「ロスト・イン・トランスレーション」2003年 アメリカ



ソフィア・コッポラ監督 ビル・マーレイ スカーレット・ヨハンソン

「ニッポンていい国だねぇ〜」
「(笑)なんでしょ急に。狩刈くんにとっちゃこれ、ディスカバージャパン映画だった?」
「新宿歌舞伎町の雑踏と渋谷駅前の美しきネオン、近未来SFの首都高速、お寺じゃ般若心経が朗々と読経され京都じゃ和装の新郎新婦が緋色の相合い傘・・美しいよね〜どこを切っても絵はがきの世界、ということは我が国ジパングの典型的にして万国共通な美的イメージがたっぷり堪能できる。寿司も旨そうだし、しゃぶしゃぶも、いいね〜」
「ははあ、わかった。今回はホメ殺し作戦ね(笑)」
「しかしあのしゃぶしゃぶの肉はアメリカから来た脳味噌スカスカなモーちゃんの肉だ、京都まで行ったんならなぜ広島に行かない? 花の都大東京だって六十年前には焼夷弾の雨が降ったんだぜ〜」
「あらま、いつもの反米主義的なホメ殺し作戦か・・(笑)映画の話をすると、いわゆる『中年の危機』とたったの一言で片づけられちゃったビル・マーレイの行き詰まりが最初から最後まで行き詰まったまま、早すぎた結婚をして今頃になって戸惑っている若い妻が最初から最後まで行き詰まったまま、二人は東京で三日間、同じホテルに滞在しました・・」
「まあね。映画の内容なんてどうでもいいんだよ(笑)ロスト、ね。映画自体が迷子になってる。イン・トランスレーションてなに? ははぁアールとエルの発音が苦手なこと? パリやローマで撮ったらエッチの発音が苦手、というわけかな?」
「なんか、かなり悪意入ってない?(笑)まあこの映画、東京が舞台、というだけで見に行きたくなる人がいるかも知れないけれど、それはそれで見に行って正解。だって東京の風景しか記憶に残らないし・・でも東京在住の人は毎日見てる風景だし、そこにお金を払う価値があるかどうか」
「まったくだねぇ。今夜でも麻布あたりをお散歩しようか?(笑)東京よりはピョンヤンで撮るべきだったな。写真家の妻はね、ちょいとヤボったくて可愛い感じでよかったね。最初に彼女のパンツなお尻のドアップで開幕、そこだけは見応えあった」
「彼女は夫が仕事に飛び回って自分のことをかまってくれないんでスネてる感じ? にしてはソレらしい演技もなくて画面に入ったり出たりしてるだけだった。問題はビル・マーレイ。彼にしてからが画面に入ったり出たりしてるだけだった(笑)それはそれでオカしいのかも知れないけど」
「彼は彼で仕事熱心ではあったよね。けれど妻がアメリカからヤイノヤイノと国際電話やファックス攻撃を仕掛けてくる。この映画の設定は夫の仕事熱心ぶりを理解しないワガママ妻が二人という、なんとも情けない、ゴルァ!一喝で片づいちゃう(笑)写真家の妻にしてもイェール大学の哲学科でナニをおベンキョ〜してきたんだい?て聞きたくなるな〜」
「彼女はニューヨーク育ちだとかいうけれど全然そんなふうには見えなかったよねぇ・・せいぜいニュージャージーかクリーヴランド出身とかじゃないかしら」
「現実の東京はもっともっとバイタリティある街だし、外国人といえば男も女もビジネスマンから風俗嬢にいたるまでたくさんいて、山手線のラッシュで我が国同胞と一緒に揉みくちゃにされて押し合いへし合いしてる。けれど一面では確かにエキゾチックな伝統文化もあって、そうした世界に冠たる大都会のひとつに仕事や夫のお伴でやって来て知り合った二人がカラオケルームでmore than thisなんてロキシーの歌を歌う。ロマンチックではある。あとは旅の恥は掻き捨て路線になるのかどうか。なるとしたらその路線をどう演出するか?けれど映画はその前に迷子になる・・気を持たせる配慮もしない」
「まあもともと妻の側はそういう踏み外しは期待してなかったし、ビル・マーレイも最後ははからずも、という観はあって、けれど相手はホテルのシンガー。ブレたよね。二人は自分の行き詰まりから一歩も出られないし出たいとすら思っていないみたい。そうかといって二人の間に友情が深まったようにも思えない・・」
「じゃナンナンだろ?(笑)田所豊のCMディレクターの横柄な感じとか、いちいち日本人の描き方がどうのこうのとは言わないけどね。ホテルで<甘い生活>なんか見てるヒマがあったら日本側のエージェントに言って街のなかをもっと案内させろよ(笑)でもガサツな画面作りは弱かった」
「ロスト・イン・トーキョーまであと一歩っていう感じはあったの。けれどそれにしては主役二人の牽引力が不足。不足していたからこそ『ロスト』という身の置き所のなさだけはソコソコ伝わった気もしない?
「まあ切実さに欠けるキライはあったけれど・・ビル・マーレイが演じた俳優は、なんか、落ち目の俳優だったんだっけ?全盛期はとうに過ぎてる感じ?」
「そういうキャラクター設定自体よくわかんなかったよね。サイトリーのCM撮影と深夜バラエティに出てバカやってる以外、俳優らしい感じすら伝わってこなかったし。そこがオカしいと言えばオカしいの」
「ハリウッドの新進女優、キャメロン・ディアスらしき女の子のノリ、あれが良くも悪くもバブル以降のトーキョーのノリだ。ビル・マーレイは相手を間違えたのかな?」
「というより、これはまあ実はコメディなんでしょうけれどオカしさだけでない完全なコメディーという感じでリメイクしたらまあ面白いのかも・・ビル・マーレイのロスト・イン・時差ボケ、って感じで」
(2005/03/29)



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