「カサンドラ・クロス」1976年 イタリア・イギリス

ジョージ・パン・コスマトス監督 ソフィア・ローレン リチャード・ハリス

「列車を舞台に使ったオールスターサスペンス映画として出色の出来栄えね。色んな人にお勧めしてるの」
「確かに今見ても十分に面白いし、一気に見せる、リアリティのある話だね。僕は小学生の頃に見て、かなり手に汗握った思い出があるんだけど女史に言われるまで忘れてた」
「ジュネーヴの世界保健機構にテロリストが侵入して、得体の知れない病原菌に感染したまま逃走する。そしてストックホルム行きのヨーロッパ縦断列車に乗り込んじゃったから、ほかの乗客たちがどんどん感染してく・・」
「で、病原菌を培養していたアメリカの軍人がこの列車をポーランドの元ユダヤ人収容所まで送り込んで乗客を隔離しようとするんだけど、その途中にオンボロの鉄橋、カサンドラ橋があって、多分列車はそこで谷底に転落するだろう、いやしないかも? するはずだ・・と暗黙の内にもくろまれているわけだ」
「結末はまあ、予想通りなんだけど途中のストーリーがね、とても丁寧で、細部も豊かに描かれていて、だから見応え十分だったの。特に列車という閉ざされた空間の人間模様ね、SローレンとRハリスの元夫婦同士の愛憎とか、AガードナーとMシーンの富豪夫人とツバメ男とかね、それだけで映画一本が撮れそうなくらいの物語を感じさせる豊かな人間模様だったと思うのよ」
「ははあ、確かにそれぞれがメロドラマをしょっていて、しかも意外な展開も見せるよね。Mシーンが実は登山家でしかも麻薬の密売人で、それを追ってる刑事のOJシンプソン(笑)とか。あとは、かつて妻と子供を殺された収容所にまた連れ戻されるユダヤ人リー・ストラスバーグといった、枝葉のエピソードも見事にドラマを組み上げてた。ただ、普通の医師Rハリスがマシンガンとか撃っちゃってカッコ良すぎるキライはあったけどね」
「それからなんといってもこの映画には国際的な陰謀の影に1000人もの乗客が見殺しにされるっていう、大がかりな設定からして映画向きな物語だったと思う」
「なんか、珍しくホメあってるな。けど、いいか(笑)列車を追うために空撮が多かったり、ヨーロッパの町並みとか田園風景とかもよく見せてくれる、そういう意味ではオールスターキャストに負けない映像効果も良かった。もう少し列車のインテリアとかにも凝って欲しかったけど」
「わたしはねぇ、途中、列車を封印するために止まるシーンがあったじゃない。比較的長くて異様で、緊迫したSFっぽい雰囲気がすごく良かった。暗闇に白い防護服、そしてガスマスクの兵士たち、溶接バーナーの光」
「手練れの演出だよね。後に<ランボー>とか<コブラ>とかいったスタローン映画をドンパチ撮るコスマトス監督としちゃ、これは思い入れのある作品じゃないかなあ」
「で、映画は列車の中ばかりじゃなくて、WHOの中で、列車を橋から落とそうとするBランカスターと、感染してもすぐに治るはずだって主張する医師Iチューリンの二人の葛藤も平行して描き出すのね。Bランカスターは難しい演技だったでしょうね、橋から落ちるか落ちないか、その現場責任者なのにWHOのオペレーションルームから一歩も外に出られないで」
「その部分は彼だからこその厚みというものに助けられたと思うね。これがもし他の俳優だったら、黙っているだけで苦悩が伝わるようなあの演技は出来なかったかも。Bランカスターの大きな目と鼻があってこそ伝わる悩みだ(笑)」
「そして意外なところで、またしてもアリダ・ヴァリ(笑)」
「まったく意外だ。彼女ほどに大きな目と鼻は必要ない役柄だったのにね(爆)」(99.11.21)

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