「激しい季節」1959年イタリア


Vズルリーニ監督 ジャンルイ・トランティニアン

「ファシスト幹部を父親に持つボンボン青年と若き戦争未亡人が、大戦末期の避暑地で燃えるメロドラマね。ボンボンは幼なじみの地元の娘と惹かれ合っていたのに、未亡人と知り合ってから三角関係になっちゃって、そのへんのジレンマはとても良く伝わったわ」
「ボンボン青年や幼なじみたちの若さと未亡人の熟女然とした美しさの対比は絶妙。あんな未亡人だったら、ほんとクラリとしちゃうな・・それに未亡人の母親が彼女の火遊びをなじったり地元娘が沈黙のうちに激しく嫉妬したりするのは、二人の恋愛を燃え立たせるためには不可欠な薪だし。恋愛に付き物の深い葛藤を描くには実にツボを得た脚本だなあって感心する」
「そのうえボンボン青年はノンポリなのに、父親がファシストだから、ムッソリーニが倒されると彼にも身の危険がヒシヒシと迫ったり。それまでは父親の政治力のおかげで見逃して貰っていた兵役延長期限も切れてしまったり。二人を引き裂こうとするファクターが次々に用意されて、それがご都合主義にならないで・・なんていうのかしら?」
「多角的に用意されてる?」
「そうそう、多角的。それに重層的。だからこそこの恋が益々刹那的に切なくなっていくの」
脚本がとても良く出来ているからストーリーだけでも充分に楽しめるけど、映像にも感心したよ。いかにもイタリアのリゾート地ってかんじで、ねっとり汗ばんだ空気が感じられた。ざらついた陽光で周囲が強烈な光と影になり、それがモノクロ画面に定着されてる。それから突然、海水浴場に飛行機が飛来してバラバラと機銃掃射するシーンもダイナミックな緊迫感があって手に汗握る」
「溺れた人を拾い上げた船が港に戻ってくるオープニングは、狩刈くん流に言うダイナミックな映像で、冒頭から観客の興味をグッと引きつけるのに成功していたと思わない?」
「よくぞ言ってくれました。実際のところあのオープニングは本編の物語とは直接は関係ないんだけれど、物語の悲壮さをつぶさに見ていくと、もしかしたらこの青年は最後には自殺してしまい、それで冒頭の溺死人の回収シーンに戻るんじゃなかろうか、それがこの青年と未亡人の悲恋の結末じゃなかろうかって先読みしたくなったよ」
「結局は子供を残して逃避行に出たけれど、子供のことが気になってしまって未亡人は戻るのね、そして青年もまた戦場へと出征する。ある意味で、終わらない恋、で終わる。一生忘れられない恋。こういうのがドラマだよねぇ」
「しんみり感情移入しちゃうな、特にクローズアップのシーンが多いから。ところでこれだけのドラマを見せて貰った時間がたったの100分だというのにも驚いたよ。もっと長い映画だったかと思ったけどさ。さっきも言ったけど前途多難な現実が次々と波状的に生じてくるからね。メロドラマとして傑作だと思う」
「強いて言わせてもらうとボンボン青年は最後まで正義感溢れる好青年で、だから色んな逆境に直面していちいち真面目に苦悩する。その育ちの良いお坊ちゃんさが、焦れったさにも繋がるような気はしない? 後先無く君を奪いたいっていう気持ちに女は弱いのに」
「だからこそ恋の相手は酸い甘いも噛み分けた、子持ちの未亡人なんだよ。そこには恋が暴走しないための、歯止めがあったわけ」(1998.5.3)

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