「レスリーニールセンのドラキュラ」1995年アメリカ

Mブルックス監督 レスリーニールセン

「いやあ笑った笑った」
「最初くすくす最後はゲラゲラ、さすが名匠ブルックス監督! チープでイージーな<裸の銃を持つ男>シリーズを見慣れていると、今回のセットとか衣装とかのディテールに、さあ、マジで映画作るぞーってゆー意気込みを感じるかも(笑)。ま、ネイキッドガン、あれはあれで大好きなんだけれども」
「レスリーニールセンは、ドラキュラにうってつけだったね。もっと早くやってたらよかったのに。ドレビン警部とかより、彼の長いキャリアの結実たりうるキャラクターだよ」
「彼ってほんと、キャリア長いんですってね。<禁断の惑星>で宇宙船の船長を演じたり、<ポセイドンアドベンチャー>でもポセイドン号の船長だったり」
「別に演技がどうこうって役者じゃなくて、その存在そのものが憎めずおかしい、というタイプ。だからポセイドン号が転覆しそうになって奮闘する彼の姿を見ていると、ひたすらげらげら(笑)」
「今回のやつでもさすがに素早い動きの時は、カメラもロングに離れてスタンドインに交代してた。もう七十過ぎ?<スパイハード>は見ててちょっとツラかった」
「だよね。いつまでも長生きして笑わせてほしいなあ」
「ところでブルックス監督はいつも細部にこだわる丁寧な笑いを楽しませてくれるの。小さいギャグを積み重ねていくから、その都度笑える」
ギャグは、だいたい先が読めるんだ。これはこうなるぞって先読みして、そのとおりになるのが実におかしい。心臓に杭を打ってどっばーんって血が噴き出すところとか・・」
「天井に張り付いたドラキュラが、ばったーんと床に落ちるところとか。期待を裏切らないのね」
「トランシルバニア語の応酬なんか、最高のギャグだった」
「映画全体が楽しい気分を醸し出してるのよ。例えばエンドタイトルのところで、最初はワルツが鳴っているのに、それが終わるといかにもホラーってかんじのコワーイ音楽に切り替わる。ああいうところが、愛情豊かっていうのかな、言葉には出来ないけれど、にんまりしちゃう楽しみだったの」
「ながながとしたダンスシーンもそう。別にストーリー上はあそこまで必要ないんだけど、どんどん激しくエスカレートしてく」
「あれはドレビン警部のノリだったわね」
「映画全体が楽しい・・って話しだけどさ。例えばドラキュラが精神病院に収監中の子分を訪ねて窓越しに話をするだろ。でドラキュラはコウモリみたいに逆さになってる。けれど当然、ニールセンが逆立ちできるわけないからセットが全部逆さになってるわけだ。そういうことを想像して楽しむような、そんな愛し方なんだな。多くの映画は、そういう撮影上の工夫の楽しみとかまではなかなか観客に伝えない。そんなことに気を取られるよりはもっと映画そのものに、物語とか映像そのものにのめり込んでほしい、と思って作られてる。けれどブルックス監督の作品は、こうした撮影現場の工夫とか、わざと猛烈なダンスをさせてスタンドインですよとあからさまに見せるようなところがあって、映画っていうものの娯楽性の豊かさを感じさせる、そんなウォームハートな味わいがとても好きだ」
「ねらい所が決してヘタウマ路線じゃなくてね。例えば監督本人が登場するじゃない、彼の映画には。しかも添え物じゃなくて主役級で出てくる。そういう自作自演ってこと自体に、ブルックス映画の、映画を虚構として、娯楽として、真剣なんだけれど余裕を持って・・どういっていいか分からないけど、映画を作っている喜び、見てる悦びみたいなものが滲んでるように思うのよ」(1998.5.18)

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