「エクソシスト」1973年アメリカ



ウィリアム・フリードキン監督エレン・バースティン マックス・フォン・シドー

「近年の<エンド・オブ・デイズ>とかを見ると、最近は悪魔もスマートになったもんだねぇって気がするんだけど・・。この作品は、今、見返してみるともう、懐かしいっていうかな、郷愁の彼方から僕に向かって手を振ってくれてるって感じだ」
「怖かった。初めて見た時はわたし、もう怖くて怖くてねぇキモチ悪いし・・それにまた、この映画にまつわる宣伝とかも旨かったんでしょうけどね。失神者続出!とか(笑)初公開の時は、社会問題(笑)みたいな感じだったのよね」
「少年マンガ雑誌に楳図かずおがマンガ版を書いていて、そっちの方がキモチ悪かったな(笑)・・ともあれ僕、この映画は実に傑作だと思うし、なんていうか、古くさい部分ももちろんあるけど、決して古くならない部分もあると思う」
「なんだか持って回った言い方ね。それで古くさい部分というのは・・・」
「悪魔払いのところだね、やっぱり。で、まあそこはこの映画の白眉だったりする・・という意味で、実はこの映画がもてはやされた頃の驚嘆すべきウリの部分は、なんかもう、ノスタルジックになっちゃった」
「確かにセンセーションを巻き起こした割には今はもう過去の作品で、一部の熱狂的なファン?がいるのかどうかも定かじゃないんだけど・・例えば同じホラー系でもトビー・フーパー監督の<悪魔のいけにえ>みたいに今もって語り継がれてる様子はないしねぇ」
「<悪魔のいけにえ>とは質的に違うホラーなんで、そこを論じると長くなっちゃうけど・・この映画は、ポルターガイストを題材にしてる割には、不思議なことに、と言うべきなのかなあ・・要するにセックスを喚起させるようなメタファがあんまり盛り込まれていないんじゃないかなって気がするんだけど、どう?」
「どう?って、もうちょっと言ってみてよ」
「確かにリーガンは色々と少女にあるまじきファンタジー(笑)を演じてくれるんだけど、この映画は全体に、アドレナリンに訴えかけない、色仕掛けには逃れられない、非常に無機的なイヤな感じがあるんだよ。一言で言うと、嫌悪感がいっぱいなんだけど、それもなんていうか、悪意の塊、みたいな感じでね。全体に世間がすさんでる(笑)」
「確かにエレン・バースティンはかなりナーバスでパラノイアっぽい母親だったり、ダミアン神父は自分自身に絶望して全てに渡って悲観的になっていたり・・わたしは映画の登場人物は、あまり好きになれないのね、共感できない」
「僕もそう思う。登場人物に感情移入してハラハラ、ドキドキという映画じゃないし。で、その嫌悪感は間違いなくこの映画が提示する世界観みたいなものだとも思う。73年という時代がそうだったのかは分からないけれど、非常に、先が暗いというかな、なにかしら深い挫折感・閉塞感めいたものを感じるんだよね」
「それとセックスが喚起されないっていうのは?」
「間接的にも関係あるんじゃないかって思うよ。肉欲的な部分が人間にとって、そんな挫折感をうまく丸め込む糖衣だとすれば、この映画は、そういう夾雑物の一切を殺ぎ落とした無機質なものを敢えて突きつけているような気がしてならないんだよね」
「あるいは、みんなこの映画には乗り気でなかったのかも(笑)なにしろ白い息を撮影するために冷凍庫のなかにセットを作ったとかいう演出をしてるんだから、役者もイヤんなっちゃうよね・・ってそれはともかく、わたしは、この映画が振りまいたトリビアな話題も楽しいのね。ジェーン・フォンダにも母親役のオファーがあったのに断られたとか」
「スタッフが奇怪な死を遂げた、とか? まあそれはゴシップの類だけれど、もうちょっとテーマ的な話を続けさせてよ。要するに、大人たちの無意識的な悪意の交差点に12歳の少女が無作為に選ばれた、という形で、これは悪魔だのオカルトだの云々の題材で驚かせる前に、映画自体の議論をもっと押し広げる可能性があった作品のように思うんだよね。でもそれってホラーのジャンルとは違ってくるしねぇ」
「確かにわたしもリーガンを取り巻く大人たちの内面に、どうにも黒々とした悪意、悪なるもの、否定と拒絶の気持ちみたいなものは感じるの。ただ、それはもともとこの映画が観客を怖がらせるために作られたものだからであって、テーマとか社会的な世界観とかがあったとするのはちょっとどうかなあ」
「・・例えば<タクシー・ドライバー>は76年の作品だけれど、僕としては、ジョディ・フォスターが悪魔つきであってもおかしくないと思うしね。アメリカ的な狂気の悪魔」
「うーん。なんとなく言いたいことが分かるような、ケムに捲かれちゃったような(笑)。でも映画としては、サブリミナル効果とかで、とにかく観客の神経に障るように作ってあって、フリードキン監督は後でキューブリック監督の<シャイニング>をこき下ろしながら『コワい映画ってのはオレの<エクソシスト>みたいな作品を言うんだ』なんて豪語してる。とにかく監督は観客を震え上がらせることだけが念頭にあって、狩刈くんの言うようなテーマ的なもの?は、多分、後知恵って感じがするよ」
「ま、ね。古くならない部分ていうのは、えてして後知恵的な部分だってことは認めざるを得ないんだけどね(笑)」
「ワシントンが舞台のせいか、あんまりアメリカ的な感じもしないし・・」
「唯一、バーの場面で流れていたBGMがオールマンズのランブリング・マンだったこと、あれは非常にアメリカ的だった(笑)」
(2000.9.17)

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