「フェリーニのローマ」1972年イタリア

Fフェッリーニ監督 ピーターゴンザレス アンナマニャーニ

「ローマに関するフェッリーニならではの魔術的自伝的ドキュメンタリーね」
「僕は先祖がイタリア人だったせいか(笑)凄く郷愁を誘うんだけど・・まずは魔術の方について」
「最初の方の高速道路の交通事故、あれセットなんですってね、現実以上にすっごいリアル」
「そういうところがフェッリーニ魔術と言えるよね。現実を煮詰めに煮詰めた濃厚さはやがて幻想に変貌していく、そのダイナミックな迫力。一方それを逆手にとった感じなのが地下鉄工事で遺跡を発掘するシーン。外気に触れてサアアッて壁画が消えていく、ああいうウソの上塗り的なケレン味がまた泣かせるんだよなあ(笑)」
「描かれたどのエピソードをとっても煮詰まり感があって、映画館での喧嘩とかカトリックのファッションショーとかには臨場感とは違う密度の濃さが圧倒的」
「だからラストで暴走族が遺跡の間をぐるぐる巡るシーンには一種のフワッとした開放感というか爽快感があって、忘れられない幕切れとなる」
「あのラストはスゴイわねぇ、それにホントにすばらしいと思ったのはああいう暴走族と遺跡という取り合わせ、その発想もさることながら、ローマという街の全てゴッタ煮になった肉汁の活力というのかしら、街自体が持つエネルギーをふんだんに体験させてくれることね」
「肉汁の活力とはまた言い得て妙だな(笑)ま、通り一遍のテレビの観光案内番組とかとは本質的に、全然次元が違うわけだよ」
「それが<フェリーニのローマ>たる所以ね。実際のローマでない、それ以上に主観的なエッセンスを描いた虚構ね。一部には自伝的な要素、つまりフェッリーニがローマに出てきた時のことが回想シーンみたく描かれてる」
「しかしフェッリーニ役の役者は痩せてる(笑)それはともかく、ローマ人の食欲、あの夕涼みがてら路上のリストランテでメシを食う様子はなんとも胃弱の人には勧められない(笑)」
「あれが正しいスパゲッティの食べ方ね(笑)」
「回想といえば後年の<インテルビスタ>でさりげなくこの映画のテーマ音楽も挿入されていて僕はハッとした覚えがある。<甘い生活>の映写シーンよりも、なんか胸を打たれた気がしたんだな、<フェリーニのローマ>はフェッリーニだからこその作品で、他の監督は想像つかないし、またある特定の都市と結びつく映画監督というのも想像つかないな」
「国葬にされた映画監督というのが彼以外に想像つかないのと同じよね・・けれど難を言えば、というかまあこれは見る側の責任もあるんだろうけど、ちょっと長いっていうかな・・退屈じゃないんだけど見続けて疲れるみたいなことはあったよー」
「緊張感は、あるよね、その凝縮・煮詰まりという意味で。僕は逆に、そうした緊張感がストーリーとかテーマとかからでなく映像そのものから伝わってくることが快感だった、<サテリコン>の時と同じトリップ感に酔っちゃった」
「ともあれローマという都市も、この映画も、人間が作り上げた怪物的なシロモノだなあって気がするのね、そこにゲップが出るか魅入られるか」
「今すぐ行きたくなっちゃうねーローマ」
「それじゃ続いてPグリーナウェイ監督の<建築家の腹>に行きましょうよ」(1998.8.23)

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