「フェリーニのアマルコルド」1974年イタリア・フランス


フェデリコ・フェッリーニ監督 マガリ・ノエル アルマンド・ブランチャ

これはフェッリーニの最高傑作、というだけでもう十分!」
「とはいうものの・・この映画に描かれた30年代のイタリア地方都市の抒情味はまた格別だね。なんか、なつかしいなあ〜〜」
「狩刈くんのご先祖はイタリア人だったんだっけ?(笑)フェッリーニ監督ともなると、どれもこれも偉大な作品、て感じで見てそれなりに感激しちゃうんだけれど、なかでもこの作品は自伝的なノスタルジーを屋台骨にしてる分だけ、とても素直で、しかも一筋縄ではいかないの」
「前作の<ローマ>も自伝的ではあったんだけれど、今回は、<ローマ>の最初にチラッと出てきたリミニの中学生時代の回想を、幼なじみのティッタの家を舞台にして120分間も描いてみせたんだね。数々のエピソードのなかでも、最初のあたりの、悪さばかりしてる学校生活なんてもうゲラゲラもの」
「あとはファシズムをノスタルジックに揶揄してる場面とかも印象的ね」
「そう。ファシズムは実際、大きな期待をもって迎えられていた・・無論ドゥーチェ個人の魅力、セックスアピールに負うところも大きかったんだけれど」
「<ムッソリーニとお茶を>でもそのあたりの魅力っていうか幻惑が題材になっていたよね」
「ムッソリーニという人は、実際、映画的な人物だよ、その劇的な生涯はもとより、顔が(笑)」
「この映画にも出てくる巨大な頭とか(笑)・・でもティッタのお父さんがファシストたちにヒマシ油を飲まされるシーンだけ、トーンが違うの。抗議っていうか、慚愧の念、みたいなものも届く」
「まったく、セットといい語り口といい、カメラワークといい、いったいどうしてこういう映画が撮れるんだろう、とばかり感心しちゃうんだけれど、特にこの作品にはどこか枯れた味わいがあるっていうかな・・<81/2>のようなキワモノ的なまでの離れ業でもなければ<ローマ>のようなケレン味とアイロニーたっぷりでもない、比較的、順当にエピソードが綴られていく持ち味があって・・色彩感覚も比較的地味で、とにかく淡々としてる
「リミニの街の春の到来から一年間を描いたのね・・秋口になって悪ガキたちがグランドホテルのテラスでそれぞれにダンスを踊るシーンなんて、さりげないのに周到で、とってもいいよ」
「こういうの見ると中学生ってのはセックスしか頭の中にないみたいだよね(笑)ま、その通りなんだけどさ(爆)」
「あとは豪華客船レックス号が通り過ぎていく、あのヘタウマ的な書き割りの魅力・・後年の<そして船は行く>みたいな」
「ゲイリー・クーパーとかは出てきたけれど、意外にも、というべきか、フェッリーニの映画そのものに対する郷愁みたいなものは、あんまり描かれていないんだよね。映画少年じゃなかったのかな・・サーカス少年だったとはよく聞くけれど、彼はウソが多いから。むしろ女、女、女!・・マガリ・ノエル扮するグラディスカという街のマドンナがまたコケットリーで良かったなあ」
「彼女は<甘い生活>にも出てたよね・・・この映画に限らず、マストロヤンニが登場しないフェッリーニ映画の方が、実はわたし、好きなの。マストロヤンニ映画を見すぎてるせいか、彼が登場すると、どうもねぇ(笑)・・」
「彼の芸風には普遍的なものがあるからね、それをあえてワンパターンとは言わないけどさ(笑)、なにをやってもマストロヤンニ映画になっちゃうし・・でもそれが実は<甘い生活>や<81/2>で培われてきたわけだから、結局彼はフェッリーニの分身として考えればいいんじゃないかな」
「今回の映画がほとんど無名の俳優ばかりで出来てるというのも、市井の人々の過ごすリミニの四季、って感じで良かったと思うの・・とても地味なんだけれど滋味がある(笑)」
「なにごとかを語ろう、だなんてしていないんだよね・・そのへんが例えば雄弁で情緒におもねるトルナトーレ監督なんかと比べると、修行と迫力の違いが歴然と分かる。そういう意味では、もしもこの作品にもサラギーナとかアサニシマサみたいなモチーフが出てきていたら、ちょっといただけなかったかも。出てこないでよかったー」
「自伝、という意味ではもっと好き勝手にウソ八百を並べ立てて幻想的なモチーフを膨らませてみせることも出来たでしょうけれど、実際は意表をつくようなイメージは以前より鳴りを潜めて、特段の大事件が起こるわけでもなくて・・オカしな叔父さんが木に登ったっキリ降りてこない、なんて素朴な田舎の事件ばかりが続く」
「だから見てるうちに気持ちよくなっちゃって・・それで寝ちゃうんだよね(笑)。で、この映画以降、フェッリーニはなんか、そうした気持ちの良さを追い求めながら、ちょっとずつ失敗していったような感じがする・・実はこの作品は素朴な見かけとは裏腹に、すごい神業めいたところで何かが語られているような気が僕にはするんだけれども、うまく言えない」
「それ、同感なんだ。なんでもないことばかりなのに見ていて面白いからこそ、派手な<81/2>や<甘い生活>より、この作品が最高傑作だと思ってるの」(2001.4.23)


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