「初恋」1997年香港

エリックコット監督 金城武 リーウェイウェイ カレンモク

「これは、なんというべきか・・・なんだろうね」
すごく楽しい映画。わたしは大好き」
「ウォンカーウァイをさらに脱構築した作りに加えて、クリストファードイルのモロぽすとモダン映像、という感じで、とにかく展開は目まぐるしい。映画としては、コット自身が、実はこんな映画が作りたかったんだ・・とか喋りながら、次から次へといろんなアイディアをコント風に綴っていく。そのスピード感、軽快感はたまらないね」
「そのなかでメインのプロットはふたつあって、ひとつは金城くん扮する清掃員と夢遊病の女の子の深夜の恋。これは切なかったなあ」
「切ない・・って意味が違うような気もするドタバタだったけど(笑)でも一種、少年マンガみたいなセンスで見せるよね。金城武も頭のオカシイ清掃員で、要するにヘンな奴同士の恋というのは、まあ切ないかどうかは別として、胸に迫るものはあった。ビデオを撮る少女、というのは、不思議とフォトジェニックだ」
「全体に、例えばカーウァイ監督の<恋する惑星>を、もっともっとマンガにしたっていう感じはあるわね。でもコット監督のセンスは、人間の存在感とかには重きを置かないで、ただ感情をそのまま見せたい、というところだと思うの。本来は見えないはずのものを見せてくれる、これは素晴らしい才能よ」
「それは・・女史にしちゃ最大級の賛辞ということかな? 僕もそうなんだろうなとは思う。ただ、それってミュージックビデオと同じで、なんとなく伝わる、って次元だよね。それが映画として、可能性を広げているのか、むしろ先祖帰りみたいに後退しているのか?ってことが評価の分かれ目だと思わない?」
「まあまあ(笑)難しく考えれば、そうね。映画は全体に曖昧だし、お遊び感覚の奔流で、ギャグの冴え渡りとか映像美とか、ビデオ映像の多用とかで目くらまししてるって批判はあるかも。でも、そんなことより、これは恋の瞬間瞬間の気持ちをとらえてる映画なんだと思うし、その瞬間ていうのは、実は一連のシークエンスのなかではっきりしてくるものなのよ」
「印象派って感じかあ。それはよく分かる・・と、まあ(笑)難しいことはもう置いとくとして、好き嫌いで言えば、僕も大好きな映画だよ。後半は、披露宴をドタキャンして別れた昔の恋人が現れたっていう話。で、あの時の指輪を返せと迫ってくるんじゃないかと怯える売店の店主が主人公だね。こちらもゲラゲラ笑っちゃったし、感情に訴える要素が多かった。前半のナイーヴな物語に比べるとメロドラマ的な感じもしたけれどね」
「とにかく、これはこういう映画・・って説明するのはすごく難しいんだけれど、マレな作品っていう感じはしたの。何回見ても、きっと新鮮だろうなっていう気も」
「僕は、エリック・コットのね、ある種の仕掛け人的な才能、つまりサブカルチャーをリードしていくような才能が、かえってこの映画を埋没させちゃっているんじゃないかって気がした。つまり、本来的には、これはもっと評判になっていいと思うし、例えばクエンティンタランティーノ並にもてはやされても、僕なら許す(笑)。けれど、コット自身が、涙ながして、監督をやった感想なんかを涙ながらに喋ってる、ああいうところが、サブはサブに止まっちゃってるっていうかなあ、内輪受けみたいなシッポを出していたと思うなあ」
「賛否両論はすごく極端にありうると思うの。ただ、これを何度もやっていいって言うつもりはないけれど(笑)、この映画、ただの遊びじゃないのっていう、その遊びの部分ね、そこが新鮮だったっていうこと。それは、実は素人映画みたいなコワイもの知らずの感じもあって、勢いで見せてくれた」
「確かに、新しい。けれど、これがコット監督のスタイルになるとしたら、次作には飽きちゃうかも(笑)」
「うーん。どうかなあ。わたしは好き。だからまた見たいなあ。とりあえず今度<ドラゴン・ヒート>見に行こうよ」(1999.8.3)

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