「バタリアン・リターンズ」1993年アメリカ



ブライアン・ユズナ監督 ミンディ・クラーク

「出るべくして出た狩刈くんのシュミ映画ね」
「あー(笑)、ま、そう。哀しき女ゾンビ。これはなかなかの傑作でしょ?」
「うーん・・」
「あんましむずかしく考えないでいこう(笑)。例によって生物兵器というか死物平気として開発途上にあるゾンビたちが大暴れしてくれるんだけれど、今回は哀しい恋人たちが主人公。死んでも死ねず腹がへってノーミソを食べちらかすばっかりの彼女を連れて夜の街を逃げまどう男の子、なあんていう設定は最高に胸を打つよね」
「よねって言われてもまあねぇ。ただ、あの女の子の造形ね、もともとちょっと深みのないパッパラー女だった彼女が、ゾンビになってからすごく切ない顔になっていくのはよかったかも。知り合いにいたのよ、かなり自傷気味のコ。彼女を思い出すなあ・・てゆう意味では、わたしは個人的な思い出でこの映画にはガーンときた。でも、あくまでも個人的な理由でよ。映画自体はまあ、まあ、まあ・・」
「個人的な記憶をフカブカと揺さぶってくれるのが傑作の傑作たる由縁ですよ〜〜と、それはともかく、まあストーリーはといえば、単純ガサツ。軍人の父親に反発してカノジョと家出する少年が途中でバイク事故を起こしてカノジョが死亡。で、父親が開発に携わっていたバタリアン実験施設に潜入してなんとカノジョを生き返らせちゃう。でもカノジョは死体には違いないからさあ困った〜」
「まあね、物語としてはまあそこまでで、あとは逃げる・追うの展開だし演出もザツでセットも学芸会、役者たちもデグノボーばかりなんだけれど、この映画はヒロインが、自分のカラダを痛めつけて、その痛みだけがゾンビである自分をなんとか忘れさせてくれるっていう、そこのところのエロとグロの発想ていうか、まったくよく思いつくなあ(笑)って感心」
「自分はまだ人間なんだ、まだ生きてるんだってことを、カラダのあちこちに釘だの針金だのを突き刺しながら自覚していこうとするってのは、まあ完全にマゾヒズムだよね。ヒジョーにイタイ」
「その意味では、どことなく自作自演ていうかなあ。結局は自己完結のエモーションね」
「確かに、そうやって苦悩して絶望して涙を流してそれでも手足に針金を刺さずにはいられないヒロインに対してはナンにも出来ない。慰めようがない。カレシにしたところで全く手の施しようがないわけだ」
「そう。だからこの映画のエモーションはあのヒロインの内面にしかないの。でもその切実で切ないキモチがこっちにもすんごく伝わってきた、という意味では、あのヒロインを演じてた女優はいい芝居をしてたのかも」
「そういうことだねぇ・・しみじみ。ま、もっともこのテの映画で出来ることっていえば手足に釘刺す程度でね。ほんとはこれだけの着想で始まったんなら、もっとフカブカと、人間存在てナンだ? とか、生きる、死ぬってなんだ? みたいな哲学的な展開であったもいい」
「それは(笑)確か<ブレードランナー>の時でさえ狩刈くんはヒケてたよ・・」
「そうだったっけ? ただせっかくの題材がもったいないんじゃないかなっていう気がするわけ。これって上質のホラーにはつきものの哀切なロマンチシズムがある作品だから・・」
「わたしはまあ、そこまでは考えないけどね。全国指名手配を受けて警察も軍隊も行方を追っている恋人たちっていう設定は一種のクリミナル・ラヴァーズというロマンチックな感じを出してはいたけど、あのカレシがちょっと頼りないっていうか、そう、手もアシも出ないっていう態度で逃げようとするばかりだったから、ヒロインの自傷だけが記憶に残っちゃったって感じ」
「ナゾの黒人プーとか、ストーリーに割り込んでくるメキシカンたちとかどんどん出して来てストーリー展開が行き詰まらないようにしたのは、さっき女史が言ったような感じで、まあよく考えたものだなあ、とは思う。ただ僕が言いたいのは、半裸で針金ピアスのゾンビ女はイカスじゃないか、っていうよなロマン(笑)。スプラッターパンク女の造形美がホカの映画に大々的に受け継がれていかないってのは、実は僕としちゃフに落ちないんだけれども。B級イクスプロイテーシォンでもっとやってくれ〜ってお願いしたい」
「(笑)人間存在とはナンだ? とボディピアス女とが響き合うっていうのは狩刈くんの妄想ブレインのなか以外にはなかなか認めてもらえないのかも」
「あ、言ってくれるなあ〜でもバタリアンシリーズのなかでは最もSF仕立てで完成度も高いし、それはヒロインの造形が最高にユニークだからだよ」
「うーん、ま、いつか見た<ボディスナッチャー>とかさ。ま<エイリアン>でもいいんだけど、要するにカノジョが異物になっちゃった時の男のコの悩み、女のコの哀しみ、みたいなもの? それはヒューマンなドラマを作る題材にはなってるのね。だからわたしはもっとカレシの方にこそ、いろいろと深い芝居をしてもらいたかった。彼女の苦しみを共有してなかった。カレシのエモーションだって切ないはずなのに、役者が全然ダメ」
「ま、あのカレシ君まで針金ピアスして痛みを共にするなんてことになったら僕、もうカラダじゅう痛んでとても見てられないよー。ていうか僕としちゃいつか長話しちゃった<チャオ!マンハッタン>的な意味合いで、やっぱりヒロイン映画として、個人的な理由で感動してるわけで」
(2002.11.6)
thanks to akatsuki


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