「ロスト・ハイウェイ」1997年アメリカ


デビッドリンチ監督 パトリシアアークェット

「うーん。リンチもそれなりに巨匠になったねーって感じ。過去の遺産で食いつなごうとしてる」
「それは厳しいね。皮膚感覚に訴える独特の映像設計は健在だったよ」
「健在っていうかただの焼き直しじゃないの?」
「まあ、確かにね。僕はリンチ映画はほとんど見てるけれど、今回は期待が大きかった分だけ裏切られたなっていう感じはある」
「リンチ映画って、結局、何を描こうとしているのかしらね、見る人によって熱狂するかヘキエキするか、大きく違うでしょ」
「一括りには言えないけどさ、僕は<ブルーベルベット>が傑作だと思う。リンチは不可知論者で、世の中には人間にゃ到底分からないものがある、という考えの持ち主。シンクロニシティやデジャビュに始まってオカルトに至る、いわゆる異界の存在を描こうとしてる。で<ブルーベルベット>では日常感覚の側から触覚を伸ばしていって狂気・暴力というチャンネルを通って不可知の彼岸に辿り着こうとした。これと<ツインピークス>には大きな違いがあって、<ツインピークス>では既に不可知世界が確実に、歴然と存在していて、それと日常が対峙してる、出入りが出来る、重なっているという発想になった・・」
「ふんふん」
「で、今回の映画はいわば<ツインピークス>の発想を捨てきれずに<ブルーベルベット>をやろうとしたってフシがある、そこに焼き直し、という誹りが免れないんだと思うな。同じ人間がふたつの場所に存在する、という決定的なイメージはリンチの世界を却って分かりやすくし過ぎちゃったキライがあるな」
「なるほどー(オ)カルトを語らせたら止まらないね(笑)。わたしは映像的にフラッシュライトやフェードインアウトで繋ぐ編集、これには感心したの、特に最初のあたりにはゾッとしたよ」
「生活臭の全くないモデルルームみたいなインテリア、あれは良かった。ビデオが届けられてそれが部屋の中にまで入ってきて、というあたりでおおおこれはノレるか、と期待したんだけど・・」
「エディってオジさん、彼は<ブルーベルベット>の凶暴なDホッパーに比べるとよっぽどマシで、拍子ヌケしたわね」
「そうそう、登場人物に人間的な魅力が感じられなかったというのがノレなかった理由でもある」
「<ブルーベルベット>じゃみんな凄く肉厚な芝居をしてた、カイルマクラクランしかりローラダーンしかり。でも今回の役者たちはみんなリンチ映画のパロディ芝居をやっちゃってるのね、そのあたりが、監督として巨匠になったなあって嫌味なのよ。それと例のお得意の挿入歌ってやつ、ノスタルジックな感じの、あれはどうもいただけないよね、ドラマを盛り下げるだけよ」
「ははは、確かに何故かリンチは挿入歌が好きだよねー。それがラブシーンに被さったりすると、一体何の映画だったか忘れちゃう。はっきり言ってジャマかもしれないな」
「ジャマと言えば無意味なラブシーンが多すぎるというのも、よく分からなかったのよね、カラミばっかり」
「しかも中途半端(笑)」
「最後にエディが言うじゃない、もっと凄いポルノが撮れたかもな・・って。あれはまさにこの映画の締めくくりにふさわしい言葉だと思うわね(笑)」
「(笑)非常にキビシイけど、そういうことだな(笑)次回に期待しようっと」(1998.9.28)

シネマギロテスクに戻る