「ファスター、プシーキャット!キル!キル!」1966年アメリカ



ラス・メイヤー監督 トゥーラ・サターナ

「例えば5マイル四方に電話もなく人家もない、そういう孤立した牧場みたいなのがアメリカ中西部にはよくあって、そういうところに住んでいると、きっと気が変になるんじゃないかしら。カーツ大佐じゃないけれど、自分のことをパラノイアックに、神、みたいに思い込んじゃうんじゃないかっていう気がするのね、自分にはなんでも許されてるんだ、みたいな」
「ははあ・・犯罪っていうのは世間と地続きでなくちゃ成立しないもんであって、そういう陸の孤島っていうか人界魔境みたいな場所では、犯罪は、ただの暴力とか私利私欲とか異常な狂気に還元ないしは濃縮されちゃう。で、アメリカっていう国には国土の広さから言っても、そういう変換が容易に出来うるような国だなって思うし、それがどこかでバイオレントな精神構造にも影響しているんじゃないかなって、僕も思うんだ」
「多くのホラー映画がそういう発想で成功してるみたいよね。そんなこんなでこの映画、<悪魔のいけにえ>と凄く良く似てるって感じもしたの、なんでか分からないけど・・女の子がキチ○イ集団に追い回されるみたいなところ」
「ガソリンスタンドの間抜けな男とかね、オツムの弱い大男とか、素材が似通ってるとは僕も思った。こっちが元祖なんだけど」
「で・・この映画は、ホラーじゃないけど、今言ったみたいな無法地帯の砂漠を舞台に、ゴーゴーガール3人組がもう好き勝手やって、空手チョップだのナイフだのスポーツカーだのでアッサリ人を殺して、それが犯罪的でなくて不思議にもバイオレンスな爽快感を醸し出す・・女版西部劇みたいな印象を持ったの」
「それは言い得ているかも。僕は、女の子とクルマがあれば映画は出来るんだってことを改めて思ったけど、それって男と馬があれば西部劇が出来るってことと同じだ(笑)保安官なき西部劇」
「あとはバイオレンスがどう絡むか・・大抵はお金がらみ」
「それで材料は揃うよね。あとは撮るだけ。陰謀があっちゃダメなんだよ、頭使うとバイオレンスにならない(笑)」
「66年というせいもあるかもしれないけど、ドラッグの感覚が正面きって出されていないってこと、これは意外だった」
「むしろこの映画自体がトリップしてるっていうかなあ、善悪の見境いナシってのはもちろん、男が女にチョップを食らうとか・・ストーリー全体も、直線的で、前後の因果関係に希薄で、出来事は起こっては起こりっぱなしで、不愉快な夢みたいな感覚」
「その感覚はねぇ、例えばフル回転して砂地にメリ込んでいくタイヤのアップとか、轟音唸らせて通過する列車のショットとか、演出の隅々にまで行き届いてるって感じね」
「もともと僕にとってラス・メイヤー監督はポルノまがいのオッパイ映画監督っていうイメージで、大昔、それはそれはよく見させてもらった(笑)。<淫獣アニマル>は<スーパーヴィクセン>のことだし<チェリー、ハリー&ラクウェル>は<エキサイトsex>とかいう邦題だった。でもこの映画はちょっとどころか大分違っていて、まあ中身はともかくだよ、セリフ回しやアングルの取り方が最高にカッコイイ
「セリフはそう思った、とにかくセンスが違う・・中身はともかく、よ(笑)。全編、姉御タンカの切りっぱなし。小気味イイ。映像は、どのシーンも予告編とかスチルになりそうなくらいカッチリとハマっていて、だからかなあ、意外にもスピード感みたいなものは感じられなかったけど」
「まあね、カーレースの場面にしても風向きと髪の毛の流れ方が違ったりとか、些細な不満はあって、まあ適当に作ったなってところは否めないけど、Tサターナたちの撮り方はこれもう全部スタイルブックみたいでね、要するに観客はそこを求めてる、巨乳見たさに来てるってことを悪びれずに打ち出してる」
「そう、登場人物がみんな悪びれてない(笑)みんなキ○ガイっぽい」
「であればこそ、僕としちゃ、あの結末じゃなくて・・トゥーラが大金をせしめてタカ笑いしながらハイウェイをぶっ飛ばして行って終わり〜キマったね!って感じで終わってほしかったなあ」
「あのカカカッていう笑い声は、もう歌舞伎的な味わいよね(笑)絵に描いたような、悪役の様式美!」
「そこまで言う?(笑)でもホントだね。この映画は相当に安く出来てるはずだけど、それだけにチープさを様式的なアングルとかキャラとか、芝居がかったセリフ回しでカバーしてる。スタイルがある。そこに他のポルノにはない、今見ても古くさくならない何かがあるね」
(1999.8.28)thanks>tura


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