「ダイヤルM」1998年アメリカ



アンドリュー・デイビス監督 マイケル・ダグラス グゥイネス・パルトロウ

「やー見た見た。僕、これは最近のサスペンス映画としちゃ佳作だと思う。面白かった」
「ふうん・・まあ、結構楽しめるよね」
「あれー女史はイマイチって感じ?」
「わたし・・だいたいマイケル・ダグラスってわたしにはちょっとキツイのよ。脂っこいっていうかしら」
「ははあ、そのキモチはまあ分かるよ、彼のあの顎はね(笑)」
「(笑)ていうか、演技過剰な目尻とか大きな鼻とかへの字口とか」
「それじゃ全部だ(笑)でも美貌の妻を殺そうっていうプロットには、実にソソられるものがあった」
「グゥイネスは全然美貌じゃないよ」
「あらら(笑)じゃホント、全部ダメじゃないか」
「(笑)ま、それはおいといて、だからこそこの映画のキャスティングは見事だったとも言えるんじゃないかなってことね。まあMダグラスはいつもの調子でしょ。でグゥイネスはなんていうか芝居で見せるというよりはあの頼りなさそうな存在感だけで演技していて、それが殺人計画で気を持たせるにはピッタリだったってこと」
「そういう見方はもちろんあるよね。Mダグラスが離婚して慰謝料が膨大、とかいう話を聞いたけど、それとも絶妙に響き合ってるし・・ハリウッド流のセンスだね」
「まあこの映画はあくまでもMダグラスの映画だからってこともあるでしょうけど、彼の演技がどことなく一本調子でハナについたのね、強いて言えば凄く芝居くさいっていうか。で他の俳優たちには人間的な魅力が感じられなかったんで消去法でますます彼が目立ってたって感じで」
「確かに僕も今回のMダグラスはなんか微妙に精彩を欠いていたな、とは思う。彼、大富豪とかに見えないんだよ。貧乏くさいんじゃなくて、品がないんだよ(笑)」
「そこがまた彼の持ち味なんだけどね。あとあの画家のゴロツキも、もうちょっと頑張って貰いたかったの・・この映画はすごくエモーショナルな展開で、葛藤に次ぐ葛藤、みたいな物語で出来ているくせに、そこがギリギリとは伝わってこない。どっかクールに造られてるんだわ」
「まあリメイク作品とはいえ別物と考えてる僕としては、これをヒッチの<ダイヤルMを廻せ>と比較はしたくない。大体、金に困ったが妻殺しを企む、程度のプロットしかこの映画はダブってないしね。ただヒッチの場合はレイ・ミランドが例によってスレスレの神経質そうな存在感で魅せてくれておまけに妻はグレース・ケリーだ。そこにはヒッチ特有の一種サディスティックな妻いじめがあるんだよね。で、あとの役者はデグノボーばかり。そういう心理的なバイアスがかかってるから、ヒッチの場合、佳作とはいえ名作級になってる・・」
「あれ、ヒッチについては沈黙を守ってる狩刈くんじゃなかったの?(笑)」
「あ、忘れてた(笑)」
「まあ、でもわたしはこの映画が最近のサスペンスの佳作だというのには賛成だし、見ている間はワクワクしたの、マイケル、ピーンチ!とか言いながら(笑)。でもラストでは、そうかなー?って思った」
「というと?」
「いえ、なんか丸く収まっちゃったっていうかしら」
「うーん、そうかねぇ・・そうかもねぇ。でも僕はグゥイネスね、彼女は決して芝居は旨いとは思わないけど、ああいう女優は大事にされるべきだと思うよ、ナイーヴで、物腰が華奢で、線が細くて・・」
「肩幅が広くて顎がはってて」
「まあ(笑)それも含めてだな」
「こういうとヘンかもしれないけど、Mダグラスがあんな夫じゃ浮気くらいしちゃっても仕方ないの。それは許す(笑)。でも浮気相手の画家が前科者と分かった途端に態度を変えて夫に謝ったりして、あれは何なの?って感じがしたんだわ、わたし。そこが脚本のご都合主義とかグゥイネスの演技不足とかこれはマイケルの映画だから、とか、いろいろ理由はあるにせよ、わたしは観客を見くびってるところだと思う。ああいう感情的に大きなターニングポイントを平気ですっ飛ばしちゃうのはどうもねー」
「じゃどうすりゃ良かったの?」
「それは、グゥイネスはグゥイネスなりに・・人を上っ面だけで判断しちゃうような、浅はかで惚れっぽい蓮っ葉な、愚かな女として描いておくべきだったのかも」
「まあ確かにこの映画でグゥイネスは大事にされすぎたって気は、僕もするな。なにしろ、この映画で一番の被害者はマイケルなんだしね(笑)」2000.7.30


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