「歴史は女で作られる」1955年フランス・ドイツ


マックスオフュルス監督 マルティーヌキャロル ピーターユスチノフ

「やーなつかしいなあ」
「うふふ(笑)」
「今を去ることウン年前、僕が初めて横浜のシネ研に参加した時にやったのがこれ。女史は映写室のすぐ隣のテーブルに座って、立て膝に頬杖で見てたっけ、あそこ定位置だったね(笑)」
「なつかしいねぇ、うん。あのシネ研じゃMデュラス監督の<アガタ>とかJリヴェット監督の<狂気の愛>とか、当時メッタに見られないものをやってたよね」
「英語版字幕だったりノースーパーだったり。あの頃僕は19で女史は、21?なんて可愛いコだろうって思ったなあ」
「(笑)おいおい。で、映画の話。19世紀の実在の妖婦ローラモンテスの物語。踊り子だった彼女はババリア国王ルードビッヒ一世の寵愛ほか19世紀の名だたる名士たちと次々に噂になってスキャンダルの女王になるけれど、最後には落ちぶれてサーカスの一員になっている、という設定ね」
「映画は、まさにローラモンテス自身が出演する彼女の半生を出し物にしたサーカスの進行を描きながら、時折彼女の回想シーンが被さってくるという作りになってる」
「なんか月並みな言い方だけど夢みたいな映画だと思うの。第一に見せ物芸としてのサーカスの演出自体がまず見物よね、すごく面白いショーになってる」
「それと映画としての映像表現、例えばババリア国王に出会うところ。兵隊の行進が右奥から左に流れていくなかを、ローラモンテスは馬に乗ったまま手前から奥へとつき進んでいく、彼方の離宮みたいな丸屋の東屋、ああいう映像設計がね、夢みたいなカメラワークがね、映像表現としての完璧な計算のもとに動いていって、僕はこれ、もう映画の中の映画だと思うんだよね<天上桟敷の人々>みたいに」
「そう。ワンシーンワンシーンが映画という宝石のように見えるの、ババリア国王の宮殿のすばらしさ!」
「船上のワルツの高鳴り!馬車の内装のこだわり!」
「そのうえ各シーンには、やっぱり出し物にされてる身っていうせいか、一種、冷ややかな?視線、アイロニーというかシニカルな眼差しが端々に感じられたんだけど、どう?」
「うーん例えば?」
「例えば楽屋で国王と会うシーンでロープがぶらぶらしてたり。わざとハズしてるような感じもあって、なんかクスクスしちゃうのよ、それでいて諦観に満ちたようなラストシーンは、凄くアイロニカルで、なんかゾッとしちゃうくらいだった」
「ローラモンテス役をやったマルティーヌキャロルという人は、資料によると撮影時35歳だったみたい。すっごく綺麗だよね、冷たい美貌というかな、雰囲気は例えばマリアカザレスとかにも似てる」
「<突然炎のごとく>でジュールをやったオスカーウェルナーがミュンヘンの学生役で出てたっけ」
「オフュルス監督は、まあ呪われた映画監督の代名詞でもあるけれど、<輪舞>とかもそうだけど、これほどの映画を残してくれて僕らが今も見られるというのは、こりゃ実に幸福なことだよねぇ」
「・・というような話を、あのシネ研でもしたわねぇ(笑)思い出したよー狩刈くん、ちょっと新顔にしちゃカルトなヤツ、と思ったんだ、わたし(笑)」
「おかげで青春をボーに振った?(笑)」
「はいはい(笑)ま、他にもいろいろあるけど(笑)そのうちサーカスに出て思い出してるかもね(笑)」(1998.10.7)

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