「女番長野良猫ロック」1971年 日活


長谷部安春監督 和田アキ子 梶芽衣子 范文雀 藤竜也

「今見るからカッコいいんであって、これ、ちょい前のバブル時代とかだったら否定されていた70年代風俗の貴重な記録と言えましょう〜」
「長谷部監督はバイオレンスの雄で、当時も今も洒落てユーモラスでカタに嵌った安心感(笑)のある演出よね」
「ま、最近はサスペンス劇場みたいなテレビドラマだからカタに嵌ってるんだろうけど、この野良猫シリーズは多分、それまでの日本映画にはなかったカタを作り上げたんじゃないかなーって僕は思うけど。先行する作品としてはラス・メイヤー監督とかさ、まあ洋モノを日本でやるとこうなるってね」
「物語はというと、梶芽衣子の恋人がヤクザ組織に取り入るためにボクシングの八百長試合を仕組んだはいいけれど八百長にならなくて却って組織に半殺しにされちゃって、彼を助ける、逃げる、殺される、復讐するっていう展開。そこに流れ者ライダーみたいな和田アキ子が絡んだり范文雀が絡んだり・・」
「ま、ね。僕にとっちゃ別にこういう映画にストーリーなんて期待しないし、それは女史にしたってそうでしょ? 見るべきは当時の新宿の街であり女の子たちの衣装であり、聞くべきはモップスとか井上陽水じゃなかったアンドレカンドレの歌であり鈴木邦彦の音楽!といったところに今も古びないこの映画の魅力があって・・ああ、なんか当たり前のことを言ってるなぁ(笑)」
「はいはい。まだ高層ビルが建っていない、副都心のない新宿ね。伊勢丹とか西口広場とかがちらちら出てくる」
「地下道をバギーでカッ飛ばす藤竜也は、実はまあ、あんまりカッコ良くはないんだけど、僕としては和田アキ子とのカーチャイスに敗れて彼がカラカラと笑う場面、あのヘンはイカス(笑)」
「衣装にしたって、梶芽衣子や和田アキ子は比較的地味なのが残念。ほかの女の子たちはまあそこそこフラワーな感じだったかしらねぇ・・」
「あんまり露出度は高くないっていうか全然だよね」
「それは時代、でしょ?」
「うーん。この映画、あれだけうじゃうじゃ女の子が出てくる割には不思議とお色気ってものは伝わってこないんだけど、実はそこいらが長谷部監督の弱点だったりするのかも?」
「それは観客がナニを期待するかでしょ〜」
「はいはい、僕としちゃせっかくですからもっと壮絶なキャットファイトとかをね、見たかったわけなんだけれど(笑)、なんかモノ足りないよなぁぁぁ! 理想を言えば<肉体の拷問>じゃなかった<肉体の門>みたいなやつね(笑)ああいうやつ」
「はいはい(笑)和田アキ子は歌謡界のスターだから殺人とは無縁で、最後のトドメは梶芽衣子が引き受けたっていうあたりも良識的って感じ」
「それで最重要の音楽はと言えばモップスですよ、鈴木ヒロミツ。あの演奏はなかなかカッコ良かった。アンドレカンドレのシーンはちょっとワケ分からなかったけれど、まあ井上陽水じゃない映像が見られるっていうのは貴重といえば貴重」
和田アキ子の歌だってすごく素敵ね。こういう映画って多分、安いdvdが普及しなければ二度と日の目を見ないで消えて行った映画なんだろうって思うから、借りてきた勢いでついつい見ちゃったけど、本当に楽しくて凄い映画かというと実は語るに落ちる」
「それはしょうがないでしょ。所詮は日活が低予算で作った娯楽モノで、同じ時代にアート系なら吉田喜重監督とかさ、増村保造監督のくらげモノとかさ、新東宝なら石井輝男監督とかがエログロ路線でガンガン作っていた時代、まあ日本映画が百花繚乱に狂い咲いていた時代。この<野良猫ロック>だってシリーズ化されてちゃんとヒットしてるしね。健全かどうかは別として映画が立派な娯楽だったいい時代ってものを忍ばせるよ」
「とまあ古臭い感慨に耽るのもどうかと思うけど、狩刈くんが当時、すでにしっかりモノゴコロついてた歳だったってことは認めなきゃいけないわね」
「あらら女史は当時はローマ在住でしたからまた別の感慨もあるんだろうけどさ(笑)って、今回はオチがないな、オチが!」
「オチになるかどうか分からないけど、さっき狩刈くんが藤竜也はあんまりカッコ良くないって言ったけど、その他大勢のバイク野郎たちが次々にコケるシーンとかだって、スタント使ってるのかよーって言いたくなるくらいに真に迫ってないのね。はっきり言ってダサイ場面が凄く多いの。でもそういうダサさって意外と古くならないものなのね。今となってはかえってゲラゲラ笑って面白がっちゃう、アホらしーとか言いながら喜んじゃう、そういう観客の見方の変化っていうのもあるんじゃないかしら」
「うーん。そうかも知れないしそうでもないかも知れないし・・・つまり当時の観客たちが本当にああいうバイク野郎とかをカッコ良く思っていたのか、ダセェと思いつつケラケラ喜んでいたのかは、いくらモノゴコロついたばかりの僕だって分からないな。でもその後の、例えばワイルド7とかね、暴走族、バイク野郎の風俗を考えると多分、一部の観客は本当にカッコいいと思っていたんだろうね」
「狩刈くんだって梶芽衣子や范文雀はカッコ良く思ったでしょうに?」
「ああ、僕的には今は亡き范文雀かなぁ・・なにしろ<サインはV>を毎回欠かさず見てたからね(笑)」
「<サインはV>!そういえばバイク映画がなくなったのと同じようにスポコン映画もなくなっちゃったみたいね」
「どうかな。それはいずれ<小林少女>とかで復権するとしますか」
(2008.08.08)




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