「フェイスレス」1988年フランス・スペイン


ジェス・フランコ監督 ヘルムート・バーガー キャロライン・マンロー ステファーヌ・オードラン テリー・サバラス

「フランス映画のフランコ映画なんだね。それってなんか面白くない? フランス映画のフランコ映画・・フランコ映画のフランス映画・・ほら?」
「ヘンなとこで感心しないでよ。それよりこの超豪華出演者の顔ぶれを見たかい?」
「ルードヴィッヒ狂王にしてナチス親衛隊幹部にして妖しきドリアングレイにしてブルジョワ家庭の御曹司にしてハイジャック犯人にして・・ええと、あとなんだったっけ?」
「要するに全配役にわたって美青年を演じ続けてきたヘルムート・バーガー・キング!
「キングは余計。字余り・・(笑)。前回作品<ザ・サディスト>のこじつけキングのオチがここにあったなんて、誰も気がつかないよ(爆)」
「まあまあ・・とにかく、バーガーキング久々の主演作なんですよ、これ」
「それからクロード・シャブロル監督夫人のSオードランね・・更には女奴隷女優決定版と言われる熱気ムンムン香しきCマンローと、刑事コジャック・テリーサラバス!
「サ・バ・ラ・ス!」
「で、実はまだまだいる・・ロバート・ミッチャムの息子、クリストファー・ミッチャム!」
「知らないなあ〜〜」
「<ベルリン忠臣蔵>にも登場したアントン・ディフリング!」
「ううーん、思い出せない・・」
「まだまだいます。なんとあのラドリー・メッツガー監督作品のSMポルノ映画<イマージュ>にも出ていたブリジット・ラエ!
「えっ!!!!!」
「驚いたか?(笑)ははは・・実は僕、彼女が<イマージュ>に出てたって知らなくてさ、それで慌ててお宝箱のなかから不朽の名作<イマージュ>のビデオを出してきて、ばあ〜っと早送りで見てみた・・」
「あれは確か主演マリー・メンダムがほとんど出ずっぱりで、ホカにめぼしい女優さん、出てたっけ?どこに出てた?」
「それが、わからんかった(笑)。多分、最初の夜会の場面に紛れていたんじゃないかなあ・・マリー・メンダム以外に登場するめぼしい女優さんというと、クレール役のオバさん以外は『試着室』のシーンの売り子嬢でしょ・・」
「ああ、イキなりジャン君のイチモツをぱっくりしちゃう可愛いブティック店員さんだよね」
「そうそう・・でも明らかに彼女はブリジット・ラーエとは違う」
「ちょっと丸ポチャだったもんね、あの売り子さんは」
「よっく覚えてるねぇ、感心感心・・」
「だってナニを隠そう、僕だって大の<イマージュ>ファンだもの。自慢じゃないが大昔、劇場で見たこともあるしさ」
「すごいねぇ・・でも僕の無修正コレクションにはかなわないでしょ」
「画質最低だけど・・あれ、非合法ビデオ?」
「あー・・まーね。今だから白状するけど、実は以前、おヨソのサイトで<イマージュ>が話題になったことがあって、僕はご親切にもこのビデオをダビングしてサイトの管理者様に贈ってあげようかな〜〜〜な〜んて思ったこともあってね。でも、そこの管理者様は人妻様でもあって、さすがの僕もまさか無修正ポルノをおヨソの人妻様にプレゼントするには、タメらいとハジらいがあった(笑)」
「あはは、まあ、気持ちは分かります・・<イマージュ>は日活でも<鞭とバラ>とかいうタイトルで製作されていて、ポルノにしてはなかなか美しい作品で、Rメッツガー入魂の会心作だったっけ」
「何と言っても主演のマリー・メンダムちゃんね。脱色ブロンドの彼女が、いかにもオドオドして、そのくせフテブテしくて、まあなんというか原作では幻想的で孤高の存在だったアンヌというキャラクターをあますところなくリアルに演じきっていたところが最高でした・・」
「オシッコもあますところなくリアル・・」
「そのうえ原作にはない、映画ならではのイメージインサートも良かったよね。・・有名なオシッコシーンのあとで、ジャンはエッフェル塔の脇に自動車を止めて、そのシーンを反芻するように回想する・・するとあたり一面、突然に大噴水が『しゃーーーーーっ』と湧き起こる(笑)」
「屹立するコンコルド広場のオベリスクなんか、まさしくダンコン以外のナニものでもない、っていう演出で、確かに僕も、パリって街はなんてエロティックなシンボルだらけなんだろーなーって、感心することしきり、だったっけ」
「あ〜〜パリに行きたいなあ〜〜」
「イキたいねぇ・・よし!パリに行くぞ」

***intermission***

「ところで、ここはメッツガー・セレクシォンじゃないんだけれども」
「ブリジット・ラエから話は<イマージュ>になって、ついついそのまま走っちゃった。ところでブリジット・ラエは、ジャンジャック・ベネックス監督の<ディーバ>にも登場していて、そこでは確か、死体の役・・だったかなあ」
「ねえねえ、どうしてそのブリジット嬢にこだわってるわけ?」
「特に理由はないけど(笑)この映画のエモーションの面では実は彼女が一番濃い演技をしていたわけで・・じゃ次に行くとするか・・なんだっけ? ああ、まだ出演者の話だった。そのホカに、この映画に登場するスターとしちゃ、ハワード・ヴェルノン!」
「やれやれ!ま、彼はフランコ映画の重鎮だからね」
意外なところでリナ・ロメイ!
「またですかい? まさかまたブーツはいてるだけの全裸出演じゃないでしょね?」
「いんやー残念ながら・・ちゃんと服を着てます、ってこれ88年の作品で、ということはリナちゃんはまだ30代半ばなんだけど、今回はずいぶん老け役メイクでちらりとカメオ出演」
「カメオっていうのかねぇ・・身内なのに」
「そんじゃ最後はビシッと驚いてね・・なんとあの!フローレンス・ゲランが実名出演だ!
「フローレンス・ゲランといえば、確か<レディ・ドール>シリーズとかのソフトポルノ女優だったっけ。ジェニファーコネリーをエロっぽくしたような・・あんまり驚けないけど、彼女はまあ80年代にはソコソコには売れてたよね」
「熟れてた(笑)」
「ま、いいや・・で出演者は以上のように気が狂ったくらい超豪華で、主演はヘルムート・バーガーキングだったなんて、もうとっくの昔に忘れちゃったんだけれども(笑)要するにこれ、ジェス・フランコ監督の最高傑作じゃないですか」
「でしょ? ま、贔屓目に見ても数多くの最高傑作の一つ、としておこうか(笑)。そうなんです・・いきなり、作り方が違ってる」
「違う違う・・これまでダラダラ見てきた70年代作品、数少ない傑作のなかでもその90%は愚作で残りの97%は駄作で占めていたフランコ芸術とはウンデーの差!すごい!すごく面白い!つまりマトモな映画!
「ホメ方にトゲがあるように思うんですけれど・・」
「いや、ちょっと興奮しちゃってね・・どうしてこんなに違うんだ?!」
「それはですねぇ・・フランコ監督が開眼したわけですよ
「どうして開眼しちゃったの?だって、これまで100本以上もの映画を撮ってたのに? 今さら開眼しないでよ」
「そう言われると不思議だな・・っていうか、まず80年代の映画事情を思い出してよ。ビデオデッキの普及によって、とにかく大量に生産されたのがエログロホラー作品。映画館にかからなくたって映画は映画として流通したし、それを金儲けの手づるとしたプロダクションの多かったこと!つまりようやくフランコ時代の黄金期が来たわけだね」
「うーん・・ちょっとそれには異論があるなあ・・僕としちゃやっぱ愚作の森、70年代が黄金期のような気がする」
「分かります分かります・・孤高のフランコ芸術としては多分、仰るとおりなんだろうね〜〜でも80年代になってのフランコ御大は<ブラディ・ムーン>とかもそうだけど、とにかく良質で面白い。しかも安請け合いして一年間に5本も6本も撮るようになったのも80年代・・という意味では、どっちかというとピカピカしたホラー色を強めながらコマーシャリズムに迎合しつつおのれの福音を全世界に安売りしていった80年代は、御大の黄金期と呼べるわけなんですよ」
「はあ・・・・そんなものかなぁ。でも大量生産したわりに品質本位ってゆうのは、すごいことだねぇ」
「しかも今回の<フェイスレス>は62年作品<美女の皮を剥ぐ男>の自作リメイクでもあってね〜まさしくフランコ御大入魂の会心作!」
「まあ、<顔のない眼>に代表されるように、美女の顔面移植ってモチーフは、なかなかにソソるものがある、心ある大人にとって永遠のファンタジーモチーフだしね」
「そのとおり!ohoh!」
「急にohoh!って横文字で、なんだよ?(笑)」
「あ、いま気がついたんだけど、キーボードで『ワクワク!』って叩くと『ohoh!』になるって、知ってた?万国共通なんだね〜」
「(笑)で、なかなか映画の話になっていかないね。今回は長いね」
「まだまだ続きます。今のうちに電話を切っておいた方がいいですよ(笑)」
「最近はみんな、つなぎっぱなしなの(笑)ブロードバンド時代だからね〜」

***intermission***

「で、ようやく映画の話だけれども、この作品は実にマトモな展開で登場人物も多く人間関係も複雑・・つまりちゃんとしたテクスチュアがある込み入った作品。それに巷にもビデオソフトが出回ってるからご覧になる機会も多いはず・・なので、今回は趣向を変えて一挙にネタバレ路線で行こう!」
「いつもとオンナジじゃんか・・要するにこれ、整形外科の天才バーガー医師が、ぐっぢゃぐぢゃになった妹の美貌を取り戻そうとして奔走する、兄妹愛の物語、といっていいのかな?」
「その通り。なぜ妹の顔がぐっぢゃぐぢゃになったかというと、兄バーガー医師の患者が、手術の失敗の腹いせに、硫酸をぶちまける・・」
「兄バーガー医師としちゃ、なんとしてでも妹を救ってやりたい・・そこで、美貌のアメリカ人モデル・バーバラを誘拐するようブロンド助手に命じる。このアメリカ人モデルがキャロライン・マンローで、彼女を誘拐するブロンド助手がブリジット・ラーエだね」
「忽然とCマンローが失踪しちゃったものだからニューヨークにいる彼女のパパが私立探偵を雇ってパリに行かせる。このパパがテリー・サバラスで私立探偵がCミッチャム」
テリーサバラスとCマンローの父娘関係ってのは、なんかすごく濃いよ。濃すぎる(笑)」
「一方、バーガー医師の病院には謎の勇敢マダム、Sオードラン夫人が入院していて、彼女はバーガー医師が自分の病院でやっている違法の美容整形の実態を知り尽くしていて、なんとバーガー医師を脅迫しようとする・・なんで脅迫するのか不明」
「このあたり、ちょっと危ういよね(笑)70年代のご都合原理主義の名残みたいでさ・・いったいどうしてオードラン夫人はバーガー医師を脅迫しようとするの? ナニが目的? まさかフランコ映画に正義感が出てくるわけないし、そのへんの因果関係がサッパリなんだ」
「彼女は案の定、早々に殺される・・そのコロされ方たるや・・くくくっ(笑)ナイショ」
「要するに彼女は映画前半のサスペンスを支えていたんだね・・バーガー医師が窮地に立たされハラハラ!ohoh!の展開となるためだけに登場していたわけで、これはフランコ御大ならではの、ドラマツルギー第二、ツジツマ合わせ第一、の映画作りに非常に貢献したと言えましょう・・」
「一方、ニューヨークからやって来た私立探偵は行方不明となったCモンローを捜索するためパリ警察の死体置き場にやって来る。ここいらのセリフ回しも実に気が利いていて、僕、耳を疑った・・」
「パリ警察は、このウサン臭い私立探偵に向かって『なんだ、お前はボギー気取りか?』と言う。すると私立探偵は『なにを、このクルーゾー警部め』と切り返す。普通の映画なら、ありがちなセリフ。でもフランコ映画にしては出来すぎの絶妙なギャグセンスで、僕、もうオカしくってオカしくってハラワタが千切れて飛び出すかと思っちゃった」
「そんなに可笑しくなかったよ」
「・・えー、続いて、バーガー医師の苦悩の場面。実は妹の症状が重すぎて、自分では手術できない・・バーガー医師、深く悩みます。彼、ナチスの軍服も素敵だけど、白衣姿もビシッとしていて、ああ、タメイキ・・僕なんか、是が非でも診察してもらいよん
泌尿器科とかでね(爆)
「(爆)いや・・(笑)とにかく・・さすがのヘルムート・バーガーももう40過ぎで、シブくなっていてね。なのに美貌は衰えるどころか、いよいよ深みを増して年輪冴え渡る・・」
「深く悩んだ末に、ドクターオルロフなる、その道の天才に助けを求めるんだね。で、実はこのドクターオルロフってのは元ネタ<美女の皮を剥ぐ男>の主人公だったから、念が入った話だ」
「実はフランコ御大はその他の映画にもこのドクターオルロフを主人公にしてる・・ってんで、もしかしたらこのオルロフ博士ってのはフランコ御大の化身なのかもしんないねぇ。しかも演じてるのは化身中の化身ハワード・ヴェルノンなんだし」
「かもね。フランコ御大は若い頃には、くっだらないゲテモノ小説を書いていたっていうから、ひょっとしたらその頃からの主人公格なのかもしれないし・・よく分からんけどさ。で、このオルロフ博士も顔面移植手術はもう何年もやってない、とバーガー医師に答える。『私の最後の作品、永遠の美、それは私の妻なのだ・・・・』で、その妻がなんとあなた、リナ・ロメイですよ、フランコ御大の生涯のパートナー」
「僕ねぇ、あの場面にはもうジィ〜〜〜ンと来た。フランコ御大にしてからが伴侶にしてミューズたるリナ・ロメイの若き美貌とプルルンおっぱいとひらひらヘアーを彼の映画作品のなかで永遠に、僕ら人類の歴史に刻みつけた・・なのにここでまた、妻の美貌を永遠に残すという究極のモチーフをわざわざとりあげて無二の旧友Hヴェルノンに言わせる、このロマンチックな夫婦愛には、僕、もう感動して感動して目玉が飛び出すくらいに泣けちゃったよ」
「そんなに感動しなかったよ」
「・・えー、続いてこのオルロフ博士は、この手術をやり遂げられるのは元ナチスの人体実験研究者、カール・モーザ博士しかいない!とバーガー医師に紹介するんだね」
「このモーザ博士が名優アントン・ディフリング」
「知らんなー・・ところで誘拐されて監禁されてるCモンローはどうなったの?」
「彼女は誘拐されたまま、実はバーガー病院の地下室で意味不明に悶え苦しんでる(笑)」
「これも往年のフランコワールドの再現でしょ。病院で半裸美女がパンツをチラチラ見せながら悶え苦しむ・・それを扉の小窓からノゾキ見てるのがバーガー医師の助手の手下でゴードンとかいう不気味な男。またしてもノゾキ!
「でムラムラ来ちゃったゴードン君はCモンローを暴行して大事なお顔に傷を作っちゃったからサァ大変。ブロンド助手が怒る怒る・・その結果、ブロンド助手はぐっちゃぐぢゃ顔の妹をニワカ女王様に仕立てて、このゴードン君はマゾ奴隷の憂き目に(笑)ははは、なんでもあり、だ!」
「しかもその様子をバーガー医師とブロンド助手が監視カメラのモニター映像でノゾキ!すばらしいよね、よくもこう波状攻撃でフランコワールドの神髄を次々とご開陳してくれたもんだよ」
「やっぱ開眼ですよ、開眼」
「ノゾキ眼で開眼!」
「要するにこの作品に限らずフランコ映画の多くは、変奏曲形式で出来てるわけ。その他の多くの監督が、まあソナタ形式で展開していくのに対して、フランコ作品の多くは同じテーマを次々と変奏する・・つまりそのテーマというのが、ハダカの女とノゾキ、というわけなんだね」
「たまには難しいこと言うね(笑)。いや、難しくないか・・で、暴行されちゃったCモンローの顔はもう使い物にならない。手術の天才モーザ博士もやって来て『こいつはダメ』とくる。どうする? ってんでバーガー医師はブロンド助手に、次なる女を誘拐して来いと命じる」
「次なる女はパリの歌舞伎町でクダ巻いてる娼婦のメリッサ。メリッサは昔バーガー医師が手がけた整形美人でブロンド助手とも旧知の仲。そこで今度はメリッサとブロンド助手ブリジットとが軽いタッチのレズプレイ。それをまたしてもモニターテレビでグッと見入るバーガー医師・・」
「変奏曲がセレナーデに変わってまいります・・」
「この映画全編を通じてバーガーキング医師は笑わない。スマイル0円のチェーン店とは大違いの貫禄だよ・・と。こんな調子でやってたらいつまでたっても終わらないよ。いよいよ手術とあいなりましてモーザ博士はこのメリッサちゃんの顔を剥ぎにかかるんだけど、なんと失敗! 麻酔薬が多すぎた、ホントは麻酔は打たないで恐怖に引きつったままの顔こそ、お肌にハリがあって良いのだ〜〜なあんて、もっともらしいことを言うのがオカシイ。とにかく手術は失敗。メリッサちゃんのおデコあたりの皮がビロ〜ンと剥がれてドス黒い血がジワワ〜ンと出てくるなんざ見てると、僕なんか何故かアンコウ鍋が食べたくなっちゃってね」
「最後のウドンがいいよね・・で、またしてもまたしても次なる女をさらって来なきゃ・・ってんでバーガー医師は悩みます」
「こうやってあらためて考えると、この傑作もやっぱりいつものフランコ映画同様、同じ展開の繰り返しなんだね・・」
「だーかーら、それが変奏曲形式ってことなの! とにかく悩めるバーガー医師の姿を見てブロンド助手はムラムラッと嫉妬する。『あたしがこんなに尽くしているのに、あなたが考えてるのは妹のことばかり!あたしはナンなの?』このあたりの細やかなメンタリティの演出も、開眼、開眼!」
「そうなんだ。しかもモーザ博士がこのブロンド助手にちょっと言い寄ろうとしたりして、もう展開がつかめない。すごい攪乱作戦でハラハラ!ohoh!エモーションが濃いんですよ」
「で、次なる三人目の獲物に選ばれたのが実名登場の女優フローレンス・ゲラン。もうこのあたりの反復展開は、さすがに食傷気味で(笑)、僕、もう飽きてきて飽きてきてゲップが出ちゃうかと思ったよ」
「確かに飽きてきた・・しかも眠い。ふぁぁあああ! でも眼がつぶれない」
「なにしろ開眼だし」
いや、こうやって一人で喋ってるのに飽きてきたんだよ(笑)

***intermission***

「ところで、この映画はテーマ音楽もシャレた歌でね・・バニー・マリロウかな」
「バリー・マリロウ!」
「えっ? バリー・マニロウだったっけ?」
「どっちでもいいけど、僕はジョージ・マイケルかな?とか思っちゃった」
「全然違うな(笑)ま、とにかくアダルトなオリエンテッドでね・・それからさっきは割愛しちゃったけど、Cモンローのマネージャーがおバカなおカマだってのも『おフランス流』で面白い。おバカマ(笑)」
「そうそう。さっきはついバーガー医師と顔面移植の方に話がかたよっちゃったけど、ストーリーは同時進行で私立探偵の活躍も描いていた・・私立探偵とおカマネージャーとの対決場面もなかなか笑えた・・」
笑いを取りつつ、しっかりストーリー展開のキーポイントをネジ込んでいる演出の冴え渡りは見事だったね。つまり私立探偵は、誘拐された時にCモンローが身につけていたという、宝石ビカビカの高級時計の写真を手に入れる。手がかりを得て、次第に私立探偵はバーガー病院に接近していくってわけだ・・探偵はパリの歌舞伎町を訪れて、最近、行方不明になったメリッサという娼婦のことを訊ねたりする」
「そして第二の手がかりは、Cモンロー名義のクレジットカードがバーガー病院のある街で使用されたという点で、本当はこのカード、例のブロンド助手がCモンローから脅し取って、それで使ったんだね。で、このカード情報を得て、私立探偵はついにバーガー病院にやって来る・・」
探偵がさ、バーガー病院までやって来るのに、ちゃんと捜査らしき捜査をして、証拠らしき証拠を揃えて、それで満を持してやってくるんだよね・・この緻密な展開はすごい
「どういうわけだろうね。昔のフランコ映画ならナンの脈絡もなく次の場面で病院の前に探偵が立っていて、次の場面ではもう、なかをノゾキ見してたものだけれど」
「とにかく今回に限ってはあらゆる細部でサスペンスを盛り上げていたね・・御大の手腕ですよ」
「サスペンスといえば、途中、顔面ぐずぐずの妹が『男がほしい』とか言い出して、またしても献身的なブロンド助手がパリの街なかから男を拾ってくる。妹は仮面を付けて男をベッドで待つ。このあたり、美男と野獣、てな雰囲気もあったりして、とにかく目が離せない・・一瞬たりとも目を離すと、ワケが分からなくなる」
「どういうわけだろうね。昔のフランコ映画なら、一心不乱に見ていたばっかりにワケが分からなくなったものだけれど
「とにかくこの仮面つき妹と街の男とのシーンはいい。細部はナイショ(笑)」

***intermission***

「さて、そろそろ映画は最終コーナーを回ってくる・・のに、まだハナの差でバーガー医師とCマンローと私立探偵は勝ったり負けたりのデッドヒート」
「うっかり助かりそうになったり、また捕まったり・・」
「殺したり殺されたり」
「生き返ったり(笑)」
「まあ、小さいどんでん返しがいくつも出てくる最終コーナーはこれからビデオを見る人のためにとっておくとして、ラストはなんとテリー・サバラスの大写しで終わるんだね」
「全然一件落着しないままにラストになって、ニューヨークのTサバラスのところに私立探偵から電話が入っていて、ガゼン、Tサバラスは『パリに行くぞ!』とね」
「きっとエッフェル塔の下で噴水が『しゃーーーーーーっ』する場面に立ちたくなったんだね(笑)」
「それは違う映画。でもこの映画もラストだけ見ると、『お次は<刑事コジャック>で見てね』と言わんばかりの締めくくりで実に心憎い。こんな余韻の持たせ方って、なかなかないですよ・・」
「わー喋りたくなっちゃうな。バーガー医師、ブロンド助手、Cマンロー、そして私立探偵は、いったいどーなっちゃうんでしょーか?」
「うふふふふ。ナイショ。ところで僕が実に感心したのは、例の助手の手下、不気味なゴードン君が病院の受付嬢を殺す場面でありまして・・」
「ちっともナイショじゃないじゃんか!あの受付嬢、カワユくて好きだったのに!」
「まあまあ・・ゴードン君はロッカーに缶詰になった受付嬢を電気ドリルでギリギリギリ〜、って、風通しよくしてあげる」
「確かにあのバーガー病院は朝令昼改に上意下未達で、風通しの悪い職場だったしね」
「いや・・で、その時のゴードン君がね、ドリルの刃をあれこれ比べてね、短いのと長いのを取り替えたりして、要するに気を持たせる・・あの『間』の取り方なんかは、実はさすがのフランコ御大もトビー・フーパー監督とかの作品をよ〜く研究したんじゃないかな、っていう、そういうセンスだと思ったんだよね」
「ただ殺すだけじゃ、映画にならない、殺す『間』の取り方が映画だ、と言ったのは確かゴダールだ」
「えっ?? そう?ほんと?」
「でなきゃジョン・ウォーターズかな?」
「なんで?(笑)あ、わかった、ジョン=リュック・ウォーターズ?不自由な名前だな(笑)・・ま、そういうことなんだけれど、その『間』の取り方に応じて、ホラーとブラックユーモアが介在する、そのサジ加減は80年代のエログロホラー映画がこぞって競った、一種のミメーシスとさえ言えるわけだよ」
「またまた難しいことを言い出したりして・・でも確かにそうかもね。ナイフ、ピストルといった道具から、チェンソー、ドリル、キャタピラー、挽き肉機、タンクローリー、ゴミ収集車・・と、いろいろ殺人道具のハナが開いた80年代ホラーの殺人シーンで面白いのは、とにかく殺すまで、死ぬまでに時間がかかるってことだ」
「昔はね、そこんところをワザとスローモーションにして見せたりした・・あるいはカット繋ぎで長くした。<サイコ>みたく。でも80年代ホラーは、『間』を取った。そのサジ加減が、要するに非常に新鮮で、魅力的で、観客はシビれ興奮したんだよ。血飛沫ドバドバビュ〜〜っていうのはね、あれもひとつの『間』の取り方のバリエーションにすぎない・・」
「・・なんつうか、急に80年代ホラー映画の真実に迫る展開で、意外や意外!けっこうマトモな批評対談になってきたじゃないの(笑)」
「(笑)大体、ジェス・フランコ・セレクシォンをやりだすと、長いんだよね。間伏女史なんかだと、ズバリ!と切り捨てちゃうところを、僕なんか後生大事にお宝箱に詰め込んで置きたいタイプだしさ」
赤身の中落ちって、案外おいしいんだよ
「ハシの先でつついたり、ペロペロしゃぶったりね」
「洗濯バサミで挟んだり、注射バリ刺したり(笑)」
「とにかくまあ、誰も読みゃしないから、こうまでダラダラやれるっていうのは、こりゃ幸せなことじゃないですか!」
「うふふふ。で、幸せついでに次回のフランコ・セレクシォンはまたしても愚作の森70年代初頭に舞い戻りま〜〜す!来週もまた、見てくださいね〜〜」
「はあ・・バカみたく長かった」
(2002.1.9)



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