「ブーベの恋人」1963年イタリア・フランス


ルイジ・コメンチーニ監督 クラウディア・カルディナーレ ジョージ・チャキリス

「これはね、カルロ・ルスティケーリの音楽。大昔、初めて劇場で見た時の感激が忘れられないの・・なんかモダンでカッコいいよね」
「僕もこの音楽は、なんかとても好きだな、サントラ持ってるから今度貸してあげるね〜」
「で、ストーリーはというと、ふとしたことから警官を殺してしまったパルチザンのブーベと、彼を慕う恋人マーラの物語・・ブーベがジョージ・チャキリス」
彼、ルパン三世そっくりだったね(笑)・・と、冗談はともかく、チャキリスはほとんど芝居がヘタ。ニヒルでストイックなゲリラって感じで演じたのかもしれないけれど、どうも彼には共感できなくで、だからそんな彼にネツをあげるマーラのキモチが僕にはちょっと・・」
「マーラのクラウディア・カルディナーレは<8 1/2>の直後の出演にしては、すごく若くて、なんか女の子〜って感じで良かったと思うけど」
「そうだねぇ。この映画は彼女の、コケトリーで芯は強くて、でもあんまり賢くはないっていう感じの演技というか素というか、それはよく活かされてたと思う」
「最初のうちはブーベが構ってくれないんでスネたりして、ワザと意地悪なすねた態度をとったりして、そのうちブーベがいなくちゃ気持ちが収まらなくて・・そして彼の逃避行っていうか、隠れ家生活につき合わなきゃならなくなる。なんとなく気持ちとしては分かるし・・でもシンプルなメロドラマではあるよね、ちょっと作為的な展開」
「そりゃそうさ、これはメロドラマでしかない、といいたいところなんだけど、戦後間近のイタリア社会の雰囲気は、まあ良く出ていたんじゃないかな。解放後のパルチザンの位置付けが意外にも不安定だったり、共産党が巻き返しを食らってきたりしてね」
「昔見た時はマーラのお父さんが、いい味出してたように思ったんだけど、今回の印象じゃちょっと類型的に思った・・結局この映画は、人間関係とかがあんまりうまく描けてなかったようにも思うけど、でも、なぜだか、とても懐かしいっていうか、今の時代じゃありえないような古風な物語かも、って思う」
「ははあ・・ノスタルジックな感じは僕も感じたけど、それは、意外とモダンなカット割とかもある、露出オーバー気味の独特なモノクロ映像が醸し出してたのかもね・・この映画で決定的に欠けている、というか、まあ、ちょっと不十分に思うのは、恋人たちの切実さじゃないかな・・戦争中、明日の命も分からないといった極限的な生活の中で若い娘が恋に命がけになった、そういう憧れっていうかな、そんな切羽詰まったエモーションが足りないんじゃないかな、大戦中に身近だったはずの死というものが背景として描かれていたら、またきっと違った味わいになったと思わない?」
「原作では、そのあたりがうまく描けていたよね。確かに、そういう時代背景があって、それがうまくこちらに伝わってくれば、恋人たちの行動も、それなりに共感を呼んだのかもしれない・・でも、わたしはヴィスコンティ監督の<若者のすべて>を見た後でこれを見て、なんかひとつながりのイタリアの恋人たち、って感じの味わいが楽しかった」
「女史にしても、マーラの行動ってのは、ちょっと視野狭隘っていうかさ・・途中でステファノって青年が出てきて、彼と比べたらブーベを選ぶと思うかい?」
「えっ?わたし?(笑)まあ、どっちもバツって感じだけど、そういえばステファノ君とのエピソードも、ちょっと消化不良だったし・・でもこれ、個人的には、たとえ出来は良くないとしても、そんなに辛くあたる(笑)ような作品じゃないって思うけど、そこがうまく言えない・・」
「ある意味では、すごくリアルなファンタジーなのかもね・・獄中の恋人に会いに列車に乗ってるマーラの横顔。目元がとても涼しかったような気がする」
「うーん。ちょっとアキラメの入った涼しさ、かな(笑)」
「例えばトルストイの『復活』みたいなラストシーンなんだけど、彼らにはまた長い刑期が残されてるだけって感じで展望がないんだよね・・」
「むしろマーラ自身の成長みたいなものは、感じが出ていたようにも思うよ」(2001.2.20)

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