「ヒドゥン」1987年 アメリカ

ジャックショルダー監督 カイルマクラクラン マイケルノーリ

「これは実に痛快なSF映画。しかも、なんていうのかな、人間的な感情が豊か、というか、そんな作品で僕は大好き」
「狩刈くんの好きそうな映画よね(笑)ま、わたしも面白いと思うけど・・まず全体にスピーディな展開で飽きさせないよね、話としちゃ全然大したことないし、エイリアンが人間に乗り移る、その繰り返しだけなんだけれどさ」
「そう。物語にはほとんど変化はない。ただ女に化けた時に胸を確かめてみたり、ハードロックとフェラーリが好きなエイリアンってあたりのお遊びは面白い」
「頭痛薬を飲むところとかもね(笑)なぜ敵のエイリアンは殺人を続けるのか、ってところの説明を全く省略しているのもこの映画の分かりやすさだと思うのね。そこをクダクダと説明しないでタダの撃ち合い殺し合いに徹してるっていうところが、単純にのめり込めるというか(笑)」
「確かに、面倒くさい設定みたいなものは一切省略して、かわりにベック刑事の夫婦愛とか、ギャラガーの孤独感みたいなものが前面に出てきてる、つまり日常生活の機微がよく描かれてるよ。さりげないセリフで人間味を浮き彫りにしてるしね、ギャラガーとベックのコンビは、常套とはいえ親しみやすかった。静と動、クールとホット」
「この映画はもっと陰惨にグロく作ることも出来たと思うの、例えばエイリアンがベックの奥さんに乗り移るとかさ、ま、子供に乗り移るのはヤリ過ぎにしても・・例えば<セブン>や<エイリアン>みたいなダークな映画のことを考えると、この映画の品の良さっていうのかしら(笑)あくまでも面白さ、ヒューマンなものへの眼差しを忘れずにサスペンスを紡いでいこうとする制作側の懐の深さを感じるのよ」
「いくら殺しても死なないっていう部分で<ゾンビ>とか<バタリアン>みたいなゲテモノ映画にもなりえたとも思う。けれどそうはしなかった。エイリアンが転移する時のグロさ、あれだって大人しい方だし」
「脇役もしっかり描かれてたよね、ベックの奥さんは庶民的で、いかにもいそうな奥さんで、デカの妻っていう立場をわきまえてるツラサがよく伝わった。それと、あの子供は可愛かったわねぇ、確か<エルム街の悪夢>にも出ていたっけ。あと警察署の内部の雰囲気ね、型どおりなのに、いい雰囲気。ゴミを放るショットとか女房に会ってないよーとかいうあたりのセリフが、なんか仲間同士の気安さを伝えていて、こういう本筋とは別の隅々が生き生きしてる」
「全体に細部まで丁寧に演出されてるって感じかな。これは大事なことだよね、そういう細部がよく伝わるからこそ、ヘタなお膳立てがなくてもスッと映画の中に入っていけるわけだし。ただのドンパチシーンの連続だけじゃクソ面白くない、例えば<ロボコップ>みたいに(笑)」
「ラストは結構泣かせるよね」
「そう。女史の言うとおりこれはヒューマンな映画でもあるんだな、あんだけ殺人ばかりでヒューマンもクソもないけれど(笑)、それでもあのラストにはグッと来る。カイルマクラクランは後年のクーパー捜査官を予見させる怪演スレスレでいながら、実はとっても叙情的ですらあった」(1998.9.29)

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