「5時から7時までのクレオ」1962年フランス



アニエスヴァルダ監督 コリンヌマルシャン

「むか〜し見た時は、ただ車でパリ市内をぐるぐる走り回っているだけの映画だと思った」
この映画、とても好きなの、自分は癌にかかったと思いこんだ女の子が、夏至の夕方5時から7時までなにをするか、密着して見せるなかで、女の子の気紛れな気持ちとか感覚的な好みとかを描いたとても瑞々しい作品ね」
「うーん僕としては、もう少し女のコっぽい方が良かったなあ(笑)なんか大柄で堂々とした雰囲気で目尻もキツイし・・夢中になれるタイプではない・・」
「そうかなあ。じゃ、どんな感じがいいの?」
「えー当時だったらフランスギャルとかさシャンタルゴヤとかさ、もっとアイドル歌手っぽい方が」
「まあそれは個人の好みね。わたしはヒロインは気に入ってるの。あまりブリブリぶりっコしてたらタダのドタバタみたくなっちゃうし・・<病院へ行こう>みたいな(笑)」
「あるいはグッと乙女チックにね。それは認める」
「病気だと思いこんで、きっと死ぬんだわ、とか気落ちしているかと思うと、彼女はデビューしたての歌手なんでミュージシャンが来て練習したり、またその歌で難癖をつけたり、そうした気持ちのコロコロ変わるなかで、公園に入っていくじゃない、あそこで音楽が高鳴って、ああ、なんか・・恋の予感!みたいな・・」
「映画の作りとして見ると、これは実に面白い。始まったばかりのヌーヴェルバーグの勢いそのものだよね、ほとんど素人が作ったツギハギ映画なんだけれど、その文体というかスタイル、それがクレオの移り気な気持ちの揺れ動きそのものになってる」
「そうなの。一種のヌーボーロマンというか初期のルクレジオ、大洪水とか調書とかのルクレジオ的なスタイルみたいに、視線の先にあるものが次々と意味をもって来るようなカメラ回しよね」
「奇抜とさえ思える(笑)クレオと友人のモデル嬢が車に乗って走り出すあたりでいつの間にかカメラは隣を伴走して前へ出てきて・・とかね。即興的な一発芸はもの凄く新鮮に思えたよ」
「それと最初に見た時にさ、ほら字幕が出るじゃない、5時13分から5時18分までのクレオ・・とか6時3分から6時218分までのクレオ・・とか。あれは、なんか、単純に驚きだった」
「ああ分かるな、なんかドキュメンタリー風な体裁もあって、テンポもいい。ま、車に乗ってばかりいるのは、ドラマが続かないからだとも思ったけれどね」
ドラマらしいドラマはない、印象と感情だけで進んでいく映画ね
「クレオのところにやってくるミュージシャン、あれはミッシェルルグランその人だね」
「そう!ちょっとサエない感じの若い作曲家って感じで、あの練習のシーンはとっても好きなの! でたらめにピアノを叩いていつの間にかシャンソンになってる、ああいうちょこっとした芸が、とてもお洒落に感じる」
「一方、途中の劇中劇みたいなコマ落としのサイレントコメディでカンカン帽を被っているのはJLゴダールその人だって。まあ・・・笑っちゃうけど」
「キートンについて私が知ってる二三の事柄、という感じね」
「顔はキートンだけど帽子はロイド(笑)まあいいや・・それで最後は他愛ない会話をしながら休暇中の兵士と一緒に病院へ行って、医者には大したことはないと言われる」
「多分そうだろうなって気は、最初からするよね」
「実はなんでもありませんよ、ってはぐらかしじゃなかっただけ、まだマシだったという感じもする」
「でもそれでいいんじゃない?これはただの気紛れの映画で、だから素人づくりのお遊びの感覚が初々しくて楽しいんだし」
「・・うーん。僕はそこが疑問なんだけどなあ、ヒロインの感情表現とかはちょっと浅薄にすぎるし・・・ま、いいか、乙女心と夏至の空・・って感じで、ここは負けとく」
「(笑)なんでしょ」(1999.2.15)


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