「家族日誌」1963年イタリア・フランス


ヴァレリオ・ズルリーニ監督 マルチェッロ・マストロヤンニ ジャック・ペラン

「なぜかこのコーナーではズルリーニ監督をよく取り上げてるね」
「<鞄を持った女><激しい季節>に続いて3回目。イタリアメロドラマ好きな狩刈くんだけのことはあるよ」
「ええー、でも僕<ひまわり>なんて取り上げてないよ(笑)それはともかく、テレビ放映されて久々に見たこの作品は、なぜか昔に見た時の印象と違ってる・・」
「どんなふうに?」
「僕もトシを喰ったのかなあ・・今回は単なる難病兄弟愛モノって感じにしか見えなかったんだよね。それってちょっとタイクツっていうかな」
「それはまあ、そうなんだけど、細かなところがね、例えば兄マルチェッロが、心から重荷に思いながらも世間知らずでウブな弟ジャックの面倒を見続ける、そういう機微がイタリアの人情味、家族愛を感じさせてくれるの」
「そうなんだ、僕も昔はそんなふうに思って、お涙頂戴以上のドラマがあったと感じたものなんだけどな・・」
「センスが鈍ったんじゃない?(笑)」
「確かに・・けど、そう言われるとミもフタもないなあ」
「物語はというと、兄マルチェッロは難産で生まれた弟のせいで母親を亡くしてしまい、無意識のうちに弟ジャックを恨んでいるのね・・そして弟ジャックは生まれてすぐに里子に出されるんだけれど、その出された先は、あるイギリス人富豪の屋敷に勤める執事のところ。そして弟はなんとなくそこで甘やかされて育てられて、優柔不断で主体性のない人間になっちゃって、今じゃ食べることだけで精一杯の駆け出し新聞記者マルチェッロになにくれとなく頼ろうとするばかり・・」
「そういう兄弟って、いそうだよね。だからもっと色んなドラマが展開する余地はあったはず・・女を巡って対立するとかさ。なのに葛藤が、この映画には不足してる。兄弟の間をとりもつ唯一の理解者が老人ホームに預けられた祖母で、というのもすごくメロドラマ的」
「だからいいんじゃないの(笑)」
「悪いとは言ってないよ(笑)いや、僕はこういう映画がまた好きだ・・でも、全体にこれはこれで、だからなんなんだ?っていうかなあ・・まあ、こういうドラマを見て涙して、それでなんか気が晴れるかというと、全然晴れないしね」
「兄弟愛をじっくりと描いてる、というのはいいと思うの・・それだけで、なんか、じっくり見させて貰った〜って感じ・・っていうか、ジャック・ペランてなかなか♪美しい〜〜」
「全然、兄弟には見えないよね、あの二人は。ところで、美しい〜〜かどうかはべつとして、街並のざらついた、いかにもトスカーナの田舎町だなって感じの人気ない風景は、なにか訴えるものがあった。ズルリーニ監督は、例えば<激しい季節>のリミニの海水浴場とかもそうだけど、街の風景を捉えることに長けていたんだろうね」
「今回のカラー映像は、それはそれは見事だったよね。で一方で、あの耳障りな音楽はちょっとやかましかった・・もっと謐かに、ひたひたと見ていたかったって感じもあったのに」
「ま、こういうのにイタリア人は弱いんだね、見ていて一緒に泣くんだよ、テアトルがしぃ〜〜〜んとしちゃって、誰かが強烈にハナをかんだりして、見終わって皆んな、あー良かった、とか言ってどかどかリストランテに入ってパスタを大量にたいらげる(笑)確かこの作品はヴェネツィア映画祭で受賞してるんだよね」
「まあ思えば、この映画の見どころはまさにイタリア人ならではのヨーロッパ的浪花節の世界で、それはわたしたち日本人のメンタリティととても近いんだなっていう感じ、それが伝わってきた・・」
「マストロヤンニは、ちょっと優等生的に兄貴分を演じていた。Jペランは<鞄を持った女>の時の方がウブさが出ていて良かったと思うなあ・・でも、やっぱりもっと兄弟に葛藤があるべきだったと思うけれどねぇ」
「まあ・・ドラマが弟の難病に向かって収束しちゃうのは、なんかドラマの幅を狭めちゃった感じはあったよね」(2000.11.26)

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