「グラン・カジノ」1946年メキシコ


ルイス・ブニュエル監督 リベルタ・ラマルケ ホルヘ・ネグレテ

「石油ブームに湧くメキシコのとある町へ、職を求めて流れ者がやって来るのね」
「そしてアルゼンチンから来ていた石油技師のところに流れ着くと、実は彼の石油会社は街一番の実力者が無理矢理買収しようとしてイヤがらせを続けていて風前の灯火。そこで流れ者たちはこの技師のために一肌脱いでやるか、って気合いを入れる・・」
「ところが技師が突然に行方不明になってしまって、多分、実力者に消されたな・・っていう展開」
「で、そこに技師の妹ってのが兄を訪ねにアルゼンチンからやって来て、それで流れ者は今度はこの妹のためにまたまた一肌脱がなきゃ・・とまあ、こうやってストーリーを追っていくと、これはほとんど高倉健の世界(笑)。<網走番外地>の番外編みたいな展開で男気ムンムン。ちょうど手頃な佐藤蛾次郎もいたし(爆)」
「(笑)・・になるはずが、全然なの。これはメキシコでブニュエル監督が撮った第一作ね。意外にもというかさもありなんというか、まあありがちなメロドラマ映画」
「まあね。どちらかというと健さんより<ギターを持った渡り鳥>の方なんだけど、主演の流れ者、技師の妹、この主演俳優二人ともがスター歌手ってことで、とにかく主役が歌うシーンが多いのはまあ見ていて楽しかったな。歌い出すきっかけにしても、まあムリはなくて、単なる挿入歌みたいなものにはなってなかったし」
「ブニュエルらしいと言えば、主人公の流れ者が歌を歌い始めると、必ずトリオ・ロス・パンチョスみたいな三人のバックコーラスがつくところ・・あれには呆気にとられたよ〜牢屋でも油田でもカジノでも突然現れてコーラスつけたりして・・いつの間にかソコにいる、って感じなの」
「あれ面白かったね。ああいうところで普通のメロドラマを食い破ってシュールでトボけた可笑しさが出てくる。あとはキスシーンの最中にドロドロの水たまりがナンの脈絡もなく出てくるあたりなんかも、いいね」
「ああいう確信犯的なはぐらかしがどんなふうに受け止められたか分からないけど、ただのメロドラマ、スター映画にしてはちょっと奇抜。この映画はあんまり売れずに、まあ可もなく不可もない成績で、ブニュエルはこの後3年間、映画を撮っていないの」
「ま、いつかの<昇天峠>とか<熱狂はエルパオに死す>とか、あるいは<スサーナ><エル>みたいに、メキシコ時代のブニュエルは商売柄、色んな映画を撮っていて、そのなかに、既成概念とか先入観みたいなものをわざとブチ壊しちゃうような演出の冴えを楽しむ、なんてのが楽しいんだよ。カジノで奇妙なスコットランド民謡ショーが出てくるのも考えてみれば可笑しいし、その一方で踊り子が歌って踊ってフロアを一周するシーンの躍動感なんかは見事としか言いようがないし・・彼女の足のアップでシーンが始まるところなんかもいいし(笑)」
「そういえば盗癖のあるお婆さんが出てくるところなんかも、ちょっと普通じゃないよね。あれ、ほとんどストーリーには咬んでこない、ほとんど趣味で出てきたような感じだもの」
「また彼女がながながとテーブルでクダを巻いて、それを主人公が酔いつぶれそうな眼つきでウザったく聞き流してるあたりも、ありがちとはいえなんかクスクスしちゃう・・というわけで僕はこの映画は結構楽しめた」
「まあ、わたしも・・楽しい、っていうのがちょっとこじれた楽しさだったけど。でもなんでグラン・カジノっていうタイトルか分からない」
「まあそういうタイトルだとなんか華やかで、売れ線めいたイメージだよね」
「それが実際はちょっと違って、なんかこんな映画にはもったいないようなタイトルだったよね(笑)」
「コメディと言えばコメディで、むしろ娯楽小品って感じで、ちっとも『グラン』という感じはしないわけで」
(2001.11.26)

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