「グッドモーニング・バビロン!」1987年 イタリア・フランス・アメリカ


パオロ・タヴィアーニ ヴィットリオ・タビアーニ監督 ヴィンセント・スパーノ ヨアキム・デ・アルメイダ

色んなテイストがあって随分と盛りだくさんだったような気がする・・」
「トスカーナの聖堂建具職人の兄弟がアメリカに渡り、苦労の末にハリウッドで仕事にありついて、DWグリフィス監督の<イントレランス>で例の巨像を作る・・その間、恋あり友情あり映画への愛ありと確かに盛りだくさんで、しかも当初のうち基調になってたのは父親への愛と兄弟愛。それが最後は離ればなれになり、戦場で再会する・・」
「2時間たっぷり見せてくれて手応えはあったよね〜分厚い映画だったって感じで<父パードレ・パドローネ>なんかにも共通するタヴィアーニ兄弟節、って感じ」
「確かに彼らの『俺と〜お前のよぉぉぉぉおお〜〜〜』って感じのコブシの効かせ方は時に独特の迫力で迫ってきてね、淡々としていながら重たいんだね。ただ今回の盛りだくさん志向は、全体的にはやや散漫で作為的な印象を与えるかも知れないね
「最初の、イタリアで大聖堂を修復してるシーンが時々回想されて出てくるんだけど、あのあたりがね、ちょっと単純すぎっていうのかしら、なんか回りくどいような気もしたの。特に一番最後のラストシーンにも出てくるあたり・・あれはアメリカに渡った兄弟が故郷に寄せるノスタルジーみたいなものかしら」
「そうなんだろうね。それと、職人気質の再確認とかね・・確か最後のシーンでは幻想的になっていて、聖堂を実際に建ててる中世時代の職人たちの扮装をしてたし。僕はなにしろあの兄弟はまさしくタヴィアーニ兄弟自身を彷彿とさせる、これは一種の精神的な自伝作品みたいに思ってるし、その意味でも彼らの職人気質というのがダブるんだね」
「移民としてアメリカに渡って羊飼いみたいなことをして結構ツラい日々を送ってる、ハリウッドに来ても最初は全然うまくいかない・・っていうあたりは、わたしには長く、クドく感じたの・・っていうか、わたしはこの映画をもっと楽しく、一種の爽やかでちょっとホロ苦い青春映画みたいにして見たいのね
「ははあ、トルナトーレ映画みたいに、でしょ?」
「(笑)ご名答。ま、最近のトルナトーレ監督の作品は、ちょっとお菓子系って感じでハナにつくけど・・」
「まあ僕にしても、例えばこの映画の締めくくり方・・戦場で再会し、ともに死んでいきながら互いの顔に向けてカメラを回し続けるというあの締めくくり方以外にも結末はいろいろあり得たはずだと思うし、要するに別に彼らが戦場で死ぬ必然性は全然なかったとは思う。わざと深刻なラストを選んだんだろうけど、その真意は分からないな」
「なんだかね〜ちょっと唐突な締めくくりだったよね〜〜。そこに至るまでの、恋愛とか友情とかが素晴らしくて、グリフィスもカッコいいし(笑)、ちょっとだけでも夢見がちに見終わりたいなっていうのは、多分多くの観客の率直な想いじゃないかしら?」
「最初は、またしてもオメロ・アントヌッティ扮する父親を頂点に、兄弟愛の物語、みたいにして始まるんだけど、それが次第に薄れていくんだね・・壊れていくとか引き裂かれていくとかいった内在的な変化を来すというよりもむしろ、ストーリー展開が父親の愛と兄弟愛から恋愛、友情、映画への愛へと、モチーフとエモーションの焦点をずらしていく。だから、例えば恋愛が成就した結婚式のシーンで父親が再登場しても、すでにエモーション的にはちょっとズレてる・・あれれアンタの出番はもっと前に終わっていたはずなのに、アンタもご都合主義で出てくることもあるんだね(笑)って感じなんだ」
「だから兄弟愛のモチーフ、トスカーナの職人気質のモチーフが最後の最後にまたまた再現されると、なんだか『まあ、ご丁寧にねぇ』って感じの違和感があった・・違和感ていうかしら? 狩刈くんが言うように、もうそこに映画の中心はないのにわざわざ出てくるのが回りくどい、泣かせ・ヤラセみたいなの」
「この物語では、実は主人公の兄弟たちは、あんまり成長していないんだね・・人間的な変化が少なくて、そのせいかとても刹那的な印象を与える」
「刹那的というか、なんか青春の、一瞬の輝きみたいなもの」
「そうそう・・それはもう僕自身にとっては『刹那的』と言うよりホカにないんだけれど(笑)、実際、この映画はわずかに二年間程度の物語だ。シスコ万博は1915年、<イントレランス>は1916年の作品で第一次大戦は1917年だからね・・その短い時間にエモーションがいろいろ凝縮していてる」
「本当ならもっと長い時間をかけて兄弟の人間的な成長、彼らの人生を、じっくり見ていたかったような気もするなぁ」
「ところが例のタヴィアーニ兄弟節の語り口で、いちいちドーンと胸に迫るかと思うと、意外にもゾンザイというか、淡々とやりすごしちゃうところもあって、だから観客としちゃ、あ〜いろんなことがあったな〜盛りだくさんだったな〜、って感じなんだね。それは彼らがクジ引きでそれぞれの分担シーンを決めてそれぞれが好き勝手に撮る、という撮り方をしているせいかもしれないな。そうしたエモーションのバラツキのなかで、それが心に残る人もいるし、もしかしたら盛りだくさんさについていけずに、まあ良く出来た作り物だ、みたいに思うかも知れないな」
「良く出来た作り物、っていうのは・・まあ、そうかもね(笑)。例えばグリフィスなんてカッコいい割りに薄っぺらいの
「結婚式で彼がやる演説にしても、あんまりヒネリが効いてないし」
「まあ、ただそうしたエモーションの数々のなかでも幾つかはぐっと胸に迫るものが、わたしにはあったの・・わたしはこれ、素晴らしい作品だと思うし、語ろうとして直接には語らなかったものがたくさんあるような映画だったと思うし、そこをどう見るか、ってことも大事かも」
「グレタ・スカッキとデジーレ・ノスブッチという二人の女優も、とても良かった。いかにも当時の若い娘、っていう感じであの時代にノスタルジーを寄せることができたね。これはもしかしたら、ご老人が自分の若き日々を回想して懐かしむ、そんな時の『文体』で出来てる映画だ。密度の濃淡は結構バラバラ、エモーションの深さにもデコボコはあるけれど、全体としてはノスタルジックな調和がとれてる」
「一方で青春真っ盛りの若い観客には(笑)モノ足りない、上っ面だけで出来てるように思えるかも。それにしても、とにかくあの象は傑作よ(笑)」(2001.12.5)



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