「キャリー」1976年アメリカ



ブライアン・デパルマ監督 シシー・スペイセク パイパー・ロウリー

「なっつかしいね〜これ。さすがに懐かしい・・僕はその昔、最初の更衣室の場面をズリネタにしてたことがあるな(爆)」
「(爆)ちょっと〜〜最近の狩刈くんはお下品で正直ねぇ(笑)」
「な〜んか遠い目して思い出したくなる映画、ってあるでしょ。ほかにもいろいろあるけど<野生の証明>なんかが僕的にはそんな感じの映画なんだ」
「薬師丸ひろ子ちゃんもズリネタだったの?(笑)」
「いんや(笑)そーいう意味じゃないよ。ま、中学生時代とかに封切りで見た映画、っていうような意味でついつい遠い目・・当時の宣伝文句とか評価、映画を取り巻く雰囲気みたいなものも作品の記憶と一緒に思い出すっていう意味でね」
「ま、ホラー映画っていうのは昔は『事件』みたいなセンセーショナルな扱いで売られていたしね。<オーメン>なんかもそうよね」
「当時多感な少年だった僕としては、そういう映画の宣伝戦略と現実との境目が、時々分からなくなったりしてね(笑)。それに、現実に女子更衣室のノゾキとかにも死ぬほど憧れたから、この作品でついにユメがかなった、っていうか!」
「(笑)はいはい。確かにこれ、ホラー映画っていう先入観で見始めたのに最初のパステル調っていうかスローモーションな更衣室の場面はナニ?って感じで意表を突かれる
「デパルマ監督のシタリ顔が思い浮かぶよね。女子校生にしてはかなり発育がいい女の子たちのナマ着替え〜うーんたまらんな〜て感じで入っていくのに、途端にヒドいイジメのシーン」
「細部はね、結構いいの。色遣いとかカメラのアングルとかもいいし。ストーリーが単純だからこそ細部に凝れた、っていう感じかしら。だってストーリーは、イジメられっコが超能力使って逆襲する、っていうだけだもの」
「確かに。で、なぜイジメられてるか?の背景は狂信者の母親を描くことで、一方、いかにイジメられてるか?の展開はクラスメートたちの悪質なイタズラを描くことで、いわばクルマの両輪みたいに両方をパラで描いていくから、もう映画として凝るべきは細部しか残ってない・・」
「ところどころコミカルなシーンを入れてトーンに変化をつけたり自由自在・・。あとはトラボルタね。彼が一人、異彩を放ってる感じ。異彩っていうか・・彼って芸風がちっとも変わらないのね(笑)こないだ久々に<パルプ・フィクション>を見たんだけど、この<キャリー>で見たのとそっくり同じ目をしてたよ(笑)」
「母性本能をくすぐる普遍的な芸風というべきだよね。女史もくすぐられちゃったんでしょ?(笑)」
「あら、まあちょっとタイプとは違うけど・・(笑)彼ってなんか、走ってきた犬みたいでしょ。いっつもハァハァ、舌をだらんとしてる、みたいな(笑)」
「ハアハア(爆)僕が着目したのは母親役のパイパー・ロウリー。すんごい存在感だ。テレビ版<ツイン・ピークス>で見せたアクどい女のイヤらしさが、狂信者という適役を得て、もう手をつけられないくらい腫れ上がってるって感じ・・」
「出演者のなかでは彼女だけが長いキャリアを積んでる俳優だったしね。その他の高校生たちとは厚みの重さも全然比べものにはならないよ」
「そうそう。俳優たちの間にあるそういう比重の違いみたいなものも、きっと効果的にうまくすくい取られていたんだね」
「まあストーリー面でシンプルにすぎるから、この100分の映画は、スローモーションがないと時間がもたなかった、っていう感じ?やたらとスローが多かった」
「サブプロットとして、トミーだっけ?クラス一番の色男がキャリーを卒業パーティに誘って、この誘いが本心からなのかイジメに一役買うためなのか、みたいなジラしがあるにはあった・・あれは結局、どうなんだろ?結果的には本心でもないがイジメでもない、みたいな曖昧な描き方のままカタストロフに突入しちゃったわけなんだけれども」
「パーティの修羅場は、昔見た時はもっともっとすごいパニックになってたように覚えているんだけど、今見直すと、分割スクリーンばかり気になって案外たいしたパニックにはなってないのね・・あれ以来、もっともっとすごいパニック映画をたくさん見ちゃったせいよね、これ」
「パニックに不感症になってるわけですよ女史は。この映画は高校生の目線の高さで見ないとね。・・もっとも確かスティーヴン・キングの原作では、キャリーの超能力のせいで街の大半が崩壊しちゃうんじゃなかったっけ、ウロ覚えだけど。僕はああいう破壊行為より、そのあと家に帰ったキャリーが母親を探すシーンにもの凄く胸を打たれるね」
「やっぱりママの言うとおりわたしは笑い者にされたわ、っていうシーンね」
「そう。やっぱり世の中は邪悪で、正しいのは狂信者でアタマのオカシイ母親の方だったんだ、ってキャリーが納得するところ。そういう哀切な気持ちがギリギリと切実に伝わる・・僕は、だからこの親子が家を畳んで街を出て行って消息を消す・・あなたの街に来ているかもしれない・・みたいな終わり方、そんな哀しい余韻に浸りたかったって気持ちもあるな。世間からハジかれてしまった狂信者と超能力者の親子が自分の居場所をこの世界に持てないまま流離う・・そんな放浪者の哀しさがあっても良かった」
「それは〜〜〜ズリネタ発言で始めたわりにセンチメンタルすぎる締め括りだよ!(笑)」
「(笑)あ、そうすか!?ぽりぽり・・」
「でしょ?(笑)この映画、ホラーでちゃんとまっとうしたところには、わたしは喝采を送りたいのね。少なくともあの最後のシーンにはドッキリさせられたし。心臓が一拍、余計に脈打ったみたいな(笑)」
「確かにね、ああいう凝り方はデパルマ監督らしい。大抵は自己満足で終わる場合が多いけど、あのラストは衝撃的すぎて味わい深いな(笑)・・そんじゃあ仕方ない・・あのラストは、逆ズリネタにさせてもらうとしますかねぇ(爆)」
(2003.6.4)

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