「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」1972年フランス

ルイスブニュエル監督 フェルナンドレイ デルフィーヌセイリグ

「ブニュエル72歳の作品。<銀河>と<自由の幻想>を繋ぐ三部作の第二作」
「いやあどうしてこんな映画が撮れるんだろうね、僕はブニュエルが大大大好きなんだ、どこからこういう発想が湧くんだろう」
「ものの本によればエピソードのいくつかは実話ないし本当に見た夢の話だというけれど」
「全編がせっぱ詰まった夢だったという感じはあるよね。夢そのものを描いたエピソードもあるし」
「夢にしても現実にしてもとにかくブルジョワジーたちは食事にありつけない、それだけのために軍隊が出てくれば幽霊も出てくるしテロリストが出てくるし(笑)」
「僕は一見現実的なタッチで描かれているけど庭師になる司祭の話がとても好きだな。突然着替えていて、ああいうのがまさに夢だ(笑)」
「ある現実と別の現実が突然に出会ってそこに因果関係はないんだけれど脈絡が出来てしまうってことが、夢では平気で起こりうるものね」
「まさに手術台の上でミシンとコウモリ傘が出会う・・ということか(笑)こういうシュールさでは彼の右に出るものはいないな」
「よく見るとセットも豪華なようで結構ハリボテだったりして、迫真さを逆なでするようなシーンがあちこちにあったわね」
「夢なら夢として全編奇想天外ではあるんだ、けれど僕ら観客は例えばミランダ国が麻薬の密輸をしているといった部分については、中南米の国なら実際さもありなんと現実的にそのまま素直に納得してしまう、それもまた夢の一部だとは思わない、そういう僕らの現実認識って何だろうって思っちゃったよ」
「例えばわたしたちの先入観とか固定観念が破綻するのが軍人と大使の応酬の果てに大使がピストル撃っちゃうところね、あれは最初から夢だと思っていてもかなり可笑しい。可笑しいのはミランダ国が実在するかのように思ってしまっているからで・・」
「次作<自由の幻想>でブニュエルは、そういう現実と現実を認識する仕方のズレについて夢ってもんを使わずに正面から取り上げたね」
「あとブニュエルは実にわかりやすいかたちで自分の興味を語っているの、彼は、例えば目の前に二つに別れた同じような道があってその一方を自分は行くけれど、何故もう一方の道を行かないのか?と言うのよ。そうした偶然と必然のせめぎ合いみたいなものが彼の興味なのだけれど、何故に対する答えは言わないの」
「それは<哀しみのトリスターナ>に出てくるエピソードだね。確かにブニュエル世界の本質的な世界観はそこにあるな。別れている道は実際は幾つもあって、だから常にそこに舞い戻ってしまう、舞い戻ることが可能となる。だから彼の映画には反復があって先に進むというよりは奥に深まる、といった味わいがあるね」
「役者たちについて・・デルフィーヌセイリグは<去年マリエンバートで>が強烈だけど、清楚な貴婦人のようでいて実はドロドロした(笑)存在感をアピールしてたわね、ちょっとお下劣にもなりかねないブルジョワの奥様って感じ」
「司祭役のジュリアンベルトー、内務大臣役のミッシェルピコリといったお馴染みブニュエル一家の総出演が嬉しい」
「こういうオジサンたちの慎ましやかな魅力、最近はお目にかかれないねー(笑)」(1998.8.23)

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