「新荒野の七人 馬上の決闘」1969年 アメリカ


ポール・ウェンドコス監督 ジョージ・ケネディ フェルナンド・レイ

「いよいよ名作、馬上の決闘! ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪・・」
「バーンステインの名曲が泣く・・」
「(笑)泣かせるんじゃなくて、泣いちゃうの?(笑)ま、そうかもね。オープニングはガンマンじゃなくてメキシコ正規軍が荒野を大行進。指揮官はおヒゲが似合うディエゴ大佐。なんともステレオタイプな悪党ヅラ。軍服マニアの女史にはぴったり!」
今回のストーリーはメキシコ革命を舞台にして、物語のスケールはまあ、パワーアップしたのかも・・。ディエゴ大佐に追われてる革命指導者キンデロが逮捕されるあたりが最初の見せ場ね」
「神聖な教会にバンバン発砲したりしてディエゴ大佐の悪辣ぶりぶりは十分に見応えある。でキンデロは逮捕される直前に一人のメキシカン青年に隠し持っていた金を渡して、これを革命に役立てろ、とか言うんだね。そしてディエゴ大佐はこの青年たちも一緒に逮捕して引き連れてく、というか引きずっていく・・出足は好調だ」
「そう、結構この映画は脚本がしっかり出来てたと思うよ、少なくとも前作のヒドサに比べたらよっぽどいい」
「ピントが合ってるんだね。メキシコ正規軍の悪人ディエゴ大佐と革命指導者の善玉キンデロ、そして無力な農民たちという三位一体に加えて、革命軍指導者は酒浸りの悪党ロベロ将軍ときてるから、お約束のガンマンたちがどう絡んでいくかというパースペクティヴがきっちり出来てる
「キンデロからお金を預かった青年は革命軍のロベロ将軍のところに行く。けれどロベロは平和主義者のキンデロが気にくわない。そこでロベロは青年に、その金で武器弾薬大砲なんでも買ってこいって言うのね。ま、ここまでメキシコ革命を題材に人間関係をしっかり描いているから、助太刀ガンマンがどうやって出てきてこの話に絡んでいくのか、気を持たせる作り方は丁寧・・で、そろそろクリスが登場かな?って期待を持たせる」
ところが、出て来たのは馬(笑)。馬と馬泥棒。インチキ裁判で一人のガンマンが縛り首になりかかったところ、やっと本命クリス登場・・ところが我らがヒーロー、クリスも寄る年波のせいかデブデブして動きが鈍い鈍い」
「いつの間にか髪の毛が生えてる(笑)ジョージ・ケネディがクリスとはねぇぇぇぇ思い切ったキャスティングよね(笑)葉巻ばかりくわえてるけどブリンナーを気取ってるニセガンマンとしか思えない・・ハラが出てるし」
オッサンやな〜といった感じで見る側が一気に脱力する。ところが、実はその後の展開にこの脱力は丁度いい。効果的なんだね(笑)話は『本当の馬泥棒はどっちだ?』とかいう展開になってクリスは一言いい放つ『そいつぁ馬に聞け!』(笑)ンマ、アホな! 群衆、どよめく(爆)」
「あぜんとしたままインチキ裁判は馬の裁きでお開きになって、そこに例のお金を預かったメキシコ青年が声を掛けるのね、我々を助けてくれって」
「ま、実際のところ映画のここまでの展開はかなり緊密でね、バカにならない。脚本がスッキリしてるんだね。こうしてクリスが話に絡んでくるといよいよお待ちかね、人集めのプロットに入るんだけど、ここもあっさり場面転換とかが効いてた」
「場面は急に鉱山に移って、そこで10万馬力の黒人が登場して仲間になる。それから農場でナイフ投げのオヤジ。クリスの旧友でちょっとロートル・・」
「続いて西部の街の縁日シーンとなって、西部の縁日ときたらあなた、早撃ちガンマンショーですよ。早撃ちガンマンがすぐに仲間に加わるんだけど、これが片腕不自由でノイローゼ気味の妙な男」
「最後に酒場で黒づくめの肺病やみガンマンが参加ね。なんかかなりヤバそうなガンマンたちばっかり。でも一番使えそうにないのがジョージ・ケネディのクリスだったりして(笑)
「ま、前作の、牢屋でガンマン集めをしちゃった反省に立った今回、ちゃんと町なかで仲間探しをしたはいいけれど、フタをあけてみたらサル、イヌ、キジしか集まりませんでしたって感じだな(笑)。けれどここからの脚本もいいんだね。ガンマンたちは村に行く途中でメキシコ軍の村人逮捕場面に出くわしたり、そこで孤児を拾ったり、と飽きさせない。ここらも、なにごともなく村まで来ちゃった前作の反省に立ってる感じ」
「ようやく革命軍と合流するガンマンたちなんだけれど、ロベロ将軍は激怒するのね。武器弾薬を買ってこいと行ったのに助っ人を頼むとはなにごとだ! ロベロ将軍は実は女好きの大酒のみでメキシコ革命の成功なんか全然信じていない俗物・・だからガンマンたちは一瞬、例によってのジレンマに陥りそうになる」
「オレたちゃいったいなんでこんな連中を助けに来たのかな?っていう前作の悩みだよね。けれどそう深刻に考え込まないのがさすがジョージ・ケネディ(笑)銀を探しに来たとかウソついて早速キンデロが収容されてるディエゴ大佐の本部に偵察に来る。ディエゴ大佐も親切に『山賊まがいの反乱軍に注意しろ』とか教えてくれる。実はこのディエゴ大佐っていいやつなんだよ(笑)」
「そうそう(笑)わたしもそう思った。彼は自分の職務に忠実なだけで性根は決して悪くない男なの。けれど物語としては彼は悪玉だから、生き埋め拷問とかをわざわざやらせたりしてるって感じね」
西部のアイヒマンか?(爆) ところでロベロたちはクリスに『手ぶらで帰りやがって!早くキンデロを助けに行け』とせっつくし、クリスはクリスでナンの考えもなしで、そのうち出会い頭にディエゴの部下を襲ったりして、勝手に自己流革命軍を組織しはじめちゃう。切羽詰まった状況が強いたといえば、緻密な展開といえるな・・決戦に向けてウォーミングアップが好調好調!ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪・・」
「よく見てると電柱があちこちに立っていて電気が来てるのね。しかも線路が敷けてて駅が出来てる。機関車は、予算の都合がつかなかったみたいだけど(笑)」
「きっと本数が少ないんでしょ(笑)とにかく文明開化ですよ・・さすがのクリスもまた危機感を持つんだね。『フロンティアも先住民もバッファローも西部からいなくなった。次に消え去るのは俺達ガンマンなのさ』とかね。いんやー素晴らしい! 幕末の武士と同じ悩みを抱えてる。こういう時代遅れになりつつあるガンマンの焦燥感てのは一種、西部劇に特有のヒューマンでシリアスな根本的テーマたりえているんだけれど、それをさりげなく取り入れてるのはさすが、いい脚本だ」
「セリフにも聞かせどころがあったよね。同行したメキシコ青年の名前を訪ねるとマクシミリアン・デンデロなんとか、とか答えるから、クリスは思わず尋ねるの。『メキシコ人てのはどうしてそんなに名前が長いんだ?』 すると青年はこう答える、『寿命が短いからかな?』」
「いい〜セリフだよね。闘いに加わろうとした子供が仲間から外されると、その子供はガンマンにこう尋ねる、『大人だったら闘って死んでもいいの?』 なかなかいいな。<バトルロワイヤル>のチューボーたちに聞かせたい名セリフだよ(笑)」
「細部もまあまあキチンと出来てるよね。肺病やみのガンマンとメキシコ女とがいい仲になったりするのもはかなくていいしね・・片腕ノイローゼの早撃ちガンマンが黒人嫌いで、例の10万馬力黒人とケンカしたり庇ったり友情を深めたりと、サブプロットも充実してるの
「そんなこんなで決戦を迎えるわけだ。クリスはディエゴ大佐の本部に襲いかかる。ダイナマイトで門を吹っ飛ばしたりガトリング銃が火ィ吹いたり。なにしろ正規軍相手だから物量が違う違う。これまでにない派手なドンパチは見ていて爽快!」
「いよいよゲストガンマンたちも死に際の見せ場の連続で、10万馬力黒人がバンバンやられて片腕早撃ちノイローゼが彼をかばってあえなく憤死、メキシコ軍も激しく応戦してクリスたちは手投げ弾・・」
「と、そこにロベロ将軍の副官が革命軍を引き連れて遅ればせながら参戦してくる。女たらしで酒好きのロベロは副官に見切りを付けられて殺されちゃったりするからさすが無法の西部だよな、まったく(笑)」
「最後にディエゴ大佐とクリスの一騎打ちになるんだけれど、ちょっとあっさりヤラれちゃう・・ディエゴ大佐っていうのは、やっぱり本当は悪人じゃなかったのね、って感じがするの」
「あのヒゲがね、フレディ・マーキュリーの晩年を彷彿とさせるからでしょ?(笑)というのはともかく、今回のこの作品は、実際のところ<荒野の七人>シリーズのなかでは最高傑作だよね。何度もいうけれど脚本がしっかりしてる。緊密で小気味よくて気が利いてる」
「これまでの作品みたいな『農民たちの助っ人』ではなくて『革命の助っ人』というかたちでガンマンを描いたから、スケールとポジションがすごくはっきり伝わって、まあガンマンたちもあんまり悩まなくてすんだっていうか」
「そうなんだね。僕なんか、なんていうかな・・・歴史ってもんをすごく意識しちゃったな。歴史は民衆と権力によって作られていく、ってこと。そしてガンマンたちはこの歴史のダイナミズムに血潮を迸らせ、けれどやがて消え去っていく運命にある、と。かくしてメキシコ革命は続いていくのでありました、と・・これはもう忍者武芸帳の歴史観と言えるんではなかろうか?(笑)」
「なかろうか?って言いながらヒクヒク笑わないで(笑)。ところで革命指導者のキンデロはどうしたのよ?」
「ああ?キンデロ? いつの間にか救出されてこざっぱりしたポロシャツに着替えていたね〜♪というわけで、ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪・・」
(2003.5.26)


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