スペクトルマン>だね。ひゃあお歳がバレバレ(笑)・・ところでこの映画、ナニがすごいかって、全五巻がメビウスの輪みたいにつながって、物語の最後がまた最初に戻るんだよね
「ロケットに乗った宇宙飛行士たちが、とある惑星に不時着するのね。その惑星は猿が人間を支配してる・・人間はまったく知能を欠いて、サル同然」
「そんななかで、猿の女医と考古学者が宇宙飛行士を発見する・・彼だけは字が書ける。言葉が話せる!と」
「あきらかに猿たちは中世時代の人間と同等レベルの世界に住んでいて、つまり聖書に書かれていることと反することを言う者はすべて異端と見なされる時代ね・・そんな時代に宇宙飛行士の出現は、猿たちにとっても衝撃的(笑)」
「まあ、人間とサルの立場を逆転させて、しかも時代背景を中世に置いた、というあたりでこれはもう脱帽だね。あとはどんなことが起こるか。だいたい見てるうちに想像はつく。けれど根底には、人間の科学技術文明、物質文明、消費社会に対する懐疑や批判精神が流れていて、その部分がいつまでも古くならない・・というか古典的な枠組みのなかでゆるぎないの構成力を発揮している
「まあ途中でいろいろあって、最後に、実はその惑星は地球だった!遥かな未来の地球だったのだ!という衝撃のラストでまずは第一巻が終わるの」
「でもどうして人類が猿に支配されるようになったか分からない・・それから実はまだ地下に隠れ潜んで高度な文明を継承しつづけている人間たちがいた! なんて意外な展開になって、彼らは隠し持っていた核爆弾を爆発させちゃって、今度は逆に、さっきの猿の医者と考古学者が爆発の中、ひょんなことから過去の地球にタイムスリップしちゃう(笑)。なんでもアリの世界だ」
「それで、知能をもった未来の猿の出現に驚いた現代の人間たちがまた、立場は違えど似たようなドラマを繰り広げて、そして結局はこの猿たちを殺そうとするんだけれど、彼らの子供が生き延びて・・それが後になって人間たちに反逆し、彼ら知能をもった猿たちが地球の支配者になる」
「というわけでストーリーは一巡する。これだけハショってみても、実に骨太のストーリーだね。まるで手塚の『火の鳥』だ」
「でも完成度からいったら断然、この第一作が素晴らしいの」
「シャフナー監督はのちに<パットン戦車軍団>とか<パピヨン>とかいった活劇大作を撮る人だからね・・」
メイクアップも徹底的でとにかくすごかった・・面白い話しがあって、俳優たちがみんな猿とかオラウータンとかゴリラとかに扮装してるでしょ。で、撮影の休憩時間になるとみんなそれぞれ、自然に仲間同士で集まって休んでいたんですって。自然にそうなったらしいの」
「なりきってたのかな・・それでバナナを囓ってたとか?」
「(笑)猿の女医ジーラと考古学者コーネリアスが恋人同士ってところも良かったりして、彼らが見せてくれるオトボケでコミカルな様子が、ほんと可愛らしいの」
「彼らは彼らなりに文化を持っていてね。キスの仕方とかが実に可愛らしいし・・それにやや優柔不断なコーネリアスを時折りリードしていくジーラ、という組み合わせも、なかなかいいね」
映画のモチーフは、ミッシング・リンク。わたしたちはどこから来たか。どうやって進化したのか。わたしたちの前に文明はなかったのか? なんていうか、『神々の指紋』みたいな謎解きもあるし・・」
「そこが、繰り返し言うようだけれどSFなるものの真骨頂、つまりセンス・オブ・ワンダーに満ち満ちているんだ。と同時に、どこかしらダークな眼差し、シニカルな眼差しがあって、全体にこれ、とてつもなく悲観的な将来像を描ききってる」
「1968年といえば<2001年>が作られた頃ね・・やっぱり文明のミッシング・リンクを求めてる」
「こういう映画を見ると、SFが、なんていうかホネぬきにされちゃってる昨今のSF風映画を見る気が失せるな・・そのへんはジョージ・ルーカスとかに原因があるんだけれども。活劇だけじゃ、チャンバラと同じ。宇宙を舞台にスピード感さえあればSFだなんて、とんでもないよ!あるいはただのメロドラマを宇宙仕立てにしてるだけとかさ・・巨大隕石が降ってくるだけであとは消防士とその恋人のメロドラマとかさ。そんなのがSFじゃ困る!」
「(笑)そんなことは誰も言ってないと思うよ」
「あっそうか・・まあとにかく人間文明批評と呼ぶに値する映画が昨今なくなってるのは、これはマズい状況ではないでしょうか、ってことを僕は言いたいんだけれども」(2001.7.31)


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