「パリ、18区、夜」1994年フランス



クレールドゥニ監督 カテリーナゴルバラ リシャールクリュセ

「うーん・・難しい映画に思った。難解じゃないけれど、どうやってこれを見たらいいんだろう?何を感じたらいいんだろうって思った」
「何の予備知識もないと、そうかもね。わたしはパリに住んでた頃のコトを思い出して、楽しかったけど・・そういう見方じゃ全然ダメかしら(笑)」
「これってさあ、例えばNHKスペシャルで放送されるような内容だよね(笑)パリの不法滞在者たちの暮らしぶりがテーマ」
「リトアニアから自動車でパリにやってきた若い女の子。遠い親戚を頼ってとりあえず泊めてもらったホテルでメイドしてると、そのホテルにはゲイカップルの常泊者がいるのね、黒人と白人の」
「で、その黒人の兄というのが別の雑居アパートに住んでいて、彼は子供を連れてマルチニック諸島に移り住もうと考えてる。だけどその妻はこれに反発してひどく不仲になってる」
「ところでリトアニア娘は女優に使ってもらおうと思って昔知っていた演出家を訪ねるんだけど、テイよく断られたり。ゲイカップルのうち黒人はどうやらエイズに罹ったらしくて、もともとこのカップルは老婆を襲っては金品を取り上げる強盗をしていたり・・」
「最後に少しストーリー映画らしくなるね、つまりリトアニア娘がゲイカップルを警察に密告して、彼らは捕まり、その間に彼女は彼らの部屋を漁って隠してあったフランの札束を奪い取り、自動車で逃走する・・と」
ほとんど人間関係もなく物語もなく、パリの一画、移民・不法滞在者の街の彼らの生態を淡々と描いているだけなのね。所々にゲイパーティみたいな場面とかエスニックバーとか入れたりして、なんかアングラ・ド・パリに関するプロモーション映画という感じもしなくはない(笑)」
「(笑)女史の滞在していたパリそのものってわけだね」
「そうじゃないよ!(笑)でも異邦人たちが群れて・・身を寄せ合って暮らしてる一方で、現地のお婆さんたちがカラテの修行をしてたりして、異文化のルツボ、という強調はあった。東洋人とかも出てきたり」
「うん。だから、もしナレーションでも付いた日にゃNHKスペシャルだって感じがしたんだ、東京のとある一画じゃ日常的な風景でもあるしね。移民というかガストアルバイターみたいな人々の生態の描写映画、としか言いようがない。別に何か問題意識が先行してるようには思えなかったから、ジャーナリスティックな報道取材番組という感じは弱いけれど、その視点は確実にあったと思う」
「ただ彼らも社会の底辺の人々、という感じではないのね。一人一人は凄く孤独だしディスコミュニケーションに裏打ちされた内向きの生き方しか出来ないみたいな感じはあったの。でも全体としては、まぁソコソコには暮らしていて、浮浪者とかやってるわけでもないし・・」
「彼らの生態を淡々すぎるほどに写し取っていて、「作品」としてのバイアスがあまり掛かってないから、こう見てくれ!っていう力点が、比重の置き方がどうも分かりづらいんだ」
「オープニングは、なんか期待したの。モダンなフィルムノワールみたいな雰囲気だった」
「僕はクロードベリ監督の佳作<チャオ・パンタン>とか思い出した、青ざめた顔色の女の子!」
「原色、赤や青の色使いの大胆さがね、やっぱりパリなのよねー」
「パリについて私が知ってる二三の事柄って感じかな。対象の捉え方、再構成の仕方にはとても興味をもったよ。逃げ込んだ先がポルノ映画館とか、プロコムハルムに踊るところなんかはとても好きだ。淡々とした感じは<デカローグ>的な雰囲気もあったし」
「こういう映画は簡単に撮れそうで撮れないかも」(1999.2.1)


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