「グラディエーター」2000年アメリカ


リドリー・スコット監督 ラッセル・クロウ

「なんでこんな映画を見たかというと、たまたま<アメリカン・ビューティ>と二本立てだったんで(笑)」
「半分くらい寝てたんじゃないの?(笑)」
「いや片目で見ていた(笑)でも十分によく分かったよ(爆)」
「<ブレードランナー><エイリアン>のリドリー・スコット監督は<ブラック・レイン>とか<テルマ&ルイーズ>とか色んなタイプの映画もとっていて、今回はローマ帝国の剣闘士もの」
「彼の映画は本当はじっくり観た方がいいんだ・・もちろん片目で(笑)。冗談はともかく彼の作る映画って、なんだか小さい山が連なる山脈みたいで、まあ飽きさせないけど、ここぞっていう盛り上がりに欠ける
「淡々としてるわけじゃないけど、とんがってもいないのね・・一応ストーリーはというと、マルクスアウレリウス皇帝に信頼されて次期皇帝にと嘱望されていた将軍が、マルクスアウレリウスを殺して帝位についた不肖の息子コモドゥス新皇帝に疎まれて死刑にされそうになって、でも脱走して剣闘士の身分にまで落ちて地方巡業しているんだけど、強いからすごい人気になってローマで凱旋剣闘ショーをやって、それをコモドゥスは恨んで彼を殺そうとするんだけどローマ市民は彼をヒーローに仕立てて、元老院議員が彼をかついで皇帝排斥を企てる寸前で失敗して、それで頭に来た皇帝はついに彼とコロッセオで対決して、最後は二人とも死んで、おしまい」
「すごい!僕の記憶に残ってる<グラディエーター>とまったく同じだ。やっぱり僕、寝てなかったんだ!(笑)とにかく見せ場だらけの、だらける映画だよね(笑)今どき、どうしてこういうサンダルものを作ったのか知らないけれど、衣装とかに金をかけたせいか、お色気が不足してる。僕は<カリギュラ>みたいなやつを期待してたのに!プンスカ」
「<ベン・ハー>とか<クレオパトラ>とかを思い出させるけれど、造形としてのスケールは比べるまでもないの。ローマの街を再現したCGシーンなんてのも実にチャチでお粗末・・ただの書き割り。例えばよ、ブリューゲルが描いた『バベルの塔』ほどにも構築力があったら、絶対にああはならない。あれには泣けたわ」
「映像設計は僕もちょっと問題だなって思った。剣闘士たちが闘っているシーンも、なんだか近くで撮りすぎてた感じでね、いまいち切迫感がなかったんだよね。これはもしかしたらビデオモニターのなかで作ってしまったんじゃないかな??最初のガリア人と帝国軍団とが激突する合戦シーンも、案外と小さくまとまっていて、なんか迫力が不足してた。組んずほぐれつの肉弾戦はちゃんとやってくれてるんだけど、それをパノラミックな幻影に展開していくだけのスケールの据え方が感じられない
「それは片目で観てたからでしょ?(笑)わたしはあのコモドゥスって皇帝ね、彼はニコラス・ケイジの<8mm>で気のいいビデオ屋の店員をやった俳優なんだけど、彼のイジイジした目が良かった。姉との近親相姦的なコンプレックスも、彼ならそうかな、って思わせるし」
「意外と声が高くて細かったりしてね、若いんだね、彼。だから自分に自信が持てなくて猜疑心の塊。そこいらは、ちょっと類型的な演技だったけど型どおりには出来てたよ。あとはオリバー・リードかなあ・・剣闘士たちを引き連れて地方巡業する興行師。彼もついにはなんだかヒロイックに死んだりしてね、要するに一見するとこの映画はただのサンダル活劇で魅力に乏しい・・と誤解されがち。シュワルツェネガーとかだったらもう最悪(笑)」
ラッセル・クロウはハマリ役ね。彼の、明らかにモッサリしたところは、最初のうちの農夫の将軍っていう役所には合っていたの。でも復讐に血を煮えたぎらせたグラディエーターというには殺気が不足してる。けど却ってそれで良かったのね」
「見方によっては、<スパルタカス>みたいなイデオローグが入っていないだけ痛快娯楽作品になりえたはずなのに、そうはしなかったリドリー・スコットの、いつも暗く熱く燃やし続けている優しくダークで悲観的な哀しい部分、それがこの作品に厚みを出しているのかもしれないね」
「<テルマ&ルイーズ>のラストでかけたストップモーションとか<ブラックレイン>で松田優作を殺さなかった終わり方とか・・そういうスコット監督なりに映画ってものが背負っていかなきゃならない大衆映画ならではの誠実さはあったのよ」
「つまりタランティーノやスピルバーグやオリバー・ストーンとかがそれぞれにイヤらしくブチ壊しにかかってる、大衆映画の一種の良識、ストイシズムってものは感じられたね」
これは実は真面目な作品なの。で、その分、商業主義的な派手さ、大向こうを狙った、いかにもドリームワークスですって感じのテカテカした衒いは少なかったのかも・・」
「それが切実に感じられるのは、あの麦穂をなでて歩くシーン。あそこはちょっとセンチメンタルだけど無闇に、理屈抜きで良かった。あの感情を呼び起こすいきさつがどうであれ、すうっとした優しさと物悲しさに包まれていく」
「それまでの展開は取替可能みたいなんだけれどね」(2000.10.10)


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