「Lisa and the devil」(日本未公開)1974年イタリア・スペイン

マリオ・バーヴァ監督 テリー・サバラス エルケ・ソマー シルヴァ・コシナ

「これはねぇバーヴァ監督晩年の、怪奇ロマンの香り溢れる傑作で、僕は長いこと見たくてたまらない一品だったんだ」
「全体に古風な感じが良かったね、どことなくブニュエル映画みたいな幻想的な感じ」
「ああ。それは多分ロケ地がスペインのトレドだからかな・・確かに女史の言うとおりブニュエルの風合いもあるなあ」
「物語といえば、どこと知れない古都にやって来た観光客リサが、不意に迷子になってしまって、そこにテリー・サラバス扮する執事と出会ったり、奇妙に引きつった夫婦が出てきたり・・で、夫婦の車が故障して皆は女主人アリダヴァリの屋敷に立ち寄る・・またしてもアリダ・ヴァリ(笑)」
「それはともかく(笑)屋敷にはパラノイアックな息子マクシミリアンがいて、しかも執事は等身大の人形ばかり作っていて・・と、リサは次第次第に怪奇と幻想の世界を彷徨ってしまう。しかも一向に夜は明けようとしない・・と、まあ、ストーリーはね、これはややありきたりなんだよね。でも僕はこの映画の古式ゆかしい?ヨーロッパの怪奇映画の良さが楽しめて、すごく面白かった。いわゆるただのホラーとかとはまるで違うよ」
「セットの重厚さとか、衣装とか、隅々が丁寧なつくりで、ああ、70年代の映画だなあって感じがしたの。それと人形への偏愛とか、死骸愛好とか、ヨーロッパならではの暗い森。それからオルゴールみたいな小物を効かせたセンス」
「そのくせ、かなりドギツイシーンもあったしね」
「ヒロイン二人は、これまた古いけど<キッスは殺しのサイン>で共演済みのEソマーとSコシナね。タイプの似たキャスティング」
「そう! ともにもう若くないけどしっかり脱いで熟女の官能(笑)をたっぷり魅せてくれる。僕は主演Eソマーよりシルヴァ・コシナのファンなんだけど、すっごいポルノ顔負けのシーンには愕いた!そのうえすっごい殺され方!彼女の、あの丸顔でちょっと愛嬌ある可愛らしい顔立ちはとても忘れがたい・・若くして亡くなっちゃったんだけど。いつも殺されちゃう可哀相な役ばっかり(涙)・・ジェス・フランコ監督の<ジュスティーヌ>とかも忘れがたい」
「とまあ感慨に耽ってばかりじゃなくて、映画の話。なんていうかしら、この映画、エモーションが分厚いのね、母親Aヴァリと息子の間の愛憎溢れる緊張感とか、Sコシナと夫との不仲とか。そういう登場人物同士の感情のもつれも丁寧に描かれていた気がしたの」
「そんなスリリングさの裏にはなんか謎があるな、と勘ぐらせる演出の合間に、棒つきキャンディをしゃぶってばかりいるTサバラスの存在感がまた絶妙でね。軽妙かつ肉厚な演技で、ああいう人物であればこそ、時空間に偏在する悪魔っていうのは説得されちゃう(笑)」
「そうなのね。街角ですれ違ってるかもしれない、ラテン系の憎めない悪魔ね。だからこの映画、怪奇趣味とユーモアがほど良く溶け合っていたと思う」
「それとエロも(笑)。まったく文句ナシだよ! で、最後の方で初めて、タイムスリップみたいなことが明らかになって、ああ、なるほど!と思うわけ。冴えてるよね」
「最後の最後の飛行機のシーンは余計だったわね・・あそこは助監督ランベルト・バーヴァが撮ったんじゃないかしら(笑)」
「異様なシーンではあったけど、ちょっとモダンすぎてトーンが合わないし必然性が無かった・・でも、この怪奇と幻想ロマンの香り高い傑作は、もっとひどい追加シーンで全然別の映画にされちゃった」
「<新エクソシスト>ね、見てないけど」
「とにかく、あれはひどい映画。だからここでは原題にこだわっておきたいんだ。あれは見るべきじゃないよ」(1999.8.30)

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