「ゴールデンボーイ」1998年アメリカ


ブライアン・シンガー監督 ブラット・レンフロ イアン・マッケラン

「ずいぶん前に<リチャード3世>を語って、そこで女史はナチス・マニアだったことをカミング・アウトしたわけだけど、今回もその主演俳優イアン・マッケランとナチスをモチーフにした映画、そのうえ美少年ヌードバンバンって感じで、もう最高でしょ?(笑)」
「ちょっとナニ言ってるの!わたしはただの軍服マニア。ナチス・マニアなんて誰が言ったのよ!」
「わわわ・・そう怒らないで・・冗談だよ・・って冗談にならないところがこの映画のコワさというかテーマというか・・」
「狩刈くんの方でしょ、密かにナチスに共感?してるのは!」
「あ、まだ怒ってる?まあ僕のナチスは<悪魔の生体実験>とか<ゲシュタポ<ナチ>収容所>とかから来てる・・というショーもないものだったりして(汗)いやいや、かつては政治学徒としてだねぇ純粋に研究対象だったわけですよ、独占資本主義時代に遅れてきた統一国家の政治体制として・・」
「と、まあ、この映画でなぜトッド少年がナチスに憧れるのか? そこはこの映画の本質を担うはずだったから、ちょっと踏み込み不足って感じはしたの」
「ほっ。とにかく映画の話。僕もそう思うんだよね、要するにトッド君だって、ダイアン・ソーンとか、せめて<愛の嵐>とかさ、実はそういう残酷ナチ映画フリークで、夜な夜な美女をいたぶる夢想に耽ってマスかいてる、みたいな男の子として描けば良かったんだよね」
「・・・あ・あ・あの・・、狩刈くんてそういう男の子だったの?」
「れれれ、またまずい方向になってきたな(笑)いやそうじゃない、映画の話だよ。この映画は、主演のレンフロ君を大事にしすぎて真の汚れ役にさせていないってこと。結末も原作とは違ってるし、まあそれは別モノだからイイけれどね。でもちょっと不満だ」
「ふーん。・・・で、狩刈くんのカミング・アウトも大したものだわねぇ」
「わー、だから映画の話。名優イアン・マッケランは素晴らしく憎々しい肉厚な芝居をしたものの、狂気という点でトッド少年と共感を分かち合わなかったのは残念だった。もっと老獪さと老醜さを前面に出してもよかった
「老人と少年のバカし合い、策略の掛け合い、みたいなところはサスペンスフルではあったの。そこはさすがのシンガー監督。で、わたしが思うには、もうちょっと細部のね、トッドとガールフレンドの場面とか、両親との場面とかいった日常の面と、妄執的なナチスへの憧れめいた非日常の面とのコントラストが強烈だった方が面白かったんじゃないかなって思う。例えばよ、ヘンな例えだけど、三島由紀夫の『午後の曳航』に出てきたような突然のネコ殺しとかいった、なんか残酷なものに対するトッドの嗜好性とか・・」
「でしょでしょ?僕が言いたかったのもそれなんだよー」
「そーは思えなかったわ」
「いんや、そーなんです。そういう細部の点は<ユージュアル・サスペクツ>でもハショっちゃっていて行き届いてなかったと思うしね」
「トッド少年て、まあ高校生ってこともあって、ただ成績がいい、文武両道で先生もチヤホヤしてる、みたいに描かれていたけど、それじゃガリ勉くんでも同じことだし、もうちょっと、少年なら少年らしい曖昧な振れ幅があっても良かったとは思う」
「僕も少年だったから、よく分かります・・少年のアタマって、あの刑事じゃないけど、ほとんどセックスで出来てるもんだよ、そこにコミットしなきゃね〜」
「はいはい。イアン・マッケランにしても、時々ヘンなクセが出る、とかいった細部があったらね。老人特有の咳払い、とかさ・・でも彼がもっと老獪・老醜を出してくれたらっていうのは、どうかしら。意外に平々凡々の老人が元ナチスの高官だった、っていう方が、ありそうな話だし」
「あー、そうか、そう言われるとその通りだね!」
「なんだか今日の狩刈くんは動揺しっぱなしで前言撤回が多すぎるよ(笑)・・これは少年映画という枠組みで見るべきで、実はあんまりナチス云々じゃないのかも」
「例えば<スタンド・バイ・ミー>の続編て感じかな・・細部はベツとしても、僕は、老人との友情映画って感じで見たいけれどなあ・・秘密を分かち合う老人と少年。少女と少年じゃありきたりだけど、老人と少年。そこにゲイの風合いもあるし」
「はいはい。いろいろ言ったけど、幕切れの、後味の悪さにはなんか監督の才気っていうか、独特の意地の悪さを感じたの」
「モノの弾みとはいえ、少なくとも少年はレッキとした殺人を犯したわけで、ちゃんと汚れ役にはなってる・・って、あ、またしても前言撤回だ(笑)」
「<オーメン>のダミアン少年みたく、トッド君もそのうちワスプの栄えある地位に上り詰めて、上院議員とかになっちゃうんじゃないかしら、って感じね」
「はあ・・・しがないタダのモンド映画フリークには終わらないってことだね」(2000.9.4)

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