「荒野の七人」1960年アメリカ


ジョン・スタージェス監督 ユル・ブリンナー スティーヴ・マックイーン

「言わずとしれた黒澤監督<七人の侍>の西部劇版リメイク、なんてことはどうでも良くて、実際のところ僕の期待は続編、続々編に集中しちゃってる」
「まあまあとりあえず第一作から・・。この作品、プロットは黒澤作品と同じで、村に山賊が出るんで村人がガンマンを雇って用心棒にしようというお話ね。要するに人集めのプロセスと、あとは襲撃と撃退、それで出来てるストーリー
「志村喬がユル・ブリンナーっていうのはちいとイメージが違うよね〜。アタマのイメージはぴったりではあるにせよ。と、それはともかくこの映画はまずはエルマー・バーンステインの名曲で泣かせる。ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪う〜んマルボロ♪て感じ・・」
「荒野を駆ける馬上のオトコたち〜って感じにぴったり!なかなか勇壮な音楽はばっちりなの。でも最初の見せ場は比較的おとなしいのね。殺されたインディアンを町外れの墓地まで運んでいくんだけど、そこは人種差別の町でインディアンは埋葬できない。その棺桶つんだ霊柩車を誰が墓地まで運ぶか?」
「そこにブリンナーとマックイーンが登場して・・と、まあ確かに出足は比較的地味。そして早くもつかずはなれずの青二才が登場して、まあ、彼チコが、三船俊郎と木村功を足して2で割ったあまりみたいな役柄となる・・」
「菊千代にしては迫力不足・・キクチッコ?(笑)」
「(笑)キクチッコとはまたシンラツだな〜。女史が言うようにこの映画のおもしろさはまずは人集めのプロセスにあるわけだね。ひとくせふたくせあるガンマンたちがブリンナー扮するクリスのもとに集まってくる・・」
「ナイフ投げの名人Jコバーンなんか、結構、魅せるところあったけど・・あとは肉体派ブロンソンとか?なんとなくだけれど顔に個性がないの。宮口精二の侍魂みたいなものがガンマンのツラ魂から感じられない・・
「そりゃガンマンだから侍魂を期待するのはなんだかな〜(笑)」
「ストイックなオトコのミリョクってことよ」
「分かるけど全部カタカナで言うのはやめてくれない?(笑)ちょっとスジが違ってきちゃうよ・・と、それもともかく、え〜いよいよ七人揃いまして」
「もう揃っちゃったの?(笑)揃うとまたしてもバーンステインの名曲ね」
ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪う〜んマルボロ♪て感じ・・さっきも言ったか(笑)。人集めと襲撃と撃退で出来てるストーリーって女史は言ったけど、その間に、山賊たちを迎え撃つための準備、っていう大事で素朴な場面もあって、村の周りに穴ほったり網を仕掛けたり・・。こういう場面をきちんと見せてくれることで、襲撃への期待感が高まるわけだね。早く攻めてこないかな〜って観客に期待させる」
「最初はうまく攻めてくるんだけれど、次の襲撃あたりから黒澤作品の展開からは離れていくのね。黒澤作品ではあくまでも、来やがった来やがった!って感じで山賊たちはドドドドッて攻めてくるんだけど、西部の山賊はいつの間にか村に忍び込んでいたりして」
「目が離せません(笑)。ていうか、あれは村人のなかに裏切り者がいて、ガンマンたちが村から偵察に出て行ったスキに山賊たちを招き入れたんだね。藤原釜足よりこすっからいのが西部にもいたんだな」
「それで山賊とガンマンが取引して、いったんはピストルを渡して全員で丸腰になっちゃう・・あのあたりは脚本が弱い感じ? 観客たちにはこれがガンマンと山賊の取引、つまり『ただの芝居』だってことが最初から分かってる・・本来ならここで観客のウラをかいてだますみたいな脚本が必要よ」
「そうだねぇ、僕もそう思う。ガンマンたちが危機一髪でハラハラどきどき、っていう緊張感がない。ま、侍なら刀を手放すなんてことは命と引き替えでなきゃありえないことだ。なのにガンマンたちはいともたやすく拳銃を手放すっていうのはどうも・・」
「ストイックじゃない、でしょ?(笑)」
「はいはい・・ま、そういうタネもシカケも見え透いた脚本だからあとはドンパチシーンに賭けるしかないわけで、当然のようにガンマンたちの逆襲が始まるわけだ」
「バンバンやるのはやっぱり、キッタハッタよりも迫力に欠けるの。接近戦でないだけにね・・それと西部の村には雨が降らない(笑)わたしが<七人の侍>を初めてみた時にとにかく驚いたのは、あの雨。幼心に、あんなに凄い雨のなかでも映画って撮るんだわ〜っていうふうに驚いたもんよ(笑)」
「(笑)なるほど〜そういう感動の仕方って、もしかしたら、とても幸福な映画体験だって言えるよね。そうなんだね、映画の雨って降らすもの。それなら現実にはありえないようなモノ凄い雨を降らせようっていうのが映画的な発想であるべき・・とはいえカラッカラの西部の寒村に大雨は無理。血の雨も大して降らない(笑)」
「まあそこそこに戦闘シーンは見せてくれて、最後は農民の勝利っていう黒澤作品の思想をちゃんと踏んでたわね」
勝ったのは侍ではない、農民だ・・という思想。けどさ、アメリカって銃社会でしょ。日本の侍と農民は、刀を持つか持たないかで大きく違う・・のに対して、アメリカじゃ農民だって銃を持ってるから農民とガンマンの違いなんか、たいして感じられないんだよ」
「あらら狩刈くんとしたことがどこを見てたの? あの村はメキシコの村で村人たちはメキシコ人。だから基本的に農民たちは銃を持っていないの」
「あ・・そうだっけか。なるほど〜気がつかなかった(笑)」
「そこを押さえてないとは!ったくこの映画の基本よ基本。ガンマンたちが義侠心でメキシコ農民たちに命がけで力を貸す、っていうところが泣かせなの」
「へへーん、泣かせとはいうけどさ、それじゃなんかアメリカ人のいわゆる世界の警察官魂そのまんまって感じで嫌味だなあ(笑)湾岸戦争と同じ世界観じゃないか!(笑)」
「ま、あくまでもヒロイックな感じで締めくくっていくのは反米主義者の狩刈くんならずともちょっと鼻持ちならないかもね。<七人の侍>では、大きな大きな土饅頭が大写しになって、死というもの、戦いというものの悼みとかけがえのなさと虚しさを印象的に重たく突きつけてた・・」
「なのにこの作品ではキクチッコが生き残り、メキシコギャルと一緒に村にとどまる、というエンディング。まあ農民の勝利は印象づけられるけどね・・ヒロイックすぎるかな」
「だって最後の最後でまたバーンステインの名曲でしょ?」
ぱん、ぱんぱぱん、ぱんぱ、ぱぱぱん♪う〜んマルボロ♪ってか」
(2003.5.24)


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