「君さえいれば」1995年香港


ピーターチャン監督 アニタユン レスリーチャン カリーナラウ

「細かい描写にアイディアが豊かで、そこには感心させられた」
「そういう部分的なところでは実に面白く見られたわね。でも物語となると・・どうかしら。仲が冷えてきた音楽プロデューサーと女性歌手の間に、男しか合格させないオーディションで合格しちゃった女の子が闖入してきて、まあ三角関係みたいになる。でも女の子は本当は女性歌手の大ファンで、歌手にはプロデューサーと結婚して幸せになってもらいたいと願ってる。ところが女の子は男装した少年の姿をしてるわけで、そこでゲイじゃないかとかいう話が絡んで、プロデューサーは彼(彼女)には心惹かれるけれどゲイにはなれないし・・とか悩む。なんか込み入ってない?どこに物語の中心があるのか、それがちょっとよく分からないわ」
「(笑)確かに。物語はかなり平板で散漫。それにゲイか否かあたりはナンセンスだよね、だってあれだけ濃いゲイの友人がレスリーにはいるんだからね。その他全般的に、人物たちの葛藤の必然性が理解できないから、まあ結局はそんなにのめり込む必要のない、眺めてるだけでいいような映画、という感じかな」
「結局エモーションのベクトルが散漫なの。レスリーはアフリカ旅行で活路を見いだしたいとか言っておきながら、見た感じあんまり行き詰まってる感じが伝わらないし。アニタにしてもカリーナの大ファンでありながらレスリーに恋をする、それだけならまだしもアパートには同棲してる男友達がいて・・とか。欲張りなのね。だからベクトルの幅、深さもそれぞれ小さくならざるを得なくて、グッと惹きつけられるものがない・・」
「まあ・・じゃ、それほどケナす映画かっていうと、実はそうでもなくて、僕はこの映画は好きだ(笑)今更遅いけど(笑)アニタユンの可愛らしさに、全てを許す(笑)」
「ストーリーとしてもそうだけど、演技の質っていうのかなあ、彼女がスクリーンに登場するだけでレスリーもカリーナも、演技が生き生きしてくる、そういう彼女中心のペースみたいなものが伝わったわ」
「ま、ね。物語自体が散漫でちっとも進展していかないから、だからこそ最後はどうなるんだろ?っていう期待を込めて最後までダラダラと見てしまう、その一連のなかでアニタの芝居や数々の微笑を誘うアイディアを愉しむ・・そんなところがこの作品の魅力というべきかな」
「ま、ね。これは結局レスリーとカリーナの物語なのよね、二人の冷え始めた仲はこれからどうなるか?そこをもっとキチっと組み立ててもらいたかった気はする。その組立てのなかに、闖入者のアニタがフリーハンドで闊達に縦横無尽に活躍する・・といった、そんな枠組みがあっても良かったと思う」
「そういう作りにしたいという意図は、まあどうにか汲めたけど、それにしてはアニタが全体を引っかき回しすぎた、ボーイッシュに男装した彼女のキャラクターの一人相撲が先にありきで、シチュエーションは後から考えた、みたいな、脚本の練り上げ不足みたいなものは、確かにあったかもね。でもこれはアニタファンにはたまらない映画で、ま、そういう類の作品なんじゃないの?彼女の魅力を中心に据えて、そこをベテランの二人が脇で支えた・・って類の」
「わたしアニタユンて、ちょっと一本調子だと思う」
「おおおっと、最後になってその発言はないよー(笑)」

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