「ザ・チャイルド」1976年 スペイン



ナルシソ・イパネ・セッラドール監督 リュイス・フィアンダー プルネッラ・ランサム

「まあ、一言でいってこれは子供が大人を殺す映画なんだけど、大人が正々堂々と子供を殺す映画でもあって、なんともイヤ味な映画だな〜〜(笑)」
「映画の最初にまず、アウシュヴィッツとかアフリカ内戦、ベトナム、ビアフラとかでいかに子供たちが大人の犠牲になってきたか、っていうメッセージがニュース映像で流されるのね」
「あそこに時々挟み込まれる子供の歌声が不気味でねぇ、僕はあれ、二度と聞きたくないな(笑)」
「それで物語はというと、海水浴で賑わうスペインのある街に夫婦がやって来て、静けさを求めて沖合の島に泊まろうとする。奥さんは妊婦。で、問題の島にやってきたら、ナンカ感じがおかしい、大人が一人もいない!・・いるのは子供たちだけ」
「で、子供が大人を殺してる。それだけ」
「まあまあ(笑)なんか今日の狩刈くんはノッてないね。不機嫌〜て感じ」
「いや僕は、どうもこういう映画はダメって気がするわけ。まずツカミが遅いし展開も遅いし、そのうえよ〜く見てると『毛沢東死後、中国で内戦、東南アジアに飛び火してバンコクが陥落!3万人の子供が死亡!』なんてニュースを差し挟んでいて、まあフィクションには違いないけど、それじゃ冒頭の記録映画、実際の歴史的事件をパロってるにすぎないし、となるとこの映画はマジなのかチャカしてるのか、よく分からなくなる・・」
「まあ、だからこれはとりあえず恐怖映画です。でもちょっと趣向が違って、イヤ味な題材で作ってみました、ってことなのかしら」
「そうなんだよね。ならアウシュヴィッツなんか出すなよ(笑)。そりゃ、これまで大人の犠牲になってきた子供たちになんらかの突然変異が生じて、それで大人を無差別に殺すようになった、というのは、まあ、ある種の社会的な告発めいた視線があるよ。でも、それって、いろいろと方便をくっつけてタダの子供たちを殺人マシーンのモンスターにしてみましたっていうだけみたいに思える」
「でも、それだからオリジナリティっていうかしら、ほかの映画にはないユニークなものがあるわけなんじゃないの? あたしは子供たちのあの無邪気な感じ、自然な感じにはゾッ〜〜っとしちゃった」
「それは僕もそう。ただ、いくらこれまで虐げられてきたのは子供ばかりだ、なあんて前段で標榜してみせても、倫理的に言って、子供を殺人マシーンにしていいのか? っていう問題はあると思うなあ・・」
「狩刈くんが映画談義で倫理とか言うのは珍しいねぇ(笑)」
「あ、ほんとだ(笑)前言撤回」
「今さら遅い(笑)」
「僕がついつい考え込んじゃうのは、主人公が、自分の妻に向けて銃を構えてきた小さい子供を撃ち殺すところ」
「夫婦は島を脱出しようとしてジープで逃げ回るうちに子供たちの集団が道をふさいじゃってて、ジープで突っ切れずに警察署に逃げ込むのね。それで閉じこもる。すると窓から可愛い子供がピストルを構えてる・・それで主人公は、反射的にその子を撃ち殺す」
「あそこはね、実は当然なんだね。この映画は子供ってものを妙に曖昧に、弱者でもあり強者でもある、というように扱ってるけど、子供がピストルを持ったら大人同様に人を殺せるわけで、ああいう場面でピストルを突きつけられたら、僕だったらたとえ相手が子供だろうが撃ち殺すのは当然、て考える。子供だから殺せない、ていう法はないね。僕はピストルに対して撃つんだよ。だから僕だったら道をふさぐ子供たちだってジープでなぎ倒して轢き殺すだろうな」
「実際、主人公は最後になると、そうなっていくのね。マシンガンを乱射した時には、さすがにあたしもこの映画はナンかを踏み越えたかもって気がした・・」
「でも最後の最後にまたイヤ味なしめくくりがあってね(笑)。これはなんとも大人が自虐的になってる映画だね。相手がタダの殺人モンスターだったら、主人公はヒロイックになれたはず。喝采を送って貰える。でも相手が子供だから喝采ナシ。爽快感ゼロ。ジクジ〜って感じになってくる。ま、そこがユニークといえばユニークなんだけれど、すんごいダウナ〜」
「そう考えてくると、冒頭の、言い訳めいたニュース映画の部分はまあ、あとでくっつけたのかも。これはまず、子供をバンバン殺すような映画が作りたいな、ってアイディアがあって、それなら先に子供の方からに大人を殺させよう、となって、なぜなら子供ってのはいつも歴史的に虐げられているから今度は子供たちの逆襲だ! なんていう理屈をコネてる・・」
「自虐的というかペシミスティックっていうか、まあ主人公がごくフツーの男だったのが良かった。スペインじゃスターなのかもしれないけれど。主人公が平々凡々なミテクレをしてるってのが恐怖映画のツボだね」
「彼が妻を殺されても意外と平然としてるところなんかは、ある意味ではこの映画もブレーキを利かせたんだろうな、っていう気がするのね。妻を殺された彼が哀しみのあまり逆上して、観客も彼に深く同情して、それで彼が子供を殺し回ったりしたら、まあそれは個人的な怨恨ていうか、彼の個体の物語に落ち込む危険性があったと思うの」
「悪魔だのモンスターだのを出すのがアメリカ式だとすれば、この映画はよっぽど腹グロくて、まあ発想もいい」
「<オーメン>と、確か同じ年に作られてるのね。でもこの映画、なんか取り付くシマがないっていう気も
(2002.10.14)


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