「LAコンフィデンシャル」1997年アメリカ


カーティスハンソン監督 ケビンスペイシー ガイピアース

「なんというか謎のない映画だ」
「えっそう?わたしは面白かった、最後までどうなるかハラハラした」
「いや、全て細部まで練り上げられた脚本で、余白みたいな部分がない、すべてフに落ちてしまう映画だってこと(笑)最大の謎はキムのオスカーだが」
「ああ・・確かに脚本は良くできていたわね、これはオスカーもの。見ているうちに、一体これはどういう映画かしら?ってどんどん強く興味を惹きつける。警察内部のデカたちの人間模様が見え透いてきても、エドも決してタダの善人というだけじゃなく野心家で結構アクどいし、ジャックもバドもそれぞれ矛盾を含んだ人間味が豊かで、全体に厚みのある人物造形よね」
「うーん。お言葉ですが(笑)僕はその反対で登場人物みんなが全てステレオタイプに思えた(笑)スキのない脚本というのはそういう意味。なんか出来過ぎてるツクリがハナに来る」
「・・と、いうと?」
「ま、作品を食い破るものがなく、全部がこの映画のなかにキチンと収まってるという贅沢なオセチ料理式の構図かな(笑)。でも例えばDデビートみたいなウワサの真相編集長がロスを乗っ取るなんてのはお笑い。オマケに市警内部の腐敗みたいな話はもうヘキエキ! 偽証が明らかになって真犯人は別にいる、とエドが気がつく場面、あのあたりにはエモーションが不足してる。全体に込み入った筋立てだけで出来ていて、真に情感的なものドラマチックなものは希薄な映画だと思う」
「・・なるほどー。でもわたしはこのテの映画にはあまり目くじら立てないことにしてるの(笑)。それがDデビートの最初の語り口で感じられたのよ、ま、お気楽に見てちょーだいって感じで始まるから、少しノスタルジックなロスの雰囲気でも楽しもうかな・・って気持ちで見ていくと段々と人間関係や筋立ての迷路に陥って、ナニナニどーなってくのぉ?って感じ、そこがホンの上手さ、緻密さの快感だったりする(笑)」
「まあね、娯楽ですから、映画は」
「あっ、その言い方!(笑)確かに楽しみ方はイロイロあるけれどね(笑)」
「そりゃそうだ。僕もこんな映画にいちいち目くじら立てたいとは思わないよ」
「ますます過激な発言だわね(笑)」
「だってさ!ここでバラしちゃうけど(笑)コーヒースタンド殺人事件の犯人は実はエドの上司ダドリー刑事部長なんだよー!!(笑)。で、それを最初から知ってたらこの映画は全然面白くないだろ?(笑)同じロス警察でも刑事コロンボみたいに推理モノなら犯人が最初から分かっていても面白い。けれどあそこまで色んな刑事たちが出てきて何か人間関係みたいなものがあって、白ユリ館の謎とか仕掛けておいて、結局は撃ち合いで終わり・・」
「まあ、ね(笑)。じゃ何を期待してたの?」
「キムの裸(笑)いや、なんて言うかな、実は僕もあまり期待してなかったんで(笑)。でも例えばコーエン兄弟の<ミラーズクロッシング>のように豊かなディテールとクールな一貫性みたいなもの、かな、なんかそういうスタイリッシュな体裁でもしてたら別の見所があったかも知れない。骨太に見えるけど、案外、筋肉だけで出来ていてホネのない映画に思ったよ(笑)」
「確かに二回も見たいかというと、まあそうでもないわね、どこが良かったって言えない類の映画で、それに感動とか感銘とかいった、後にも残るようなものは少ないとは思うの。ただ見ている途中ではとても楽しめた、敬服した、だからまたいつか見たいって思うこともあるかも知れないわ」(1998.11.10)

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