「プライベート・ライアン」1998年 アメリカ


スティーブンスピルバーグ監督 トムハンクス

「3時間かけてオレは一体、何が見たかったのかなーと思ったね(笑)」
「(笑)だから選択を誤ったのよー久々に二人で見に行こうってことだったのに」
「ごめんよー、好意的に見たくてもそうは見れない、呼び水のない映画でした」
「シンドラーでもそうだったけど、あの善良そうなスピルバーグの笑顔が瞼に浮かんでは消える、で、なんでこんなの作ったの?って聞きたくなる」
「何も生まないのが戦争だ、という気はする。けど、映画としては何か生んで欲しかった・・ないない尽くしで言えば、まず精神的な柱として映画を支えてるものが感じられなかった」
「どんな映画?と聞かれてストーリーを反復することは出来るよ、でも率直な感想としては、みんなで戦争してた、としか言えないわねぇ」
「そう。ドラマがない、つまり人物たちに深い葛藤やユーモアが皆無。ライアン自身でさえすぐに、僕は残ります!あっそう、勝手にしろ(笑)で、途端に今度は、戦車が来るぞヤッツケろ!・・まーたく戦場では何が起こるかわからんものだ!」
「ドラマどころか、心に残るエピソードも、ない。兵士たちには当然それぞれ故郷に置いてきた色んな思い出があって、それを時折り語って聞かせるだけというのは常套に過ぎるし、戦争の圧倒的な破壊の前にはむなしすぎるよね。定番の弱虫君も愛嬌に欠けていたし」
「・・で、聞きしにまさるリアルな戦闘シーンはどうっだった?」
「わたしは・・死んだフリしてた(笑)。上陸作戦、あれは凄い。冒頭部分だけでこれはスゴイと乗せて、あとは惰性よね、讃美でも批判でもない、思考停止状態」
「リアルだから良いというわけじゃないよね、僕はあれ、ヴァーチャル訓練って受け止めちゃったよ。いつか戦争になって狩刈二等兵も戦場に駆り出され、タマの嵐にビビッていると上官の中隊長がカミナリを落とす、コラッ狩刈!貴様ちゃんとプライベートライアン見たのか!・・これから軍隊に入ろうという人は必見だよ」
「ま、戦争中の美談映画という見方も否定できないわね、母親の気持ちのためにたった一人の兵隊を捜索するっていうのは美談じゃなくて参謀本部の気紛れ。むしろ美談は、あっけなく描かれてしまったけど、ライアンが実の兄弟より戦場の兄弟つまり同僚を選んだってこと、これは旧日本軍式の軍人魂に通じる」
「スーパー中隊長トムハンクスのいまわの言葉が、しっかり生きろ・・?余計なお世話だ! おまけにこの3時間映画がやっと終わってくれる時には星条旗。スピルバーグはそのうち大統領に立候補したいのかもしんないな・・その意味でも確かに彼の笑顔が瞼に浮かぶよ(笑)」
「ライアンの一人称で全編を描く、という方法はあったと思うの、激しい戦闘に明け暮れているとある日突然帰還命令が・・っていうような描き方、世界が断ち切れたような感覚・・」
「それも疑わしいな(笑)彼が戦場に残ったということ、それは戦争がいかに人間性をマヒさせるかということを如実に示したわけだよ、だってその前段で帰りたいよ帰りたいーっ!って場面をあんだけ見せてるんだから。スピルバーグほどの監督が、しかしライアンの命令拒否をもって戦争の非人間性を描こうとしたとは思えない」
「むしろドリームワークスの総力を結集して、冒頭の上陸シーンを作りたかったのね・・ボクはこれ、これをやりたかったんだぁーって笑ってる感じよね、どーだいボクの魔術ならこんなもんさ、って」
「それは(笑)悪意的な見方(笑)恐竜だけでもう十分!」(1998.11.10)

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