「ハンニバル」2001年アメリカ


リドリー・スコット監督 アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア ジャンカルロ・ジャンニーニ

「ま、これはブラックコメディとしては冴えてた映画で唯一の見どころはレイ・リオッタのノー味噌かな(笑)」
「あれには笑ったね〜(笑)」
「<グラディエーター>の成功で気をよくしたスコット監督は、『ハンニバル主演のポエニ戦争映画』を作れば良かったんだよ。ジェス・フランコ監督なら絶対にそうしたよ、膨大なフッテージを使って」
「まあこの映画、ジェス・フランコ・テイストがなくもないんだけど、それってやっぱりレクター博士が、実はあんまり魅力的でなかったっていうか、なんか平板な殺人マシーンに過ぎなかったっていうか・・どこが人気なのかわたしにはわかんないな〜」
「ま、ね、<羊たちの沈黙>で乗れなかった僕としちゃ今回のコレもまるで期待をしてなかったんで、その期待は裏切られなかったというべきか(笑)。映画のレクター博士ってご都合主義野郎でね、リドリー・スコット監督は彼をエイリアンと同じように扱った・・そのあたりが知的で審美的唯美的なマニエリスト、レクター博士という原作の味わいからの最大の転換点。そしてヴァージャーのカワユイお顔をハナから見せてみたこと。そこいらでこの映画の娯楽路線が引かれたね」
「得体の知れないコワイ相手、しかも殺人マシーン、ていう意味では博士はエイリアンと同じなの。噛みつくところなんかそのまんま。けれどわざわざフィレンツェの図書館の司書にトラバーユしようという博士を無限の暗黒宇宙空間に棲息するバケモノ同様に扱うのはいただけない・・突然現れて突然殺すなんてショック場面の連続が、かえってシラジラしくて、なんか演出の行き詰まりを突破するために繰り返されてるだけみたいに思える」
「だからJフランコか(笑)その通りだな(爆)。ゲイリー・オールドマン扮するヘンテコなツギハギ大富豪なんかまさしくモンスター映画そこのけだしね・・」
「さすがのジャンカルロ・ジャンニーニの存在感が圧倒的にシブくて、『デカだってお金は欲しい』みたいな人間像が素描されてるあたりも丁寧で、だからフィレンツェの場面は良かったの。でも、それとFBIとの接点を携帯電話だけでつないでいたのは全然ダメ。細すぎた。ドラマとしてつながっていかない」
「いんやー結構マジに見てたんだね、女史は(笑)・・ドラマを言うなら、FBIと司法省とがよってたかってクラリス捜査官の立場を奪っていくなんてのもくっだらない話だし、だからなんだよ!の一言で済むわけで、まあジュリアン・ムーアね、Jフォスターでもどっちでもイイけど、ヨリ肉感的になったヒロインがレクター博士の異常な愛情になかなか染まらない、最後の最後でただお見送りしてるところなんかも不徹底で気にくわないしね・・」
「ただ、まるで理解不能な残酷な悪にじわーっと思い寄せてしまうクラリス、という独特の雰囲気は伝わって、まあいろんな意味でスコット監督らしいスタイリッシュなセンスは光ってたの。でもパトカーだのヘリコプターだのがワンワン、西部警察みたく出てくるあたりはもういい加減にしてよ、っていうような常套演出もあって・・スタイリッシュと言うにもなんか中途半端」
「要するにこれ、原作の文芸ロマン大作色を払拭しちゃった時点で、ホラーとしてマジに怖がりたいというよりもギャグ満載のオバカ映画として僕は見てみたいんだね。フィレンツェ帰りの博士がキッチンでバジル炒めて早速イタメシ作ってるなんて、スバラしいじゃないの(笑)ああいうのこそスタイリッシュなセンスというべきだ・・でもそのオバカ路線をよくよく理解してハナから旨く演じていたのはレイ・リオッタただ一人だったけれども」
「あとは、ま、ゲイリー・オールドマンもそうかもね、<レオン>や<フィフス・エレメント>同様、彼は真摯に(笑)オバカをやれるタイプだもの」
「そうなんだね。残念ながらAホプキンスは、周囲の期待感、特に前作<羊>つながりでレクターに寄せられた謎解きの期待感に応えるために本当のオバカまでやれなかった・・そのへんの苦労が役作りとして『グッディグッディ』みたいな工夫に編み出されていたんだろうけど」
「確かに封切り前の期待感はあったよね・・でもジョナサン・デミ監督やジョディ・フォスターが断った時点でわたしは中途半端な駄作の烙印が押されたんだと思う」
「えっ!(笑)僕はこれ、決して駄作だとは思わないよ、中途半端とは思うけど。ま、こういう映画にJフォスターが出るワケがないけれど、独特のスコット・テイストはあなどれないし、ジェイソンとかフレディみたいな感じでレクターなるキャラクターがいても悪いとは思わない。前作<羊>とも全然違う映画だし、だからもっと安く小さく作るべき」
「それでJフランコ・テイストね・・」
「ホントのフランコなら殺人マシーンは冷徹清楚な美女で刑事はヴェルノン刑事、そしてヘンテコ大富豪を監督自身がつとめるんだろうけども・・というか、これは正面から素直な見方をしてもいいけどクセのある見方をしたらもっと楽しい、っていう映画なんだよ。玄人向け、だなんて僕が言うのはオコガマシイけどさ、バルコニーから首吊り&血塗れ状態でどっしゃーんと死体がブラ下がってくるなんて<サスペリア>じゃないか。Dアルジェント監督に敬意を表して、それをイタリアでちゃんとやってくれてる、そういうところが楽しいんだ」
「ま、そもそも食人映画ファンの狩刈くんならではの楽しみ方って、クセがありすぎだもんね(笑)」
「『食人映画』って結構、人気でね。ギロさんのアクセス解析によると、検索エンジンからこのサイトに入ってくる人の大半は、実は<食人族>検索だったりする(爆)。その次が<O嬢の物語>だったりするらしいけども(笑)」
「聞いたよ、その話。それでその次が<ソドムの市>なんだって」
「なんなんだ、このサイトは?(笑)」
(2001.11.13)

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