「メル・ブルックスの大脱走」 1983年 アメリカ

アランジョンソン監督 メルブルックス アンバンクロフト

「見ていてとても幸せになれる映画・・映画を見る幸せに酔えるかも
「ナチス好みの女史としてはたまらないコメディだろうねぇ、僕もとても好きなんだ」
「大戦直後のワルシャワを舞台に、コメディ劇場一座がナチ親衛隊やドイツスパイを手玉にとって翻弄し、最後はイギリスに亡命を図る・・というワクワク、クスクス、ゲラゲラの傑作です」
「いちいちの場面にブルックスならではの喜劇精神が通っていて、とても密度が濃い映画だと言えるよね、そのうえ<独裁者>に通じるヒューマニズムがあって、かなり<独裁者>を念頭に置いているんだろうけれど、最終的には完全に一線を画したものとなってる」
「オープニングでブロンスキー劇場の出し物を次々に見せてくれるじゃない。夫妻の歌とダンスからヒトラーのパロディ芝居(笑)そしてピエロが出てきてハムレット名場面に・・っ次々に見せてくれる流れ。ああいう始まり方がすでに夢心地っていうかしら、エンターテイメントを堪能させてくれるの」
「細部もケッサク。ヒトラー万歳、わたしに万歳、とかね(笑)」
「いつかも話したけれどブルックス映画は彼らが映画を造っている歓びというものも楽しめるの、一言で言えば古風な質感があって、つまりセットがあって衣装があってしっかりした台本があって、役者たちは役に成りきってみんなヨーイハイッで動き出す・・という感じが楽しいとしか言えないのね、ところが見終わってあれこれ思い出してみるととてもヒューマンで反骨精神・批評精もあって骨太な見応えに満足!って感じ」
「喜劇人ならではの批評精神というのは強く感じるよね、そこがチャプリンの後継者と言われる所以だし、やはり現在、ブルックス以外にそういう人物は見あたらないね。テとしては使い古されてる、死体の入れ替えトリックとかピエロに扮装しての脱出とか。デカ鼻シブ面の教授が出てきた時に、これはきっとブルックスと入れ替わるぞってすぐに分かった(笑)。で、それをちゃんとやってくれる、決して期待を裏切らない親切さ! さらにはサスペンスを効かせながら笑いをとる、例えばピエロに扮したユダヤ人が劇場から脱出しようとして立ち止まっちゃうところ・・そういう丁寧な造りがあるから何度見ても面白い」
「俳優ではゲシュタポ副官のクリストファーロイド(笑)がとても印象に残ったわ。エキセントリックな彼には似合いだと思う、背も高くて軍服も似合うし(笑)。一方で空軍パイロット役はちょっと当たり前の二枚目で影が薄い。でもそれも多分に十分意図された配役なんだろうって思ったの、彼はあくまでもストーリーを繰り広げるために置かれた、なんていうの、プラグみたいな存在。アンバンクロフトの浮気、スパイ教授との戦い、といった設定や物語のエンジンを起爆させるための存在で、エンジンがかかった後は影を潜めて最後の脱出劇ではパイロットに戻る。ヘタな脚本だと何人もの人間に分割されちゃいそうな役回りを一身に集中させてる割に、そこはヒーローでなく脇に徹して使っている・・というあたりも見事な脚本ね」
「物語の始まり方もそうだけど、終わり方だね、みんな舞台に出てきて挨拶する、そこに字幕で紹介が・・」
「(アンバンクロフト)とかね(笑)」
「とにかく製作陣が面白がって造ってるから、それを見てる僕らも共犯者的に楽しめるっていうのかな、一緒になってツボにはまろうっていう気になるんだね・・ってこの映画におけるエルンスト・ルビッチュの貢献について話すスペースがなくなっちゃった!」(1998.12.27)


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