「Justine/マルキ・ド・サドのジュスティーヌ」1972年スペイン・西ドイツ



ジェス・フランコ監督 ロミナ・パワー シルヴァ・コシナ クラウス・キンスキー ジャック・パランス

「実は僕、この映画をめぐってサド侯爵と対談してるんだ。裏番組で」
「えっ!」
「あ、わざとらしいなあ・・ま、こうして一人トークしてると一番気がかりなのは、自己陶酔の世界に入り込んじゃって見境なくなる、ってことだね。しかもここはジェス・フランコ・セレクションのコーナーだし・・つまり、すでに見境ないね(笑)」
「ついついウルウルしちゃったりして(笑)。それはともかく・・というわけで、この映画の細部についちゃ、サド侯爵とやった対談コーナーに譲るとして、ここでは全般的にジェス・フランコ映画のミリョクってなんだろ?それを考えたいな」
「ははは・・・すでに自己陶酔が始まりそうだ。全般的なミリョクねぇ。そんなこと考えるの不敬罪だよ!要するにチープで、ハダカが見られて、しかも後腐れがないってことかな??・・僕らシネフィルとしちゃ、なんか彼の映画って、簡単に作れそうだよね。こんなのならオレにだって作れる!そう思わせるのも魅力のひとつだよ・・いや・・全然ちがうな」
「まあ、色んな作品を撮ってる巨匠だからキチガイ・・じゃなくてイチガイには言えない。実際に僕が見てるのも、ほんの一握りだし。フランコ映画の魅力ってゴダールを語る以上に難しい・・でもこの<マルキ・ド・サドのジュスティーヌ>なんか、かなり、かなりマジな水準まで持っていってる。<三大怪人>の時とは大違い。ほんと色んな作品がある」
「出来不出来というより、かなり戦略的な感じだと識者は言うよね・・っていうか、一本の映画を作るのに、何本もイメージを持っていて、それでフィルムを使い回す。だからおのずと映画はチープにはなるが、何百本という映画が撮れる。で同じ名前で発表すると飽きられるから次々と変名偽名を使い出す・・
「何百本とはオオゲサだよ(笑)。でも、また別の識者の見解では、フランコは病気。映画を撮っていないと死んでしまう・・って。これは、実に理解ある名言、キモに銘じるべき名言だ。僕はそれが分かって、やっとフランコ監督の呪縛から解放されたな。それまでは、とにかく人間離れしてるように感じてたから」
「ま、べつに僕はフランコ映画を見なくても死にゃしないんだけどさ、でもついつい心が惹かれるんだね・・最初に見たのが、大昔にビデオを借りた<女体拷問人グレタ>だったからかな(笑)」
「ははは・・そりゃ色んな意味で心惹かれるけど、まず1年に3本も映画を撮る人っていうところで僕なんかは、こりゃフツーじゃないって思っちゃったんだ」
「ところが、まあフツーの路線で文芸大作を映像化したのがこの<ジュスティーヌ>ってわけだ。しかもオチっていうか、映画の着地点はしっかりハッピーエンディングで、そういうところが後腐れのなさっていうかな。大衆芸術を全うしようとする立派な映画人なわけですよ」
「全然違うよ(笑)一部の大衆のために作ってるんでしょ」
「そうかなー。でも70年代の作品ていうのは、こりゃ売れたらしいよ〜〜どれも傑作揃いで名作の森!僕は実はマドリッドで<デビル・ハンター>というのを見たことがある」
「えーと、<デビル・ハンター>って<Il Cacciatore di uomini>とかいう原題のやつね、それで?」
「満員の観客だった。いやそれはウソだけどね。少なくとも10人からの大衆が見てたよ。それからセリフはドイツ語で字幕はスペイン語だったけど、映画はすごくよく分かった」
「だって、手元の資料によると、『誘拐された美貌のモデル嬢が悪魔を自称する男にいじめ抜かれつつも別の男に救い出される・・』って映画でしょ。それなら誰だって分かるさー」
「はいはい。まあね。でも映画ってのは、とにかく一行の文章で全体が説明できなきゃ面白いものは出来ないっていうよ。プロットは、シンプルなほどイイわけ。で、フランコ映画はたいていは一行で説明できる
あるいはまったく説明できないか、のどちらかだ。でもまあ、気楽に行こうよ。肩のチカラを抜いてさ。血も抜けると、もっといいんだけど」
「ところでこの<ジュスティーヌ>では、ちゃんとしたコスプレもので、時代考証もしていて、それにKキンスキーは別格としても、メルセデス・マッケンブリッジなんてオスカー女優を使ったりして、結構、気合いが入ってる」
「マッケンブリッジって、誰もやりたがらなかった<エクソシスト>の悪魔の声を吹き替えした女優だよね・・それはともかく原作ものの映画化っていうのは、さっきの話しだと、なかなか一行では語れないんじゃないかな」
「そんなことはないよ。『美貌の若い女がいじめ抜かれる・・』ほら、さっきの<デビル・ハンター>より短いじゃないか」
「ううーん。まあそうなんだけどね」
「ま、なかなか魅力が尽きないっていうことで早く次の作品に行こうよ」
「そだね」(2001.3.10)


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